第15話 好き 付き合って
昨日・おとといで4days前半の分は返ってきてる。それらはふたりとも赤点回避できた。レンちゃんは30点台でギリギリで、萌は40点台で意外と危なげなかった。かわいげもなかった。別に余裕と・楽勝と鼻を伸ばして、たかだか十点差で巡条さんにマウント取って講釈垂れて。ふたりで全教科の総合点で競うことにしてて、低いほうは高いほうの言うことを聞くという。それからふたりがぜんぶ赤点回避できたら、僕は言うことを聞いてあげる・聞いてもらえる。黒川が言い出してモチベが上がるならと誓ったやつだ。無理を・難題を言ってきそうだ……。
6時間目、最後の・鬼門の数Aが返ってきた。
「どうよー?」
授業中に後ろから自分の答案を見せてくる。42点、やったな。
「そりゃまー現役JKだしー? 8歳も上のおばさんよりできるに決まってるしー」
「おばさん言うな」
そういえばコバさんには退役なんて言われてたけど、レンちゃんだって現役JK(24)だ。
そんなお姉さんがいる廊下際最前を見てみれば――喜色満面で僕ら窓際後方を見てくれた。右手の指を三本・左手の指を一本立てる。31点かな? 重ねた両手を口に当てて目を見開く。まぶたを閉じて頬のあいだで人差し指を上下させる。ギリギリの驚きを・嬉し泣きを表現した。
……ジェスチャー上手いね・うるさいね。
「で、佐ぁアンタ何点だったー?」
「え、ああ、73点」
頭も答案もはたかれた。……なんでだよ。僕は今回、大方70点台だった。ふたりのおかげだ。至らないけど教えることで点が上がった(今までは平均60点台)。オール4もありえなくない。
「73ってアタシとカレン足してんだけどー? 頭よすぎなんだけどー」
「よすぎるか。見てみろ、95点」
本人に聞こえないよう小声で言って指を差す。僕らの右隣の列で前から三番目の優等生を。たぶんこのクラスの男子で一番成績がいい。名前からしてやたら賢くて、その名も英俊英くん。2軍-ながら顔も性格も暗くない。だからか一目置かれてて〝ぶっさん〟の愛称で通ってる。
「ガリ勉やばー。女子だとメガネとデブがあのレベルー? キっモー」
「……メガネとデブ言うな」
メガネはまだしもデブはあんまりだろ。僕らは客観的になんだろうな……ビッチとモブ?
授業が終わって放課後になって、巡条さんが答案をぺらぺら振り乱して勇んで・喜んで来た。
「クマくん・萌々奈、やったわ~!」
31点の数Aを誇らしげに見せてくれる。うん、やったね・よかったね。見事ぜんぶ回避だよ。
「アタシもやったわー、アンタに勝ったわー」
全教科の点を足して比べるまでもなく、40点台の萌のほうが総合点が高いとわかりきってる。
「そうね~、私の惨敗ね~……。じゃあ言うこと聞いてあげる~」
「メイクさせてー。ギャルカレンにしたーい」
制服も着崩してスカートも短くして、学校一の、いや、全国一の美人ギャルにしたいとか。
「え~、私には似合わないわ~……。いい歳なのに恥ずかしいわ~……」
「いい歳って20代のギャルとかぜんぜんいるっての。30代はさすがにキっツいけどさー」
絶対似合うと・モテると豪語する。ギャルになった巡条さんか。……ちょっと見てみたいな。
「一日だけな」
「なんでアンタが決めんの?」
彼氏だから決めんの! 一日でいいだろ、一日署長みたく一日ギャルだよ。……なんだそれ。
「あっ、私、メイクに合わせて一日萌々奈する~!」
……なんですかそれ?
「萌々奈みたいに振る舞うの~。だからクマくんも萌々奈と思って『おまえ』って接してね~」
ということでギャル巡条さんによる一日萌々奈、後日・近日やります。ご期待ください(?)
「で佐ー、アンタとアタシらの言うこと聞きあいっこよー。赤点ぜんぶ回避したんだからさー」
レンちゃんともども先に言ってときた。アタシはエっロいことでもいいときた。…………。
「ク~マ~くん」
……エっロいことなんて言いません・考えてません。けどそれ以外だととくに浮かびません。
「私も……ッチなことでも……いいわよ~……?」
「え? ……え?」
いい――の……!? どこまで? キスとかまで? だ、抱き合いたい・吸いつき合いたい!
ということでハグちゅっちゅ――なんて言えない。僕のお願いはまあそのうち・心のうち。
「じゃあレンちゃんのお願いは?」
「私は~……その~……」
耳元でささやいてきてドキっと・クラっとした。……ッチなことですね!? 僕にとって!
「それってむしろ僕のお願いとして頼むよ。よ、よかったら」
「よ、よかです~」
博多弁です!? 今から楽しみばい! 元グラドルだからこその特別な・贅沢な……!
じゃあレンちゃんのお願いは――保留ということで。
「さあ、言い出しっぺのおまえだ。なにが望みだ」
「ルイン送ったから読んでー。カレンに言うなー・見せるなー?」
普通に口で言えよ……。短い――な……?
好き
付き合って




