第13話「ざっけんなゴルァ~~~~!」
静まり返っていた教室にざわめきが・驚きが一瞬にして広がる。私が犯人? ……私が犯人?
「しおりんが……やったのぉ……?」
当事者の赤さえ信じられないといった観。部外者の皆も同様で、それほど徳が・人望がある。
「ええ、私よ~。萌々奈に教えてもらってね~、赤崎さんたちのSNSは知っていたの~」
「はぁ? 教えてなんて――」
黒川の口をふさいだ。耳元で「なにも言わないで」と小声でお願い(至近の僕には聞こえた)。
「しおりんはんなことしねーだろ、動機がねーだろ?」
つまり犯人じゃねーだろと前田が聞く。写真を再び高く掲げて示すように振って。
「動機はあるわ~、その~……し、仕返し~。萌々奈を傷つけた・悲しませた仕返しなの~」
そう言ってかがんで黒川の肩を抱く。萌はお願いを守ってなにも言わない。
「前田くんも赤崎さんも萌々奈を裏切ったでしょ~? 私ね~、やっぱり許せなくってね~。それなのにあの~、お付き合いして三か月でイェーイみたいな~? ふ、ふざけんなごら~」
ちょうど斜め前にある僕の机を蹴り上げた。いや、蹴り上がってない。ぜんぜんキレてない。
「だからその~、あの~、仕返しなの~! 赤崎さんには横取りした愛を見てほしくって~! 前田くんには萌々奈のことを思い出してほしくって~! ふたりともきら~い! さいて~!」
赤点です……演技って科目があったなら、30点にも満たないです……。
レンちゃんと親しい僕と萌は見え透いた芝居ってわかったけど、果たして周囲はどうなのか。
少なくとも赤崎は犯人と断じた。
「横取りした愛? は? ざっけんなゴルァ~~~~!」
ほ、ほ、本性出たぁ……! 萌が言ってたんだ、赤崎もキレたら自分と変わらないと……!
150ちょっとの小さい体が迫ってきて大きくなる。うつむき加減で目が前髪に隠れてる。ふわっとウェーブがかった茶髪のボブヘアーを振り乱し、レンちゃんに向かって右手を――
振らせない。
「や、やめろ。叩くのは……ち、違うだろ」
「黙れセッタ放せ」
せ、雪駄じゃないから黙らない・放さない。黒川が「やるじゃん」って僕の隣に加勢する。
担任が来てホームルームでひとまず一難去った。ホームルーム終わりのわずかな間に話す。
「カレン芝居ヘタすぎ・迫力なさすぎ。そりゃ女優にはなれないわ」
その~とかあの~とか歯切れ悪すぎ。ドラマの犯人観たことある? 堂々と白状すんだけど。
「萌の真似して机蹴るの要らなかったよ。やるなら本気で鬼気迫ってやらないと」
そのあと急に大声になって、怒りのボルテージ無理やり上げなくても。怒れてなかったしね。
「ダ、ダメ出ししないで~! これでも一年間、お芝居のお稽古もしたのよ~……」
……ご苦労さまでした。
ではなぜ台本も演技力もない芝居をしたのか。テストが終わったら話しま~すだそうです。
鬼門は数Aであとの地理・情報はたぶん心配ない。教科書読み込んだ・ワード詰め込んだ。横や後ろはカンニングになりかねないから向けないけど、巡条さんも黒川も僕の席の右斜め前。ちらっと見たらふたりとも背中からでも真剣さが見て取れた。萌なんか授業中よく寝てるのに。
「終わったー!」「終わった~!」
女同士で抱き合う・喜び合う。……僕は・男は駄目ですか? あいだにどうですか?
「佐ー!」「クマく~ん!」
ふたりで片手ずつでハイタッチしてきた。パワーの差はあったけどテンションの差はない。
教室中が解放感に・安堵感に包まれる。担任が来て「席替えするぞー」でさらに歓喜した。いつもは毎月初め(1日)に席替えする。けど連日のテストで今日(6日)にまでずれ込んだ。レンちゃんを真ん中に斜めに並んでた11月の僕らだけど――おのれくじ引き、これはない!
「頭叩き放題じゃーん」
「そんな放題ないわ!」
真後ろに萌はないわ! 10月もこいつと横に隣り合ったのに、今度は縦に隣り合った……。窓際後方でこいつの席(最後尾)といえば巡条さん。転校してきた僕の左隣、窓際美人さん。
「私だけ離れちゃったわね~……。お昼一緒に食べるとき~、机を動かすのが大変だわ~……」
これまたおのれくじ引きで、僕らの対極、廊下際最前に。ああ……頭なで放題がよかったな。
「遠すぎるし椅子だけ持ってきたらいいよ。僕の机で・隣で食べよう。あ、いや、普通にね?」
「あら~!」「キっモ」
早速叩いてきた! 冬休みあるから今月は短いけど、脳がやられる・先が思いやられる……。
席替えも済んで嬉々としてみんな帰りだす。なのに前田が僕ら三人のもとへ来た。
「なあ黒――いや、萌々奈。ちょっと来いよ」
「はぁ? 下の名前で呼ぶなクソヤロー」
いいから来いって腕を引こうとつかむ。触るなクソヤローと振り払い、渋々ついていった。
後赤青は前を待つのか帰らない。左右黄緑はたぶん部活に行った。今日から再開だと思う。
赤崎が僕ら二人のもとへ来た。「ぜぇったい許さないから。おばさん」とそれだけ言いに来た。
「あ~ん、嫌われちゃった~……当然よね~……」
「あ、そうだ、そのことだよ。なんで自分が犯人なんて言いだしたの?」
「それはね~、テスト初日の朝にね~、下駄箱で見たの~」
赤崎さんのところになにか紙を入れている子を~。……え? じゃあ真犯人知ってるの?
「ええ、あの子だと思うわ~。けれど赤崎さんたちに言っちゃうと~、いじめられちゃうわ~」
だから私が犯人で~す、とのこと。いやいや、かばうことないよ……卑怯な・陰湿な奴だよ。そのせいで憎まれてまたおばさん呼ばわりだよ? せっかく〝しおりん〟になったのに……。
あのとき小林・佐藤を気にしてた。あいつらか・どっちかか? メガネでより陰気な小?
少し経って冷めた萌が戻ってきた。あとを追う前田がすがりつくように「ヨリ戻してくれ!」




