表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24JK  作者: 百雲美呪丸◎
七章
86/214

第10話「頭シュークリーム……」

 レンちゃんが四人の注文を承り、率先して・代表して頼みに行く。今は昼休み・ここは学食。

 ディベートーナメントは優勝した。不倫はありかなしか、ありで勝利した。MVP小林。日本の少子化を持ち出して来て、不倫でもなんでもいいから子ども(納税者)を増やそう、と。一夫多妻の国をも動物をも説き、博識でもって倫理をねじ伏せた。伏し目がちにぼそぼそと。消極的ながら佐藤も声を震わせて友達を助け、ふたりして知力・学力からくる説得力があった。それに比べて奴らは〝常識的になし〟の箇条書き。周囲も判定も小林の論に沸いた・傾いた。


「頼んできたわ~、待ちましょ~」

「カレンは自分のなんにしたのー?」

「月見うど~ん」


 左肩に流したまとめ髪を両手ですいて嬉しそう。右に座る僕には露わな首がなまめかしい。黒川は反対側、左に座ってて爪いじり。そして僕らの向かいに小林・佐藤が静かに座ってる。内心嫌そう・気まずそう。本当に優勝してみんなで食べに来たけど、僕も萌も――別に……。


「小林さんってとっても物知りさんなのね~。尊敬しちゃうわ~」

「い、いえ……そんな……」

「いつもご本を読んでいるわよね~。佐藤さんも物知りさ~ん?」


 謙遜して首を横に振る。会話が弾まない・ぎこちない。ふたりとも居心地も顔色も悪そう。初めて学食に来た僕も同感だ。ここは全学年の1軍の巣窟らしい。イケイケで目障り・耳障り。

 敗れたものの自腹で食べるのか、前後左右赤青+黄緑もやってきた。四方四色大集合……。


「おー、しおりん」「しおりぃん!」


 前赤を筆頭に八人で寄ってくる。ちなみに学食に入った瞬間、しおりんファンも寄ってきた。


「失せろゴミカスクソカップル。なんだっけ、祝勝会? なんだから負けたテメーら来んな」


 ちょっと声かけただけで奴らは別のテーブルへ。その後ほどなく五人分のうどんができた。僕が肉うどん・萌がカレーうどん、小林・佐藤は普通のうどん。うどん以外もあるけど季節柄。ああ……おいしい……あったまる……。寒空の下で食べた文化祭のうどんもよかったな……。


「小林さん・佐藤さん、どう~? おいしい~?」

「は、はい……」


 かたや佐藤はただうなずいた。どちらかというと人の良さそうなぽっちゃりのほうが無口だ。

 とくに話も何事もなく、淡々と・粛々と食べ終えた。いや、事はすでに起こったあとだった。


「ねーアンタら、それ」


 席を立って振り向いた小林・佐藤の背中に――赤い字で『調子乗んな』と張り紙があった。


        ◎


 調子乗んな? 我が物顔で教室に君臨し、王族のように振る舞うあなたたちこそ調子乗んな。国際社会に対する露中朝ではないが挑戦と受け止めた。浅ましい動物は植物にまで牙を剥く。授業で少し出しゃばっただけで憤懣やるかたないのか。女の人に乞われて詮方なかったのに。

 問題はこれをご丁寧に貼り付けてきたのが、あの群れの誰なのか・何頭なのかということだ。四頭ないし八頭からなる牡・牝の総意ではないと思う。牡はこんな小さいことをしないと思う。ゆえに牝の総意か牝のどれか――赤崎・青山か。黄島・緑原は討論の場にいなかったのだから。『しおりぃん!』と女の人を見つけ、わたしたちの横に寄ってきたあのときに貼ったのだろう。


『私のせいよね~、ごめんなさ~い……。もしなにかされたら教えてね~? 力になるわ~』


 食堂から教室に戻る道すがら、彼女にそう言われた。力は要りません、情報が要るんです。


    シュウとしゅうくりぃむぅ☆


 赤崎・前田がシュークリームを両手で持ち、変な顔をして食べようとする画像にこの一文。目はふたりして加工して、不自然に大きくきらきらキマってる。こんなのが11リツイート。


「頭シュークリーム……」


 両者を破局させる。今度は男女の恋情――男の友情よりも裂きやすい。

 石田与尋から芋づる式に検挙できたため、前田や赤崎ら四頭のツイックーも把握している。青山は鍵をしていて覗けない。後藤は大してつぶやいていない。王と妃の側近なのに使えない。


    今日で茉那と三か月ぅ! これからもよろしくぅ!


 前田のアカウントを見てみれば、たった今最新の画像とつぶやきが(今は21時・わたしは家)。ゲームセンターで撮ったと思しい加工過多の写真で、赤崎と指を合わせてハートを作っている。


「恥ずかしい……痛々しい……」


 こんなものをどうして撮れるのか・載せられるのか。赤崎のほうも同じ画像とつぶやきが。

 少し経って野球(左近)とバレー(黄島)がリプライした。『おめでとー!』『お似合いー!』


「…………」


 絶句した。なれあいが・へつらいが過ぎる。気持ち悪すぎる。いったいなにがめでたいのか。似合いと言うが前田は黒川と交際していたと――興味はなくとも耳にして傍目にもわかった。しかし赤崎に目も心も移ったということか。ゆえに黒川はグループを抜けたということか?

 さかのぼってみれば夏休み、黒川と写っている画像が毎日ある。くくっ……これは使える。


        ◎


 テスト初日の12月1日まで残り一週間。毎日みっちり・きっちり取り組んだ。もうばっちり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ