第6話「メイク、ネイル、はだか、ごろね、ピザ、うんこ」
ただまあ途中で投げ出さず・逃げ出さず、至ってまじめに取り組んだ。そこは褒めてやろう。でもいつもどおりバシバシ叩くうえ、やたらべたべたくっついてきた。力にもエロにも訴える。正直パイタッチは悪い気しない。萌っぱいは花っぱいよりやや大きく、弾力・迫力もやや勝る。では花っぱいが負けるのか・劣るのか? そうじゃない。萌っぱいよりもやわらかわいいんだ。
……なにが萌っぱい・花っぱいだ。
「ちょっくらウンコしてくるわー」
「……ちょっと大きいお花摘んでくる、な」
巡条さんの家で勉強するとき同様19時半で切りあげた。部屋を出てリビングに連れられて、ソファーに座らされて所在ない。テレビでなんかニューチューブ流してくれたけど興味ない。にしてもあいつ、よくウンコするよな……しかもわざわざ言うよな。普通に女子力低いよな。
「ただいまー」
玄関のほうから高い・幼い声がした。たぶん男の子――かな。廊下をずんずんここへ来る。
「…………」
「…………」
後ろを振り返った僕と目と目が合った。お互い「こんばんは」も言えなくて、軽く会釈する。ランドセルをしょってて小3くらい。色が白くて・線が細くて女の子みたい。髪も肩まで長い。どこかに走っていって水の音がしはじめた。たぶん洗面台でうがい・手洗いしてる。えらい。
少ししてここに、リビングに戻ってきた――僕の隣に座ってきた。
「おにいちゃん、だれー?」
「え……雪佐拓真」
「くろかわしゅく」
今のは名前・自己紹介……? やっとランドセルをソファーの脇に置き、テレビを観だす。
「…………」「…………」
き、気まずい。こんな小さい子相手にも、楽に・ろくにコミュニケーション取れない……。
僕もテレビに目をやったら――女ニューチューバーがしっとり・うっとり温泉入ってた!
「っ!」
小3くらいのこの子には早いと・悪いとぱっと消す。「なんでけすの?」って見てくる……。
いや、あいつなに流してんだ! 僕が喜ぶと思ったか!? わーい! じゃないわ、やーい!
「あ~~~~! おにいちゃんこのまえスケートしてたー!?」
「え? ……え? うん」
「やっぱりそうだー!」
な、なんで知ってるの・興奮してるの……?
トイレの水が勢いよく流れるのが聞こえ、萌もまた勢いよく戻ってきた。
「祝おかえりー!」
ソファーの後ろからこの子を抱きあげる。「トリプルアクセルー」とか言ってくるくる回す。
「ねえちゃん、うんこくさい……」
「アハハ、ごめんごめーん」
下ろして前にまわり込む・隣に座り込む。僕とこいつでこの子を挟む形に。
「おまえ……弟がいたのか」
姉だったのか。気ままなひとりっ子かわがままな末っ子って感じだけどな。
「妹なんだけどー」
あ、妹? でも男子小学生特有の黒い短パン履いてるけど……。寒いよね、それ……。
「おとうとなんだけどー!」
萌の冗談でした・男の子でした。黒川祝くん8歳・小学2年生、特技はフィギュアスケート。学校終わりに直で習いに行ってて今帰ってきた、と。……小2でひとりですごいよ・危ないよ。僕(と巡条さん)がこの前、アイススケートをしてたと知ってるのは――なんと会ってるから。なにぬねののあと、不思議そうに・邪魔そうに見てきた小3くらいの男子が祝くんだった!
「世間せまっ。ねー祝、この兄ちゃんどんな感じだったー?」
「きれいなおねえちゃんとこおりのうえでころんでじーっとみてたー」
「へー? ふーん?」
にやにや・おやおやじーっと見てくる。……なんだよ。目も話もそらす。
「祝くん、姉ちゃん普段どんな感じ?」
「メイク、ネイル、はだか、ごろね、ピザ、うんこ」
ハッシュタグみたいな答えかた! 裸ってなに? 裸族ってこと? 裸でごろ寝? 裸婦?
絵画になった裸萌を想像しそうになった横で弟の頭バシっ! 容赦も加減も大人気もない!
「裸で寝っ転がってピザ食ってウンコしてるって!?」
「いたいよう……! あ、おにいちゃん、おこる・たたくも!」
僕に抱きついてきた。見上げてきてかわいい。レンちゃんじゃないけどヨシヨシしてしまう。
「姉ちゃんすぐ怒って叩くよね……お兄ちゃんもいっつもやられてるよ」
さっきのお返しにじーっと見てやって、こそっと・ぼそっと聞く。
「家でいつも裸なのか……?」
「違うし、風呂あがりだけだから」
巡条さんの家で風呂に入ったとき、裸で出てこようとして押し戻されてたな。……なるほど。
「祝だってチ×チ×ぷらぷらさせて風呂あがり裸じゃん」
弟の背中を小突く・普段を毒づく。……姉のおまえの影響では? チ×チ×ぷらぷらって。
風呂はまあまあ一緒に入るらしい。こんなちっちゃい子にでっかいおっぱい見せてんのか。……けしからん。パンツ見せたり下着姿を見ていいとか――彼氏もだけど弟で慣れてるからか。
「さ、晩飯頼もっかー。佐ぁなんか食べたいのあるー?」




