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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
一章
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第8話「にじゅうよ~ん……」(1話冒頭に繋がります)

 自分でも引いてる・驚いてる。よくあの3ギャルに、モモナマナミナに食ってかかったなと。それだけ鬱憤が溜まってた。周りにひそひそ言われて・笑われて。それがあいつらで爆発した。巡条さんがいいって言うから引き下がったけど、個人的には納得いかない・ぜんぜん許せない。大人っぽいのを短絡的に・逆説的におばさんなんて! カズコとかうちのおばあさんだよ!

 怒り・猛り冷めやらず5、6時間目が終わった。

 なつかしの教科書・問題集を持って巡条さんに話しかける。


「さ、中学の勉強しよう。昼に話したばっかりだけど、ちゃんと用意してきたから」


 英語と数学、どっちがいいか聞く。とくに苦手だっていう二大教科からやるべきかなと。


「偉そうに言うけど僕も復習がてらというか……忘れてるとこもあるから大目に見てね」

「…………」

「巡条さん?」


 うつむいたまま返事が・笑顔がない。昼休みも5時間目終わりもずっとこうだ。


「なんとか言ってよ……。僕のせいで恥かいたって・注目浴びたって――怒ってる?」


 首を左右に振って否定した。いつもと違って間延びしない温かくない声色でぼそっと言う。


「……もう話しかけないでって言ったわ」

「だからなんで……? 理由言ってよ……。キレて女子にブスって言うの見て――引いた?」


 あれはよくなかったなって反省してます……。けどもう泣きそうで負けまいと必死で……。


「ふふっ……化粧取ってみろ、だなんてすごいこと言っていたわね。けれど引いてはいないわ」

「だったらなんで……」


 かすかな思い出し笑いもふっと消え、再び口を・心を閉ざしてしまう。

 教室から他人が・騒音が減っていく。都合7、8時間の拘束から解き放たれて帰っていく。

 背中向けててわからないけど3ギャルがこっちにらんでる気がする。怖くて確認できない。


「…………」


 すっかり静かになったから後ろを振り返ってみた。もう誰もいない。

 ……僕たちふたりだけになってしまった。

 あるいは巡条さんはこのときを待っていたのか――ようやく顔を上げた・口を開いた。


「どうしてかっていうとね、私といると雪佐くんまで笑われちゃうわ。そんなの嫌だもの」


 自分のことを悪く言われるのは構わない・仕方ないという。仕方ないことないって……!


「私、勘違いしちゃったの。雪佐くんのこと、お友だちみたいに思って……」


 元から垂れてる目尻・眉尻がしゅんと下がる。そんな顔しないでよ・こと言わないでよ……。


「ぼ、僕だって友達みたいに思ってるよ」


 ……嘘だ。早いけど・悪いけど恋人みたいに思ってるし、そうなれたらいいなって願ってる。


「まぁ~、嬉しいわ~。けれど今日でおしま~い」


 無理して明るく振る舞ったのが見え見えで、ちゃっと片づけて逃げるように「さようなら~」


「ま、待ってよ!」


 とっさに腕をつかんで引き止めたら、力が強すぎて痛がらせてしまった。ぱっと放して謝る。


「ご、ごめん! でもちょっと待って……聞いて」


 巡条さんは振り向いた・うなずいた。放課後の教室にふたりきり、対面でドキドキする。


「自分といると僕まで笑われるなんて言うけど……ひとりでいてもどっちみち笑われてるよ」


 3ギャルだけじゃなく誰もが心のなかでだ。口に出してあざ笑うおもしろみはたぶんない。ぼっち同士――それも男女――となれば、寂しすぎてくっついたと物笑いに・ゴシップになる。


「だからどうせ笑われるんだったらさ、下世話な噂で好き勝手言われてもいい。言わせておく」


 とはいえ今日みたいに、黒赤青みたいに――おばさんだなんだは断じて言わせておけない。


「でも巡条さんが僕とそんな噂されたくないっていうなら……わかった。もう話しかけない。けどそうじゃないなら僕に悪いからって逃げないでほしい。ふたりぼっちになろう」

「ふ……ふたりぼっち……?」


 僕らは周りから浮いてるから・離れてるから。ひとりぼっちよりはいい感じ、しないかな。

 巡条さんは照れたのか髪をいじり、うつむき加減で・上目遣いで本当にいいか聞いてくる。

 ……かわいい。じゃない、いい。それならとふたりぼっち了承して、普段の感じに戻った。


「なんだか少し告白みたいでドキっとしたわ~。『ふたりぼっち』って変な響きがして~」


 言われてみればごまかしに・遠回しに――〝付き合おう〟って言ったに等しい……?


「へ、変な意味はないよ! ぱっと浮かんだワードってだけだから!」

「うふふ、わかっているわ~。雪佐くんは好意じゃなくって善意があるのよね~」


 ……好意だよ。好意の下に邪意(下心)があって、その下に第3位善意とくるんだよ……。


「けれど本当に、本当にこんなおばさんといてだいじょうぶ~?」

「なに言ってんの……気にすることも自虐することもないよ。そこは怒らないと」


 いくら大人びてるっていったって、同級生をおばさん呼ばわりは心ない・良識ない。


「ん~、怒るに怒れないわ~。やっぱり雪佐くんはまだわかっていないのね~」


 ……え?  東くんにもそんなこと言われたけど――なにが?

 巡条さんは学生証を取りだした。もしこれを見て気が変わったら正直に言ってと渡される。


「ど、どういうこと……?」


 ただの学生証にいったいなにがあるというのか――おそるおそる・ぶるぶる裏返してみた。

 きっれぇ……! この手の写真写りってまあ悪いのに、巡条さんときたらまあ綺麗……!


「あの~、写真じゃなくって~……」


 じゃなかった……。


「……ん? 生年月日、1998年4月24日――せんきゅうひゃくきゅうじゅうはち!?」


 今は2022年・僕は2006年(生まれ)。普通に高1だ・満16歳だ。けど――


「せ、1998年ってことは……巡条さんって……?」


















「にじゅうよ~ん……」


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