第1話「わたしは正義を・復讐をなした」
愉快愉快愉快愉快愉快愉快! ざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろざまあみろ! なんと脆い・儚い友情か! 石田は大層痛かった・わたしは片腹痛かった! くくくくく……!
欲をいえばやはりにっくき左近に大恥をかかせ、3対1でグループから孤立させたかった。些末な・粗末なツイックーの情報を度外視し、左近を犯人ではなく道化に仕立ててもよかった。つまるところ証拠を見せてやれば、日頃の各人の人となりなどというものは容易に吹き飛ぶ。誰しも道化(二千円で喚く輩)になりえたし、証拠(財布)は誰のところに忍ばせてもいい。されど窃盗の信憑性・蓋然性は高めたい。左近が石田から盗るのが最もありえると判断した。鼻につくだけで愚にもつかない奴らのつぶやきを、眺めた甲斐は・意味はあったといえよう。
右京を真犯人にしたのはさらなる泥沼を俟ってのこと。2対2に分かれたのは上々の結果。いくらなんでも4人がひとりずつ離散は考えにくい。ふたつに裂けるのが至って自然・自明。例の女の人が介入したときは唇を噛んだけど、場を収めただけで関係修復とはいかずこれ幸い。かくて彼らの鬼ごっこも明日からなくなるだろう。自分のためにも公衆のためにも善をなした。
わたしは正義を・復讐をなした。
『今なにしてる?』
悦に入っていればルインだ。『なにも』と返す。
『期末テスト近づいてきたね……余裕?』
『余裕』
自分で言うのもなんだけど優等生だから。学年で最も成績がいい自負も自信も自覚もある。体育を除いて常に・楽にオール5。はっきり言って程度が・温度が低すぎる。そう、ぬるま湯。こんな凡な高校、徒歩2分以外に通う理由がない。もっといえば通いたくない、通信制でいい。頭の固い親が許してくれなかった。偏差値の高い・所在地の遠い名門校に行かされそうだった。
『だよね、すごいなぁ』
ポテチ食べてる場合じゃないや……がんばらないと! あなたは十分がんばってると思う。
この子のことは友人として一応認めている。読書ができるから。スマホをいじらないから。
こうして夜にときとしてルインを送ってくるのは――実のところ迷惑だけど・勘弁だけど。
『今日の昼休み、あの男子たち怖かったね……』
おかしかったね。funny(滑稽)とcrazy(狂気)、両方の意味で。
『勘違いかな、もしかして笑ってた?』
『まさか』
まさに。
◎
「お疲れさまでした~」
ちゃちゃっと私服に着替えて~、キッチンのご主人さんと大学生くんふたりにごあいさつ~。
「おう、お疲れ。これ食ってけ」
ご主人さんに今日もまかないをいただきました~。いつもいつもありがとうございま~す。
わくわく・ほくほく空いてる席へ~。21時を過ぎてお客さんが少~し減ったのでご容赦を~。
「男には着替えてから挨拶するってあざといですね」
同僚の鈴木さん(大学3年生)が茶々――じゃなくって~、お水を入れに来てくれたわ~。のろのろしてる私が・話しかたがきっと嫌いで~、お仕事が終わると途端にですます~……。
「え~、そんなつもりじゃ~……。ホールのみんなにはその場で言えるだけで~」
「じゃあ着替えに行く前にその足でキッチン行って言えばいいじゃないですか」
早口で言って早足で行ってしまったわ~。……確かに~? 私、あざとかったの~……?
私が働く居酒屋さん、轟さ~ん。アットホームで笑顔もお客さんも絶えないの~。個人経営のこぢんまりとした老舗だけれど~、有名人さんもお忍びでお越しになられるわ~。壁のサインも常連さんもいっぱいで~、サラリーマンさん・大学生さんで連日大にぎわ~い。
「いただきま~す」
今日のまかないは揚げ物祭り~。鶏の唐揚げ・小エビの唐揚げ、ハムカツ・メンチカツ~。
太っちゃ~う……。
「んん? さっきのお嬢さん?」
隣のテーブルの中年男性さんが気づいたわ~。ほろ酔いで~、気分も羽振りもよさそうで~。
「はい、お仕事はあがりました~」
「結構結構、こちらに来なさい・付き合いなさい」
「……社長、女子大生は命取りになりますよ」
誠実そうな・堅実そうな向かいの女性が顔を寄せてひそひそ~。まぁ~、社長さんなのね~。
「あの~……こう見えて女子高生でして~」
24歳ですが嘘はついてませ~ん……。おふたりとも大変驚かれました~。
「……女子高生は罪になりますよ」
「お嬢さん、今のはなかったことに」
愛人と見初めた・見定めたというのに残念だ。…………。
気を取り直していただき――あら~? ルインだわ~、舞歌だわ~。
バイト終わった? まかないもう食べてる?
まだなら待ってて、今からそっち行くから!
5分くらいで舞歌到着~。
「よっ、お疲れ」




