第11話「ラッキースケベするならアイススケーベ場へ!」
ぐるぐる・ゆるゆる何周もする。巡条さんはしょっちゅうこけかけて、抱きついてきて……。僕も一回こけかけて、コート越しでもやわらかい胸へダイブしてしまった。アイススケーベ! 手なんて当然握りっぱなし、手袋越しでもドキドキしっぱなし。ありがとう、焼きそばーか!
12時過ぎになると昼食を摂ってひと休み。13時に再開、手すりを・外周をついに卒業する。
「ほ、本当にだいじょうぶ~? とっても怖いわ~・危ないわ~……」
「大丈夫だって、十分練習したよ」
「けれどこう~、犬かきで海を渡るようなものよ~……」
「そこまで無謀なことかな……」
確かにリンクは広いよ・僕らはつたないよ。でも見てよ、子どもでもぜんぜん滑ってるよ。バランス感覚は覚えた・養えた。寄る辺ない内側をふたりで突っ切る――普通にできると思う。
「行こう。なんなら最初から……えっと……だ、抱きつく?」
「いいえ~、それは悪いわ~・恥ずかしいわ~……。こけそうになったらおねがいね~……?」
いざ挑戦。せっかくだから一番長い距離を、わかりやすくド真ん中一直線をコースと定める。
「行くよ?」
「え、ええ」
手をつないで横並び。空いてる左手で手すりを押して勢いをつけて、氷の大海に繰り出した。
「あ、あ、あ~~~~!」
早速おびえた・うろたえた声をあげる。けど難なく・なんとなく滑れてる。
手押しの推進力が尽きてきた。そろそろ自分たちで、足で進まないといけない。
「いける? 無理そうだったら棒立ちでいいよ」
僕だけが滑って引っぱる形になったっていい。いや、むしろそうなりたいって言っていい。年下で普段頼りないのはよ~くわかってるから、こういうときこそ男を見せたい・磨きたい。
「い、いえ、私だって滑るわ~」
おっかなびっくりスロースケーティング。観察してると段々と――股が開いてきてる……!
「足が斜めに傾いてるよ! 氷に対して垂直に!」
「え、え、そのつもり――で~~~~!?」
ぱっかーん割れた(120度大開脚)! こうして見るとほんと脚長い……スタイルいい。
こうして見てる場合じゃない!
「大丈夫!?」
「じゃないわ~~! このままだとお尻も割れちゃうわ~~!」
尻は元から割れちゃってます!
「もう体勢立て直せないよね!? じゃあいっそこけよう!」
力強く手を引いてわざと・しかと衝突させる。僕を下敷きに巡条さんは安全に転倒できた。
「クマくん!? クマくん!」
「いてて……思ってた以上に固いね・冷たいね……」
後頭部からいったら最悪死ねるね……。尻からでよかった・助かった。
「なんてことするのよ~……怪我はない~?」
「ないよ。レンちゃんは?」
「おかげさまで~。本当にごめんなさ~い、ありがと~。…………」
一件落着したのに僕の上からどいてくれない。ぼーっと・ぽーっと見つめてくる。
「な……なに?」
「ぬ、ぬねの~」
またなにぬねの……? おとといも思ったけどまぶたが・唇が迫ってくるかと……。違うか。
見つめるのをすぐやめてゆっくり立ちあがる。僕の手を引っぱって立つのを補助してくれた。
「あの~……はっきり言うけれど~……。今のは男らしくって~……かっこよくって~……」
ますます好きになったわ~ともじもじ打ち明ける。鼻から下を両手で隠して斜め下を見て。
「え? ……え?」
それはどうも……。かわいいなぁ……こっちだってはっきり言おう。
「僕も……す……好きだよ……毎日ますます……」
「……うふふ」
小3くらいの男子が近くを通りすぎて、不思議そうに・邪魔そうに見てきた。…………。
ふたりだけの世界に浸るべからず。再び手と手を握り合い、向こうまでどうにか辿り着いた。外周を繰り返してそれなりに上達したように、今度はこのド真ん中一直線コースを反復する。さっきの失態があったからかな、巡条さんは棒立ちで僕にただ引っぱられるのを良しとした。これがまあ楽しいったら・誇らしいったら! 年上のこんな綺麗な彼女をエスコートして! たまにバランス崩してやっぱり抱きつかれて――アイススケーベ、バトミントン超えました! ラッキースケベするならアイススケーベ場へ! いやあの、ガチの・プロの人、怒らないで。
「クマくんクマくん、そろそろ私も滑るわ~」
けん引されるうちに慣れが高じた・おそれが減じたのか、白い息を吐いておっとり宣言した。内股気味だけど滑れてる。僕を見て学んだとか。もう脚がぱっかーん割れることはなかった。そしてとうとう引っぱってくれるまでに成長し、気分はまるで全自動マリヲ。マンマミーア! 前を行くレンちゃんのポニーテール・赤マフラー――より、尻ばっか見てた。ホンマデケーヤ!
「ははははは」
「ふふふふふ」
◎
「シネ」




