第9話「ピュっア」
つくづく思う。なぜ動物はこんなに写真を撮るのか・載せるのか。自己愛・自己顕示の豚が。著名人であれば営利に・宣伝になる。一般人が私生活をさらしたところで利益もたわいもない。今の世のなか承認欲求の餓狼ばっかりだから、シリコンバレーのメガテック企業が肥え太る。
「『健とよっひーと岩ちゃんとファミレス行った!』――どうでもいい」
もっと有益な情報を漏らせ・寄こせ。男四人でファミレスに行っただけでタトゥーを彫るな。
捜査三日目。野球(左近翔)を主に眺めつつ、剣道(石田与尋)ほか周辺人物も洗っている。サッカー(右京健)・柔道(岩田颯太)は鍵をしていて覗けない。前者二名よりは賢明と言える。もっともわたしに言わせれば、ツイックーだのSNSを利用している時点で愚者だ・笑止だ。わたしのような女子最底辺の気色悪い植物に、こうやって閲覧される危険性があるのだから。
「どうでもいい……どうでもいい……どうでもいい……」
画像もつぶやきもくだらない。復讐のためといえど憎悪する相手を眺めるのは気分が悪い。
わたしは種を探している・欲している。体育会系四人衆の友情を絶ってしまえる争いの種を。あの四人が離散すれば人にぶつかることも本を踏むこともなくなる。クラスのためにもなる。
「…………」
さかのぼれどさかのぼれど目ぼしいものがない。女子にやたらにリプライ(反応)している。
切り替えてバレー(黄島琉菜)とバスケ(緑原玲菜)を見るとしよう。この二名も近しい。合わせて六人衆と言っていい。運動部なんて――スポーツなんて――すべてなくなればいい。
今日ちょっと突き指した……まだ痛い
あるある、こっちは今日脚擦りむいた
ないない、おれ上手いからケガしない
やはり左近が藪から・上から絡んでる。女子連中は内心、厭わしく・煩わしく思っていそう。
恋路で事故を起こすのが容易いと・手早いと考えている。されど石田はさして女っ気なし。右京・岩田はツイックーが見られない=情報が得られない。女で破滅させるのは難しい――か。
女っ気はなくても洒落っ気はある剣道を見てみよう。最新ツイート、ダウンジャケット自慢。サッカー・柔道がなにか返しているようだが表示されない。鍵をしていない野球はかく語りき。
「『いいなー、かっけーなー! 欲しいわ、くれ!』――っ!」
ひらめいたひらめいたひらめいたひらめいたひらめいた!
「くくっ……くくくっ……くくくくく……!」
◎
「オトコの友情はオンナ・カネ・モノでグダるんだってさー」
萌がスマホ見たまま言ってくる。……なにを見てるんだ。
2時間目が終わって休み時間。レンちゃんはお花を摘みに行った。たぶん小さいお花を。
「そういや佐ー、昨日家デートどうだったー?」
「どうって……まあ……うん」
ゲームして料理して幸せだった。楽しかったなぁカーピィ・おいしかったなぁカレー……。
「なーにがまあうんよ。1位セxクスしたー?」
「してるか。1位はキャンプだよ・書けませ~んだよ」
明日(土曜)やるんだよ。野外でふたりで1泊2日――絶~~対エロいい感じになれる!
「キャンプってアンタ、カネあんのー・道具あんのー?」
「…………」
なかった・ぬかった! 金も道具も知識もない! ただただ普通にやりたいだけで書いた!
「え、ないわけ? たわけ?」
「……うるさい」
『たわけ』なんてなにで・どこで覚えた。女子高生が、ましてやギャルが使う言葉じゃない。
「まーカレンに買ってもらったらー? 8歳も下だし甘えるのアリと思ーう」
「甘えるなんて額に収まらないだろ……」
テントに寝袋、それに食材――どれだけ掛かるだろう・買わせるだろう。申し訳なさすぎる。
キャンプはダメだな・やめだな……。それはそうと恥を忍んでこいつに聞きたいことがある。
「な、なあ。手をつなぐのって……どうしたらいい?」
「キっモ」
「キ、キモくないだろ、ピュアと言え!」
「ピュっア」
ノリいいな・どうでもいいな!? さっきからずっとスマホ見やがって!
「手ぇぐらいいつでもつなげばいいじゃーん」
「それができたらこんなこと聞かないんだよ。なんかこう、オススメのデートとかないか?」
「要はボディータッチしまくれる遊びないかってー?」
そんなこと言ってないが極論そうだよ! 手だけじゃなくて体にも触れられたら最高だよ!
「あー、あるわー。手ぇ握りっぱでべったべたにくっつきそうなのー」
「ほんとか? 教えてくれ!」
「ヒント、今の季節ピッタリ。答え教えてほしかったら昼に焼きそばパンねー、購買のヤツー」
◎
焼きそばーか! おまえ天才だったんだな! 確かに握りっぱで抱きっぱの可能性もある!




