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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
五章
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第7話「愛過知はこんなお歌で~す・踊りで~す」

「愛すことが 過ちだなんて 知らなかった…… 私のせいで あなたは いばらの道をゆく。愛すことが 過ちだなんて 気づかなかった…… あなたのせいで 私は――自ら、逝く……」


 左胸に短剣を突き立てるようなフリでうつむき・ひざまずき、曲も命もフェードアウトした。

 悲しげな余韻を・詩的世界をぶち壊し――割れんばかりの歓声。


「しおり~~~~ん!」「ヒュ~~!」「最高~~!」「きれ~~~~い!」「かっこい~~~~!」


 男子も女子も総立ち・総パチパチ。僕と萌なんかでっかい花束渡したいくらい感動……!


「カレンやば~~~~! やばやばやば~~、やば~~~~!」


 ……ボキャブラリーやばー。

 放課後の教室にクラスの半数が残ってる。机はぜんぶ後ろに動かして、全員その前に横並び。広々とした中央で『お手本』見せてもらった。歌も踊りも仕草も表情もあっぱレンちゃん!


「み、みんなありがと~、嬉し恥ずかしいわ~……。愛過知はこんなお歌で~す・踊りで~す」


 教卓に置いた音源を、自分のスマホを取る。ニューチューブでPV再生して曲かけてた。

 愛過知あいかちは未∞知∞数の代表曲『愛すことが過ちだなんて知らなかった』の通称。文化祭はまずこの曲を参加者全員でやり、次に巡条さんのソロ(雨漏りしおりん)も決まった。私ばっかり目立って~って乗り気じゃないけど、間違いなく・まぎれもなく再デビューになる。ひいては遠い・まぶしい存在になる。僕はマネージャー・萌はボディーガードにでもなろう。


「クマく~ん・萌々奈~」

「あ、うん」「はいはーい」


 呼ばれて前まで行く。いってみれば黒川は司会進行で、僕は黒板に色々書いてくの任された。


「そんじゃパート決めてこー。AメロとかBメロとか曲の部分で担当してく感じー?」

「ええ、それがいいと思うわ~。今は私ひとりだったけれど~、実際は連携が大事だからね~」


 なにも進まなかった前赤とは雲泥の差、活発に・円滑に決まってく。

 大まかにいうと参加は1軍・2軍+、不参加は3軍・2軍-。でも後者にも役目はある。裏方というか雑務やらすって萌が息巻いてた。本当はクラス全員踊らせたかったらしいけど。思うに僕も巡条さん――あとまあ……黒川――と親しくなかったら……今頃普通に帰ってる。転校してきた頃は友達なんか要らないって冷めてた・すねてた。ありがとう……ふたりとも。ふたりはどう思ってるかわからないけど、僕は友達だと思ってる。これからも……よろ――


「あーのー佐ぁ! アンタずーっと手ぇも声もあげないでどこやんの!?」


 サビもやんないならもうあと間奏なんだけど佐ぁ! ……うるさい、書いてる・わかってる。


「……どこもやりたくないって言ったら?」

「シネ」


 ……死ぬか。僕はどちらかと言うまでもなく、目立ちたくないから気兼ねな~く辞退したい。


「レンちゃん……」


 助けてください・船ください……あっぷあっぷ。


「そんな顔しないの~、やりましょ~。普段のお勉強と違って~、踊りは私が教えてあげる~」


 ごぼぼぼぼ……溺れて水中深く死んだ・沈んだ。

 男子は演劇部から長髪のかつらを借りてきてかぶり、ぱっと見女の子に見えるようにする。衣装は単に制服で、これも借りる(不参加女子から。かわいそうに同意もなしに萌が決めた)。つまり踊りの恥ずかしさ+女装の恥ずかしさ……。誰が見たい・さらしたい、男の生脚……。

 まあでもこういうのが文化祭――か。


「わ、わかった。どうせなら……サビやりたい」


 ここのフリは手と手を取り合い見つめ合い、正面には見えないよう顔を背けてキスをする。本当に唇当てるわけなくて見せかけだけど、それでも間近でそんな……ねぇ? ふふふ……。

 一番いいとこだけあって、競争率高かった。最初はグー、ジャンケンポン×3。


「わぁい!」「当然っしょ!」「しゃー!」「ウェーイ!」「やばー!」「ふふふ……」


 赤崎・青山・前田・後藤・黒川・雪佐に決まった。……僕だけぷっかー浮いてない?

 未∞知∞数の定員は7名で、フォーメーションはボウリングのピンみたいにピラミッド状。メンバーは何十人っていて歌で・踊りで競い合い、勝ち残って初めて表舞台に出れるんだとか。巡条さんもとい天森栞は不動の首位、フロントワン(最前面の単独者)を全曲務めたという。だから背後に6人の素人を従え、全編舞っていただくしひとりだけ本当に歌唱していただく。

 勝ち残った赤青前後黒雪でさらにジャンケン。ミドルツーとバックフォーを決めた。


「やっばー!」「ふっふっふ……」


 萌と僕が中間のふたりで奴らが後ろの4人に。よし、これでレンちゃんとチューできる!


「えー、佐ぁとフリでもチューとかヤなんだけどー」


 そうか、おまえとも手を取って……目を見て……こっちだってやだよ。


「しおりんしおりぃん、今さらだけどこれってなんの歌ぁ?」


 赤崎が自分のスマホ見せて聞く。画面は歌詞で読んでて気になったって様子。


「お姫さまの悲しい恋の歌よ~。ちょうどそういうアニメがあって~、タイアップ曲なの~」


 ヴィキ見てみたけどぜんぜん知らないオリジナルアニメだった。でも普通にいい歌だよね。詩も曲もロマンチック・ドラマチック。抒情的で悲劇的で衝撃的で、心をわしづかみにされる。


「こんないい感じのヤツやったあとに、ぽとぽとぴちゃぴちゃ雨漏り~んってお笑いっしょ」


 そんなことないわ!


「そ、そうよねそうよね~! 赤崎さ~ん、私のソロは――」

「ダメぇ・やってぇ。暗ぁい感じのあとにおもしろぉい感じで大盛りあがりだってぇ」


 おもしろぉい言うな!


        ◎


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