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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
五章
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第5話「私、決めたわ――高校デビューする」

 チャイムが鳴った・ホームルームがはじまった。僕らは教室にいなくて寒空の枯れ木のもと。校舎裏の例の申し訳程度の緑だけどもう茂みのみ。木々は丸裸でこうなっては上から丸見え。

 巡条さんはしゃがんで膝を抱きかかえて泣いていた。


「…………」「…………」


 僕も萌もなんて声をかけたものかわからない。近づくことすらためらわれて離れて見守る。

 後藤だけじゃないと思う。口々に・次々にしおりんって言われてほとほと嫌気が差したんだ。知られたくない・触れられたくない過去だったんだ。文化祭で再デビュー? とんでもない。


「……アタシ戻ってアイツ殴ってくるわ」


 自分のことのようにムカムカしてるらしい、小声で言って立ち去ろうとする。


「待て、そんなこと望むと思うか?」


 怒らないでって耳打ち忘れたか?


「……チッ」


 思いなおして留まった。僕のかかと蹴ってくる。


「……なんだよ」

「なぐさめろよ」


 茂みの陰の・落ち葉の上の巡条さんを顎をしゃくって示す。それから耳元でその方法を話す。


「アタシよりかはアンタに『望むと思う』けどー?」

「……ふざけて言ってるんじゃないよな?」


 とっととやれって押された・脅された。…………。

 できる気しないけどこのままじゃラチが明かない――そーっと近づいてみる・呼んでみる。


「レンちゃーん……?」

「ぅ……ぅぅ……」


 まださめざめと泣いてて僕どころじゃない。今はほっといてほしいに決まってる。撤退撤退。

 黒川に首根っこつかまれた、つれてかれた……。


「痛いな・引っぱんな……!」

「うっさい、逃げんな……!」


 声をひそめて、それでいて荒げてお互い言い合う。巡条さんは間近。


「カレーン……?」


 ここまで来たからこいつもひと声かける。まあ返事はない。


「佐」

「…………」


 わかったよ。嫌がられたら普通におまえのせいだからな。

 巡条さんのすぐ背後に僕もしゃがみ――包み込むようにおそるおそるぎゅっと抱きしめた。


「っ……!? ぇ……ぁ……」


 一瞬びくっとして石みたいに固まる。日なたみたいにぽかぽかしててほっそりしてて華奢。


「なんて言ったらいいか……わからないから……」

「クマくん……。あり――がと~……」


 体が小刻みに震えだす。やがて前にまわした僕の手に、温かいしずくがしたたった……。

 1時間目開始のチャイムが鳴りだす。それがちょうど止んだとき、巡条さんも泣きやんだ。


「ごめんなさ~い……私のせいでホームルームも授業も~……」

「いいよ。このままゆっくり・じっくりサボろう」

「うふふ、も~ぅ、クマくんったら~」


 どういうあれかさっぱりだけど体をもぞもぞ。……普通にかわいい、もっとぎゅってしたい。

 ウキウキ・ドキドキしてたら後ろでカシャッ。振り返ったら萌がスマホこっち向けてた!


「おまえ撮ったな!?」

「いやー、いつまでくっついてんのかなーって思ってさー。アンタらバッタになったわけー?」


 だ、誰がオンブバッタだ! 僕も巡条さんもぽっと照れた・ぱっと離れた。


「いいもん見たわー・撮ったわー。ほらほら、ドラマのワンシーンじゃーん」


 したり顔でにたにた見せびらかしてくる。おまけにトドメにひとりふた役で大根再現した!


「『なんて言ったらいいか……わからないから……』」

「『クマくん……。あり――がと~……』」

「やめろよ・消せよ!」「やめて~・消して~!」


 まあでもなんだかんだ巡条さんに笑顔が戻った。


「萌々奈もありがと~。いい大人なのに逃げちゃって~・泣いちゃって~……恥ずかしいわ~」


 急にはっとして頬に・目元に手を当てる。化粧落ちを気にしたようだけど、変化・問題ない。


「あんなこと言われたら歳とかカンケーないって。ホントもう平気ー・元気ー?」

「ええ、だいじょうぶ。私、決めたわ――高校デビューする」


 芸能界では有名になれなかったけど、前職を活かして今度こそ――この高校で売れたい。傷跡のようにひた隠しにしてきたのは違った。老いも負い目も感じて孤独でいたのも違った。こんなに素敵な・親身なお友だちが24歳でもできた。なのに下を・後ろを向いてはいられない。

 ふたりがかばってくれるって思ったら~、覇気が・勇気が出てきたもの~――そう締めた。


「カレン……」


 これで案外涙もろいタチなのか、感極まった観で抱きしめる。キレやすいなら逆も然りか。


「オッパイでか……やらか……」


 涙声でうらやましい感想を漏らす。巡条さんも萌っぱいを大だと・柔だとほほ笑んで称えた。


        ◎


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