第4話「ガッコよりAV行ったら国民的性的アイドルなれた系」
来週月曜が・巡条さんがやってきた。今日は早めに登校して、萌と玄関で待機・警戒してた。
「おはよう」「おはよー」
「クマくん・萌々奈……おはよ~。そんなお出迎えなんて~……」
「違うからー、逃げないようしょっぴくためだからー」
「……おまえは警察か・レンちゃんは容疑者か」
しょっぴくなんてどこで・なにで覚えた……。
下駄箱に靴入れて巡条さんが履き替えると、黒川は本当に連行するように横から腕を組む。
「ほら、行こ」
「え、ええ……」
困った顔で僕を見つつ連れてかれる。……どうせならあいてるもう片方の腕、組みたいな。
背中が小さく見える。迷いが・憂いが拭いきれないんだと思う。萌の奴、いい奴・にくい奴。強引だけど・癪だけどわかってる。僕らが待ってなかったら普通に逃げ帰ったかもしれない。
教室前に到着。時の人ということで何人かはあっと目を剥いて、いわゆる顔を指してきた。
1年(学年中)にも2、3年(学校中)にも良くいえば認知・悪くいえば詮索されだしてる。
「なか入るよー。いいー?」
「ま、まって~。す~~……は~~……」
片手を胸に深呼吸。
「ふ~~……ふ~~……」
……それは冷ますとき。
「ひ~~ひ~~ふ~~……」
……それはもう産まれるとき。
「あ、そうだ、席替えしたよ」
「あら~、そうよね~、11月になったものね~」
巡条さんが不登校だったのは10月28日~11月4日。ちなみに今週末(11日)が文化祭。
「それで私の席って~?」
「説明すんのムズいとこなんだけどさー、アタシと佐ぁでナナメに挟まれてるー」
「まぁ~。オ○ロだったらひっくり返っちゃうわ~」
優しい・慎ましい笑みを漏らす。見てたら聞くまでもないけど聞いてみる。
「落ち着いた?」
「え? ふふっ、ええ」
「じゃあ行く、よっ!」
組んでる腕引いて頼もしく萌が踏みだす。
あの野郎、早速だった・最速だった――
「おっ、しおりん……!」
巡条さん、いや、天森栞を見つけて前田が寄ってくる。愛称で呼んでなれなれしい……!
「なあなあしおりん、めちゃシコ! さっすが〝グラドル めちゃシコ〟で出てきただけ――」
黙れ・くたばれと言わんばかりに黒川がおもっきり殴った――壁を。
「もっぺん言ってみろ粗チ×チ×、タマつぶすぞゴラ」
「うるせークソブス・クサマ×コ、クリちぎるぞゴラ」
口が悪すぎる・品がなさすぎる……。萌はたぶんこの手の歴代彼氏の悪影響受けてる……。
一触即発、にらみ合う(こいつらふうにいえばガン飛ばし合う)。巡条さんも僕もビビってる。教室の連中も固唾を呑んで・口をつぐんで、クラス一の男女と全国一の美聖女を盗み見てる。
例外は同格・同類のあいつらだった。
「しおりぃん!」
赤崎までなれなれしくそう呼んで寄ってきた。青山・黄島・緑原、加えて後藤もぞろぞろと。
「……しおりん言うな」
思いのほか小声でぼやいただけになった。対黒川なら慣れたもので強く言える・出れるのに。
「ねぇねぇ、りかちゅぴ紹介してぇ!」
「ほかにも芸能人と知り合いっしょ!? イケメン俳優頼む・求む!」
「シネ。たかるならカレンじゃなくてウンコだろうが、ハエどもが」
しっしと手を払う。……おまえも『紹介してほしいんだけどー』って言ってたんだけどー?
「たかってんのはそっち」
「ハエ以下、金魚のフン」
黄緑が辛辣に・簡潔に言い返す。ぬっと前に出てきて十数センチも低い萌を見下ろしてくる。
こいつらの仲は依然悪い。あんな過激な・凄惨ないじめを受けて、黒川が許せるわけない。巡条さんが来なくなった一週間、実は危うかった。サンカレンさまこそが抑止力だったから。気安く話してても内心おそれがあるはず。怒らせたら――自傷して叫んで――たまらないと。
「も、萌々奈」
怒らないでと耳打ちする。萌は舌打ちで応じ、目線を切った。
そこへ後藤がぽーんと・ぼーんと爆弾発言。
「しおりん、なんで引退した系? ガッコよりAV行ったら国民的性的アイドルなれた系」
場の空気が・メンツが凍りついた。味方の前田と四色さえも引いてる・あきれてる。
「っ……」
黒川の腕を振り払い、巡条さんが逃げだす。
「カレン!」「レンちゃん!」
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