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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
四章
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第18話「ムカつく……イラつく……嫌いっ……ホント大っ嫌い……!」(前話と地続きです)

「萌々奈……!」

「ん~~~~! ん~~~~!」


 哀れ口にはガムテープ、涙目で訴えるのは「助けて」なのか「見ないで・来ないで」なのか。

 赤崎・青山は油性のペンを手に――落書きしてた。机の次は体って……どうかしてる……!


「あなたたちなにをしているの!? こんなこと許されないわ!」


 さすがの聖女も怒るというもの。いつになく語気が・息が荒い。


「許されるよぉ。だって『仕返し』だしいいんだよねぇ?」


 黒川を見て皮肉たっぷりに言う。昨日担任と揉めたときにさんざん聞いた主張に違いない。


「あたいらボコボコで脚とか青あざっしょ? これ、そういうこと」


 青いペンで脚に斑点描き殴ってる。腹には見るに堪えない言葉を黒とか赤で書き殴ってる。

 この期に及んで萌が嫌いもうざいもない、こんな犯行を・蛮行を見せられたら憤るしかない。


「前田・後藤はなんなんだよ!? セクハラどころじゃないだろ!」

「うるせーよセッタ、オレらも仕返しに決まってんだろーが」


 椅子で暴れた月曜(三日前)の。確かにこいつは怪我して後藤も少なからず巻き添え食った。


「んなキレておまえ、マジでモモナとデキてんのか? 言っとくがオレの元カノだからな?」

「あとヤリマンだからこういうの嫌じゃない系」


 元カノだから・ヤリマンだからこれくらいいいだろって論理みたいだな。……ふざけんな。

 前田は後ろから羽交い絞めにして脚絡ませてロックしたうえ、足も踏んで完全に抑えてる。後藤は僕らに背を向けて――なぶってる・しゃぶってる。よく動くから黒川の体が見え隠れ。萌が嫌がってる・抗ってるのは言うまでもない。化粧でギラギラした目元が涙でキラキラ……。


「ケイが前戯してオレが久々に一発かますんだよ。わかったら出てけ、ジュンジョーさんもな」


 そう聞いて今カノ、赤崎が黄緑に顎をしゃくる。つまみ出してぇ、とでも声が聞こえるよう。


「ん~~! ん~~~~! ん~~~~~~~~!」

「黒川っ……!」「萌々奈っ……!」


 ふたり合わせてフルネーム――言ってる場合じゃない。このっ、放せ緑、力強いな……!

 同じく巡条さんも激しく黄に抵抗、普段からは考えられないほど凛々しく・猛々しく叫んだ。


「いいかげんにしなさい! 私のお友だちにひどいことしないで!」

「お友だちぃ? ――あんなに嫌ってたのにそうなのぉ、黒川さぁん?」

「あ、それもらいっしょ。お、ば、さ、ん、と――お友、だち、っと」


 赤いペンで脇腹の辺りに書き加えて笑ってる。その瞬間、隣の巡条さんが――殺気立った。


「黄島さん――ごめんなさい!」


 力でかなわず後ろでまとめられた手首は振りほどけない。どうしたか?

 頭おもっきり振って黄島の顔面に頭突きした。鼻血こそ出ないけどうめいて放してしまう。

 身動きが取れるようになるや開きっぱなしの掃除用具入れからほうきを取り――


「ああああああああ~~~~~~~~!」


 絶叫してあいつらに躍り――かからない。なんとトイレを、個室の角をガンガン叩きだした!


「レン――ちゃん……?」


 僕も萌も赤青前後も呆然・慄然。黄緑は抑えようと機を窺うも振られるほうきで近づけない。

 ほどなく真ん中くらいで折れた。できあがったのはとがった木の断面――そういうことか! ただのほうきじゃ武器として普通に弱い、とがらせて武器から凶器にしたんだ! 実は冷静!

 まったく冷静じゃなかった・そういうことじゃなかった。


「うっ……! くっ……!」


 袖をまくって露出した自分の腕を――とがった先で何度も何度も刺しはじめた……!


「レンちゃん!? レンちゃん!」


 黄島がやられたときに緑原はうろたえて僕を離してる。駆け寄って止めても――やめない。


「どうしてっ……! 萌々奈をっ……! いじめるのっ……! ねえっ……! ねえっ……!」


 違う――これ……あいつらに刺してる……! でもそれはできないから……自分、に……。


「お……おばさぁん……?」

「や、やめろよ……なあ?」


 ただの自傷じゃないと馬鹿でも理解できたのか、奴らの邪気が・血気が一様に失せていく。

 巡条さんはやめない、僕も止め――ない。黒川を見ると目がうるうる、涙があふれだしてる。

 とうとうおそろしくなって・耐えられなくなって、四色も前後も脱兎のごとく逃げてった。

 白い腕は赤い血にまみれていた……。


「レンちゃん水! とりあえず水で!」

「は~い……クマくんは萌々奈をおねが~い……」


 たぶん痛いのと叫び疲れたのとで元気はないけど、元のおっとり・しっとりに戻ってくれた。

 黒川の口のガムテープを剥がす――と。落ちてる制服を着ることなく下着のまま洗面所へ。


「花……アンタ……なにしてんの……。バカじゃん……バカ……」

「み、見ないで~・泣かないで~……。早く服を着なさ~い……」


 女子の服を触るのは気が引けるけど、セーラーを・スカートを持ってってやる。

 けど渡そうにも渡せなかった。横から抱きついて弱々しくすすり泣いてる。


「ごめ……っ……ごめんっ……」

「萌々奈は悪くないわよ~……。だいじょうぶ~……?」

「んっ……。なんで……アタシなんかのっ……ために……」

「言ったでしょ~、明日は親友・あさっては大親友~……」


 お友だちになって明日で二週間になるらしい、だからすでに結構な大大大親友なんだとか。


「けどさ……アタシ……クズだしっ……前アンタ殴ったし……。最近も……盗ったし……!」


 クオッカのぬいぐるみ、やっぱりこいつが犯人だった。……白状しただけよしとしよう。

 巡条さんはハンカチで水を拭いて患部に当てた。心なしか元気を取り戻し、萌に向き合う。


「クズなんて言わないの~、萌々奈はいい子~。本当に悪い子は泣いたり謝ったりしないわ~」


 正直に言ってくれたご褒美にクオッカはあげる、でも欲しかったら言ってね~と諭す・許す。


「バカ……返す……返すって……」

「いいのよ~、また旅行に行けばいいの~。あっ、そうだわ、萌々奈も一緒に行きましょ~。本物が街中にいて人なつっこくてとってもかわいいの~、ただハエと紫外線がすごいから――」


 黒川が右手で力なく肩を叩いた。左腕はずっと両目に当てて、涙を・化粧落ちを隠してる。


「なんっ……でだよ……! 怒れよ……クソっ……! いっつも……ニコニコしてさ……! 

ムカつく……イラつく……嫌いっ……ホント大っ嫌い……! っ……ぐすっ……ひうっ――」


 巡条さんの胸に顔をうずめて大声で泣きだす。……すなおじゃないな、ほんとは大好きだな。


「あ~ん、泣かないで~・嫌わないで~……。――クマくん、スカートだけでも今のうちに~」


 僕? ……僕? わ、わかったよ……。ちょっと足上げてくれ、よし……これで――よし。



 黒川の呼びかたが〝花〟から〝カレン〟になった。


        ◎


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