第12話「あっはっは! どの辺がおばさん?」(前話と地続きです)
光沢も透明感もあるツヤツヤの褐色の顔。つまりが化粧が落ちている・毒気が抜けている。
頬をぺたぺたノーメイク黒川は目を見開き、指をわなわな途端に赤くなって奇声をあげた。
「☆@%&∝ж~~~~~~~~!」
風呂・トイレへ急いで戻り「花ぁバッグ!」、扉の前に持ってこさせてたぶん化粧道具取った。
……素っ裸よりもすっぴんが恥ずかしいのか。おまえの恥部は股間じゃなくて素顔なのか。
「うふふ、お化粧が落ちてもかわいいのにね~?」
巡条さんが小声でにっこり・ほっこり言ってくる。……別人だったけどブスではないかな。
ピンポーン。来客――じゃない、ルインだ(巡条さんにだ)。
「あら~!」
誰か・なにかわからないけどすごい嬉しそう。弾むような指遣いでるんるん返信した。
「クマくんクマくん、今日はごちそうよ~」
「ごちそう?」
レンちゃんの手料理はいつだって・なんだってごちそうです!
「でももう少し時間がかかるの~。20時過ぎになっちゃうんだけれど~……いいかしら~?」
「うん、いいよ。連絡しとく」
帰るの遅れるって親に送る。最近〝友達〟の家で食べてきすぎで変に思ってるだろうな。
「ごめんなさ~い……未成年の男の子を夜遅くまで引き止める犯罪者おばさんで~……」
「自虐がすぎるよ・ひどすぎるよ……犯罪者でもおばさんでもないって」
まもなくフルメイク黒川が出てきた。ベッドに腰かける。さっきのでばつも機嫌も悪そう。
「……見んな・比べんな」
すっぴんと比較するなとそっぽ向く。僕と巡条さんは顔を見合わせておやおや・ニヤニヤ。
「……花、晩ごはんは?」
「あのね~、あと30分くらい、20時過ぎまで待ってほしいの~。ごちそうだからおねが~い」
萌は舌打ち、飽きずにスマホイジりだす。僕らもスマホ一台――巡条さんの――で動画観る。触れないまでも肩を近く寄せ合って、ローテーブルに置いた小さい画面を、猫の日常を一緒に。ワンちゃん・ニャンちゃん系が好きだとか。リアルクオッカも見た。思ってたより……でかい?
ピンポーン。今度は来客だ、家のチャイムだ。気づけば20時過ぎになっていた。
「は~い、いらっしゃ~い」
玄関へ出迎えに行く。いらっしゃい……?
ドアが開いてそこに現れたのは、トンガの写真に写ってた綺麗な・快活なお姉さんだった。アダルトなスーツでタイトなスカートでものすごい美脚。短髪ながら妖艶で気も酒も強そう。
「よっ! おっ?」
僕に・萌に気づいて切れ長の目をぱちくり。巡条さんは説明せずとりあえず部屋に上げる。
「こんばんは」
「こんばんは」「ばんわー」
おまえな……適当なあいさつもそうだけどスマホやめろよ・お姉さん見ろよ。
「おばさん誰ー?」
「お、おまえな!」
怖いもの知らずだな・礼儀知らずだな! 初対面の社会人のお姉さんによくもまあ……!
「あっはっは! どの辺がおばさん?」
「まースーツ、あとリップー? JKで唇、そんなべたーって塗んないしー」
お姉さんはなるほどってグーでパー打った。それもおばさんくさーって萌がまぁた言う!
「はっは、確かにおばさんか。おばさん木庭舞歌」
「黒川萌々奈ー」
自己紹介済んだ! どっちも普通にコミュ力高い・人間強い……。
「お仕事お疲れさま~」
巡条さんがお茶入れて持ってきた。コバさんに差し出す。
黒川だけベッドに座ってて、残り3人でローテーブル囲んでる。
「舞歌、こちら雪佐拓真く~ん。前に話したの覚えてる~?」
「覚えてる覚えてる。あんたみたいな奇特合法JKに勉強教えてくれるいい子でしょ?」
奇特合法JK……。考えたことなかったけど――そうか! 巡条さんって合法か……!
……まあ僕が合法(成年)じゃない。
「も~ぅ、変な言いかたしないで~……。――クマくん、こちら木庭舞歌~」
大の親友・戦友で年に一回の海外旅行もこの人と行くという。……戦友?
「クマくんって……花恋あんた――付き合ってんの!? とうとう男子高生とナニしてんの!?」
「な、なにもしていないわよ~! お付き合いもしていないけれどそういう呼びかたなの~!」
半信半疑のコバさんは僕を見て聞く。
「……セッサくんは花恋のことなんて呼んでるの?」
「……レンちゃん――です」
つい最近なんです……慣れようとしてるんです……。
「ぷふっ……そう……毎日楽しいね……レンちゃん?」
「ど、どういう意味よ~・楽しいわよ~! なにをそんなに笑いをこらえているの~!?」
両腕ぱたぱた、ポカポカ叩く。親友相手の巡条さん、かわいいなぁ・キャラ違うなぁ……。
「怒るなよレンちゃん、クマくん見てる……ぷふっ。それよりほら、これ!」




