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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
一章
4/214

第4話「カップもヒップも普通に大きめとしか……」

 胃もまぶたも重い魔の5時間目が終わり、巡条さんは次の英語の教科書片手に聞いてきた。昼休みと違って常の休み時間はたかが10分、大して力になれずあっという間に最終6時間目に。早くも近場の連中から「おまえらどうした」みたいな視線を感じる。いやぁ、悪い気しない。

 先生が黒板に向かってるのをいいことに、右隣の東くんが小声で言ってきた。


「あの巡条さんと意気投合したの?」

「違うよ、勉強教えてほしいってそれだけだよ」


 というか『あの』ってどの? なんか含みあるけど。


「あのはあのだよ。もしかしてまだわかってない?」

「え、なにが?」


 スリーサイズ? そんなのわかるわけない……。カップもヒップも普通に大きめとしか……。


「なんとなくわかりそうなもんだけどね。いやね、あの人実は――」


 先生が振り返ったからそこで話すのやめた。実は――なに……?

 わざわざ改めて続きを言ってはくれなかった。気になった以上に怖くなって僕も聞かない。なんというかネガティブなものを感じたから。言いかけたときも小馬鹿にする響きがあった。


        ◎


 地獄の6時間目もやっとキーンコーンカーンコーン。天国に昇れる(家に帰れる)。

 帰り支度してたら声かけられた・笑顔ふりまかれた。


「今日はありがと~。お昼休みくらいでいいからこれからよろしくね~」

「う、うん。あ、ぜんぶいいよ。休み時間ぜんぶ」


 ほんの10分でも4つ(1・2・3・5時間目終わり)足したら昼休みに匹敵する。


「いいの~? 嬉しいわ~・助かるわ~」


 こちらこそ授業終わり毎回真横で癒やされていいの~? ……心臓もつかな・呼吸続くかな。


「また明日ね~。お疲れさま~」


 ……お疲れさま? いやまあお疲れだけど仕事終わりの大人みたい……初めて言われた。


「ああ、えっと~……ん~……バイバイ? そうよ~、バイバイよ~!」


 両手をぶんぶんどこかなつかしむように言いまくる。バイバイが出てこなかったんだ……。

僕もそれ言う相手(友達)いなくなって長いけど、さすがにド忘れしないと思うけどなぁ……。


「バ、バイバイ」


 久々に言ってみるのも女の子に言ってみるのも照れくさかった。


        ◎


「あ~、おはよ~」

「え? あ、うん……お、おはよう」


 翌朝、初めてあいさつを交わした。やっぱりこれもう付き合って――ません、すいません。

 僕の登校は結構ギリギリで予鈴過ぎ。巡条さんはいつも先に来てて例によって自習してる。


「朝来るの早いの?」

 おはようの流れで・勢いで勇気出して聞いてみた。


「ん~、そこまで早くないわ~。大体8時頃よ~」

「そうなんだ。な、なら僕も8時頃来て……朝から勉強見てあげようか?」

「あら~、気持ちは嬉しいけれど無理しなくっていいのよ~」


 確かに今より15分ちょっとも早く来るのはできそうででき――ない……。朝強くない……。

 巡条さんが自習に、教科書――見れば古文――に戻ってすぐ、もうひとつ聞いてみた。


「べ、勉強好きなの?」

「まさか~。細切れの時間も大事にしないとついていけないだけよ~」


 ノートにせっせと例文を・レ点を書きながら苦笑する。顔も声も綺麗なうえに手も字も綺麗。


「おうちに帰ってからも復習復習で~……」


 予習する余裕はないんだね……。まあ復習してるだけで立派だけどね。


「塾とか行ってる?」

「いいえ~。行きたいのは山々だけれど~、さすがに恥の上塗りというか~……」

「恥の上塗り?」


 オウム返しに聞き返したけど答えはなかった。手を止めて・話題を変えてこっちを見てくる。


「雪佐くんって流行に疎い・敏い~?」


 急になんだろその質問……。トレンドにもフレンドにも興味ないから疎いに決まってるよ。たとえば昨今誰もが月額制の動画コンテンツ観てる風潮あるけど、料金も関心も払ってない。


「まぁ~、私もよ~。今の女の子が好きっていう韓国のドラマもアイドルもさっぱりで~……」


 巡条さんも普通に『今の女の子』だよ……流行りさっぱりだからって自分を昔にしなくても。

 とうとう本鈴が鳴った・喧噪が収まった。もうすぐ担任が来る。

 静かになった教室で3ギャル2チャラはまだうるさい。人目ならぬ人耳もはばからず。

 あくまで前隣の前田から目線をそらすために左を見たら――


「ふふっ」


 転校初日のようにニコっと・クスっと笑いかけてくれて、腰の辺りで小さく手を振ってる。

 反応に困って体育会系みたいに「うす」って会釈した。……なにが「うす」だよ・会釈だよ。


        ◎


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