第8話「は~い、拓真~。…………」
ラーメンを食べて次は映画を観に行ったわ~。公開したばかりのオリジナルのアニメ映画~。もう6年も前になるのよね~、あの『君の那覇。』みたいな青春モノでとってもよかったわ~。雪佐くんが遠慮するから私が選んだけれど~、萌々奈には乙女チックって引かれたの~……。そもそも私と映画鑑賞しておもしろいかしら~? おもしくなかったらごめんなさ~い……。
「おもしろかったね。圧巻の映像美」
「まーキレーはキレーだったけどさー、ネトフェリにもっとおもしろいのいっぱいあるわー」
「……だからおまえには言ってない・聞いてない。ネットフェリックスだか知らないけどな、そんなにいいなら家帰ってゴロゴロ観てろ。いちいち文句言って〝おばさん〟くさいぞ、萌」
「せ、雪佐くん」
言~い~す~ぎ~! 私には優しいのにどうして萌々奈には厳しいの~……。
また火山のように噴火しちゃうじゃ――
「うっさいバーカ。アンタはガミガミおじさんくさいわ、佐」
……慣れたみた~い。怒るのも暴れるのも疲れるものね~、おばさん、ホっとしたわ~……。
「ふたりとも~、星夜くんと朝日ちゃんみたいに仲よく――」
「できないよ!」「できるか!」
瞬時に・同時に全否定~……。あっ、星夜くんと朝日ちゃんは映画の主人公・ヒロインよ~。
「で、このあとどうすんのー?」
「お買い物~。萌々奈も欲しい物があったら言ってね~、買ってあげるわ~」
「アハハ、やっぱママじゃーん。アタシはともかくそんな貢がなくてもこんなの逃げないわー」
アンタに惚れてるしアンタも惚れらてんのわかってないわけー? そ、それはその~……。お互い〝気になる人〟って半月も前――木陰でこて~んのとき――に照れて言ったけれど~、本当に〝両想い〟みたいなことで合っているかしら~? 24歳が気になる、だったら~……。反対に私は雪佐くんのこと、とっても好きよ~。でも恋心か姉(?)心かわからないわ~……。前者だとしたらやっぱりいけないと思うの~。おまわりさんが~・マスコミさんが~……!
「ず、ずけずけ言うな。なにを根拠に惚れてるだの惚れられてるだの……」
「見りゃわかるっての。アンタみたいなの、優しくされたら誰でも惚れるマンじゃーん」
だからこんなの1円も1ウォンも貢がなくてもいいだなんて~……。
「み、貢いでいるわけじゃないわ~。今日はテスト勉強をみっちり見てくれたお返しだもの~」
それに『こんなの』じゃないわ~! 雪佐くんはいい子よ・かわいい子よ~!
「どうでもいいけどとりあえずここ出なーい? ノドかわいたー、花ー、ジュースおごってー」
「……それくらい自分で買えよ」
それくらいお安いご用よ~。……こういうところがその~、『ママ』って言われちゃうのね~。
シアターエリアから移動して~、自販機ピっピっピ~。ここは大型ショッピングモール~。萌々奈はコーヒー・雪佐くんは炭酸ジュース・私はお茶で~、近くの長椅子に座って一服~。
真っ先に飲み干した雪佐くんが唐突に言ったわ~。
「買い物はいいよ」
「え? どうして~?」
「ラーメンに映画にこのジュースに十分買ってもらったよ。ありがとう」
「っ……」
だ、大好き~~~~! 爽やかなその横顔が・きちんとお礼言えるところが大好き~~~~!
「そ、そう~? 大抵の物は買ってあげられるように~、お財布に10万円入れてきたのよ~?」
「入れてきすぎだよ……。萌じゃないけどそれはママだよ……リッチな・エッチなママだよ」
リ、リッチじゃないわ~・ッチじゃないわ~! なけなしの・切り崩しの貯金なの~……。
「買い物しないんだったらいいわー、帰るわー」
萌々奈も唐突にそう言って~、空き缶をゴミ箱に投げて入れて~、そのまま行っちゃった~。
「ま、またね~! 学校でね~!」
「……二度と来るな・邪魔するな」
雪佐く~ん……萌々奈とも仲よくしましょ~。すなおじゃないだけで悪い子じゃないわ~。乱暴な・意地悪なところはあるけれど~、そういうコミュニケーションしか取れないのよ~。あと少~し思ったのは~、意外とお似合い~? ふたりともケンカするほど――みたいな~。
「…………」「…………」
ふたりきりに・だんまりになっちゃったわ~。このままだと変な話題が・ひきだしが~……。
「このあとどうする? 今15時半だからあと1時間くらいはいけるの?」
「え、ええ……そうね~」
今日は金曜日、17時からアルバイト~。16時半には帰って支度をしないといけないの~。
「じゅ、巡条さん。買い物の代わりにお願いがあるんだけど……いいかな?」
「ふふっ、いいわよ~。雪佐くんのおねがい、聞かせて聞かせて~」
「えっと……なんというか……呼びかたを……こう……新たにというか……」
萌々奈みたいに呼び捨てで・下の名前で呼んでほしいの~? うふふ、そんなことなのね~。
「は~い、拓真~。…………」
「巡条さん……?」
ちょ、ちょっとまって――恥ずかし~~! 男の子の名前をそのまま呼ぶの恥ずかし~~! 私の免疫・色恋のなさ~! 果汁じゃなくって清純100%~、甘々~、天森栞だったの~!
「や、やっぱり呼び捨てにはできないわ~。た、拓真くん、拓真くんね~。…………」
くん付けにしてもダメだわ~・発熱しちゃうわ~! あだ名にしましょ~、そうしましょ~!
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