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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
四章
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第5話「雪佐とかいったっけ、だったらアンタ佐ねー」

 きたる連日(10月12日~14日)の過酷なテストに向け、僕たちは日々勉強会に明け暮れた。初めて家に行った翌木曜も翌々金曜も家庭訪問。続く土日は朝から訪ねて昼もごちそうに! 毎日晩ごはん作ってくれるの嬉しすぎた・おいしすぎた。これもう僕たち付き合ってません? でもやっぱり至って健全でいい感じにならない。巡条さんは真心・僕は下心ということか……。

 それからこのテスト直前の一週間、来る日も来る日も巡条さんはソロ川に話しかけだした。


『黒川さ~ん、よかったら一緒にお勉強しな~い?』

『黒川さ~ん、よかったらお昼一緒に食べな~い?』

『く、黒川さ~ん、飛行機の〝飛〟ってほかの漢字にぜんぜんなってないわよね~』


 どんな話題ですか・ひきだしですか……。たとえば〝田〟ならいくらでもなってますよね。〝男〟〝雷〟〝畑〟〝町〟〝福〟〝畿〟とか。いわずもがなソロ川、もとい黒川の〝黒〟も。その点〝飛〟は画数多いにしても、さんずいとかくさかんむりとかなんか似合いそうですね。

 ……僕の感想はどうでもよくて。ソロ川はことごとく無視だった。

 あんな奴なのにどうも巡条さんはほっとけないらしい。正直言ってよせばいいのにと思う。僕は一緒にお昼もお勉強もしたくない。巡条さんくらい心が優しくないから・美しくないから。なによりふたりぼっちがいい。あいつが来たら今のこの疑似カップル感・姉弟感が壊される。

 まあ来るわけないか。

 そうして迎えたテスト最終日――


「雪佐く~ん、お疲れさま~」

「うん……お疲れ」


 三日にわたる試験、いいや、試練も晴れて終わった。教室中がざわざわ・清々してる。

 チャイムが鳴るなり巡条さんが左手に来てくれた。かたや右手、右隣の席はソロ川だ。


「出来はどう?」

「おかげさまでばっちりよ~。赤点はきっと回避できたと思うわ~」


 僕の机に指だけ置いてさっとしゃがむ。……回避を表現してるの?

 ひょこっとかわいく顔だけ出して普通に言った。


「黒川さんもお疲れさま~。どうだった~?」

「…………」


 相も変わらず口を・心を開かない。スマホも爪もイジってる。


「現役のふたりはそんなことないのかしら~、テスト中って息が詰まっちゃうわ~」

「はは……」「…………」


 僕は苦笑い・ソロ川は笑わない。別に24歳でも正真正銘、現役高校生だよ。


「私たちこれから打ち上げ――じゃなくって~、お疲れさま会するの~。黒川さんもどう~?」


 え~、誘うんですか~……。けどどうせ行くわけ――


「行くー」

「……は?」

「行くっつってんの」


 返事も見向きもした。黒い・エロい脚を偉そうに組んで体までこっち向ける。……見えそう。


「あら~!」


 ばっと立って両手を合わせた・顔を輝かせた。一方僕は曇る・憤る。


「……どういう魂胆だよ・根性だよ」

「べっつにー。ヒマだから行ってあげてもいいってだけー」


 ひじも頬もついて腹立つなこいつ。態度も立場もなってない。


「どの面・どの口でどっから物言ってんだよ。行ってあげてもいいってだけなら来なくていい」

「も~ぅ、雪佐く~ん! ふたりよりも三人のほうがいいじゃな~い」


 よくないですよ、黒川ですよ……? またグーで殴られる、またはパーではたかれる……。


「で、お疲れさま会ってー?」

「このままお昼を食べに行って~、映画を観てお買い物ってところかしら~」


 そう――普通にデート! だけど巡条さんはそんな認識ないと思う(単にお礼だと思う)。


「デートかー。あ、金はおばさん持ちー? フっ、じゃあ転校生のママ活じゃーん! アハハ!」


 腹をかかえて・脚をばたつかせて笑いだす! おばさん言うな、誰が・なにがママ活だ!

 巡条さんはそういうママにはならないと赤面で否定。僕はせめてこいつの呼びかたを正す。


「ついてくるんだったらおばさん・転校生ってもう呼ぶな。お姉さんだよ・2か月経つんだよ」

「まー転校生って呼ぶの長いしー? 雪佐とかいったっけ、だったらアンタ佐ねー」


 たった一字かよ・一音かよ……ダニ・ノミ未満かよ。


「おばさん下の名前カレンだっけ・花と恋だっけー? あのクソアマナが言ってたっけなー」


 だったらアンタ花ぁ!? 発音上はまるで蚊ぁ!


「……ならおまえ萌な」


 発音上は藻な。わかるか、水中に生えてる草な。来世あれな。


「好きに呼べばー。――花はアタシのことなんて呼ぶー?」

「好きに呼んでいいの~? ん~、うふふ、萌々奈ちゃ~ん」

「あん? ちゃん付けとかナメんな・ざけんな、ぶっ飛ばすぞコラ」


 ぶっ飛ばすなコラ……。なんでそこまでキレるんだ・気に障るんだ……。


「あ~ん、ごめんなさ~い……萌々奈――さ~ん?」

「ちゃんもさんもキモいんだけどー・要らないんだけどー」

「そう~? ふふっ、わかったわ~。よろしくね~、萌々奈~」



 黒川萌々奈が仲間になった……? 僕も呼び捨てで・下の名前で呼ばれたくなった……!


        ◎


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