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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
四章
34/214

第3話『昨日夕方、16歳の男子高生を自宅に連れ込んだとして逮捕されたのは、巡条花恋容疑者(24)』(前話と地続きです)

 学校離れの第一歩……? ますます不明だけど軽~い感じで重~いこと言ってます……?

 もしかしたら土足で地雷踏んだ気がして話も対象も変える。


「あのぬいぐるみもかわいいね。リス?」

「いいえ~、クオッカっていうの~」

「クオッカ?」


 曰くオーストラリア南西のパースってとこの沖のロットネスト島ってとこにいっぱいいて。口角が上がったような口してて笑ってるように見えて〝世界一幸せな動物〟って呼ばれてて。体長四、五〇センチくらいでカンガルーの仲間で袋あって、人なつっこくて寄ってくるという。


「これがそうよ~」


 スマホで撮ったの見せてくれた。そこら中でちょこまかしてたんだとか。ちょこまかって。


「へー、かわいいね。ほんとに笑ってるみたい」


 クオッカはさておいてお互い麦茶も飲み干して、巡条さんは両手を合わせて明るく言った。


「それじゃあお勉強しましょ~」

「うん。あ、着替えなくていいの?」

「あ~、そうね~。着替えてくるわ~」


 四段ある白いタンスに向かったものの、ピタっと止まる・クルっと振り返る。


「……いつもどおりのほうがいいかしら~?」


 質問の意味も意図もわからない。あいまいにうなずくしかない。


「わ、わかったわ~」


 結局タンスから服は取らず、カーペットの隅にたたんで置いてあるの持って風呂・トイレへ。

 かすかな・みやびな衣擦れがしゅるしゅる聞こえてくる。


「…………」


 まぶたを閉じて・耳をすませて待つこと少し、部屋着になった巡条さんが静かに出てきた。お邪魔して早々踏みつけたパンティーよろしく、上下パステルピンクの長袖長ズボンの――


「パジャマ……?」

「そ、そうよ~。これがいつもどおりなの~……」


 恥ずかしそうにうつむいてこっち来て座る。左肩に流したまとめ髪をさわさわ弁明しだす。


「パジャマってあの~、寝るときに着るものだと思うけれど~……。お洗濯が~、その~……」


 わざわざ部屋着をおろすのが嫌ということらしい。一日中パジャマが楽ということらしい。


「土曜・日曜はお出かけもしなくってずっと寝ていて~……。だ、だからどうか許して~!」


 許すもなにもないですよ・いいですよ……。ひとり暮らしって自由であり面倒なんですね。

 にしてもパジャマって部屋着のなかの部屋着! だって本来、寝るときしか見られない! それって同棲・結婚でもしないと見られない! そう考えたらどんな薄着よりも見られない!

 露出ゼロなのにあらぬ想像で緊張してしまう。なにを思ったのか巡条さんは立った・言った。


「や、やっぱりいつもどおりっていってもこれはないわよね~。病人みたいで引くわよね~」

「え、いや、引いてないよ・ないことないよ。そのままでいいって」


 タンスに向かったのを止めた――けど。……もう一回着替えてもらうのも一興だったかな。

 パジャマの巡条さんが真横でローテーブルで勉強しはじめる。普段とはまた違ういい匂い。美人の隣も慣れたつもりだったけど、家で・床でっていうのは一段と格別。……普通に照れる。


「今度の中間テストは私にとって天下わかめ~! びしばし・げしげしおねがいしま~す!」

「げしげしはしないよ・蹴りだよ……。あと分け目……」


 もう中学の復習はしてる暇ない。ひとまずお預けで今度のテスト範囲を重点的に押さえる。とにもかくにも赤点回避。オール3、4の僕でも全教科30点以上は取らせてあげられるはず。


「雪佐くんは転校前の1学期のテスト、平均何点くらいだったの~?」

「うーん……65点前後ってとこかな。大体60点台で一番高くて79点・低くて51点だったよ」

「まぁ~、すごいわ~・賢いわ~!」


 大してすごくも賢くもないけど僕の半分でいい。それだけ正答できたらいわば黒点になる。


「巡条さんは1学期のテストの平均は?」

「ん~……15点前後~? 一番高くって26点で~、最低は4点~……」


 真紅の・納得のオール1、2……。ってことは平均点、倍にしないと!

 僕の半分と思ったら訳ないけど、巡条さんの倍と思ったらとてつもない――かもしれない。


        ◎


「これはほら、sinθ=y/rだよ。sinθは正弦・rは斜辺・yは高さだよ」

「なるほど~! 直角三角形さんもこれで丸裸ね~。コサイン・タンジェントも同じことね~」


 お勉強開始から1時間、今日は苦手な数学Iをこれでもかと見てもらうことにしたわ~。

 それはそうと~――今さらだけれどこれってもしかして~……おうちデート~~~~!? そんな気も考えもなかったの~。純粋に家に来て教えてくれるなんて嬉しい・優しいって~。

 けれど未成年の男の子をおうちに招くって――ひょっとして犯罪~……?


『昨日夕方、16歳の男子高生を自宅に連れ込んだとして逮捕されたのは、巡条花恋容疑者(24)』


 そして映像は護送車の後部座席~! こんなはずじゃとうなだれる・うちひしがれる私~! 首から下を撮られて私を語る知人・友人~! さらに流れる・暴かれるアイドルだった過去~! スタジオで軽妙に物申す売れっ子芸人さ~ん! ネットで軽薄に物申す現代っ子みなさ~ん!


「…………」

「巡条さん?」

「え? あ、ええ、ぼーっとしてごめんなさ~い」


 もし捕まっちゃったら迷惑をかけて――マスコミさんが押し寄せて――ごめんなさ~い……。


        ◎


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