第12話「テメーらいつからだ・どっちからだ?」(前話と地続きです)
「バカ、声出すな。誰か来ただろ」
「だ、だってぇ……きもちよくてぇ」
な……な……な~~にやってんだ~~~~! 出してる最中なのにムクムク上向く~~!
え……こいつら付き合ってるのか……? なら黒川は……?
ちょっと頭によぎったら――普段よりとげとげしい・物々しい雰囲気で現れた!
「っ、な、なに入ってきてんだよ」
さっと右に体を曲げて大事なとこ隠す。ちょうど出し終えたとこだったのが不幸中の幸い。
黒川はうんともすんとも言わず、後ろの個室からは「セッタか!?」・「転校生!?」と驚きの声。けど驚くのはまだ早い。それを耳にした黒川は、ひとつ隣の個室の便器に乗って見下ろした。
「萌々奈……!?」「モモナぁ……!?」
「アンタらここでなにしてんの? マナ上脱いでなんでブラもずれてんの? ……なあっ!?」
ドゴォンと壁を蹴りだす・怒りをぶつけだす! ひぃ~~~~~~~~!
三つあるうちの一番奥の個室に逃げ込む! 隣でもこっちまでキックの振動がくる……!
「最近なーんか距離近かったのそういうことか! 出てこいオラっ! ぶっ殺すぞオラぁ!」
「わ、わぁった、出るからガンガン蹴るな!」
「ぼ、ぼうりょくはんたぁい! 出るけど殺さないでぇ!」
前田・赤崎が観念して外に出て、黒川は便器から派手に飛び降りたのか着地の音と揺れが。
って、しまった……これじゃ出られない! なんでトイレの外に逃げなかったんだ……!
戦々恐々と嘆いていると――お次はバァン! たぶん個室の壁をグーの横で叩いたっぽい。
「テメーらいつからだ・どっちからだ?」
「…………。夏休み明けからで……オレからだよ」
「ど、どうしてわかったのぉ……?」
「テメーらおせーから見に来てやった。テメー呼んでもいなくてあのババアの返事しかない。オンナの勘でイヤな予感してこっち来てみたら、案の定イチャついてやがんだろうがっ……!」
ダァン! うめき声がしたから察するに赤崎を個室の壁に叩きつけた。
「テメーこのクソアマナぁ……! どうしてわかったじゃねーだろうがゴラ! ああんっ!?」
「お、おいやめろ、首しめんな! オレからっつったぞ、茉那は悪く――」
「黙れ・くたばれ、ゴミカスゲスオトコ!」
パァン! 音だけでも絶対普通に平手打ち! シネオラってボコスカ大暴れしだした……! おそらく前田は戦ってる・赤崎はうろたえてる。黒川の激しい怒号が・殴打が響きわたる……! 怖い怖い怖い怖い・出たい出たい出たい……! 日本の台風どころかアメリカのハリケーン!
個室ぜんぶ吹き飛びそうな黒き大嵐もやがて過ぎ去った。トドメはにぶくゴッ!
「やめろって……言ってんだろ……。ったくよ……」
ハリケーン黒川、『ゴミカスゲスオトコ』成敗できず。正直これは胸くそ・前田クソ……。
「ぼ、ぼうりょくてきでソクバクするからシュウ離れたんだよぉ!」
赤崎も開き直って浮気されるほうが悪いって言ってる始末。…………。
「ほざ――くな……! テメーら悪いと思ってねーだろうが~~~~!」
返り討ちにあっても立って殴りかかったのが目に浮かぶ。ただまたにぶく腹でも蹴られた。
「萌々奈おまえ、メンドくせーしマ×コくせーんだよ! 逆によかったわ、今日で終わりな!」
茉那もボコれなどとついに逆ギレの攻勢。ざ、ざまあみろ。巡条さんと僕をいじめたバチだ。
「お、おばさんのこと意識しすぎだからぁ! ミナと裏で笑ってたからぁ!」
便器に乗ってそっと覗いてみたら、赤崎も蹴ってる・罵ってる。は、はは、いい気味――
なわけない。
「もっ……も、もうやめろよ」
ビビりにビビりながらも止めに出た。大嫌いな黒川といえど見てられない・見過ごせない。
「あ? セッタまだいたのか」
両拳を合わせて骨をポキポキにじり寄ってくる。言うまでもなく普段以上に気が立ってる。
憂さ晴らしにボコられて僕も床に転がされる――そのときだった。
「ま、前田く~ん・雪佐く~ん……? ――赤崎さん・黒川さん、こっちは入っちゃダメよ~」
出ましょ出ましょ~っておっとり急かす。前田・赤崎は巡条さんに免じて(?)出て行った。
「だ、大丈夫か?」「だいじょうぶ~……?」
「……うっさい! ほっとけ・どっか行け!」
翌日から黒川は赤青前後とつるまなくなった。




