第10話「もし――かして……雨漏りしおりん……?」(前話と地続きです)
「おいセッタ。調子乗ってっともっぺんボコるぞ。セッタらしく足ん裏で踏みつけっからな」
こいつだけじゃなく全員の視線が痛い・怖い。さっきファミレスで怒鳴ったの根に持ってる。
僕を脅すと前田は投げた。ボールは茶色で確か11ポンド。カコォン! ……いきなりかよ。
「っしゃあっ!」
黒川と両手でハイタッチ、からのパイタッチ。…………。
「チッ、だったら俺もファーストライク決める系! カレンちゃん待ってらんねぇ、脱げ!」
そこへ罰ゲームかなにかでパシられたみたいに、巡条さんが片手に二足ずつ持って戻った。
「まってまって~! これ~!」
前後は普通に・赤青は半端に礼を言う。黒は「どうせならシューズよりジュースおごってー」
「ジュース~? そうね~、のどが渇いたわね~。いいわ~、みんなの分も――」
「巡条さん!」
さすがに止めた。早く次投げてと促す・まぎらわす。
ボール持って後藤の横に並び立つと、チャラチャラ話しかけられる。
「カレンちゃんカレンちゃん、その黄色8? モモナと同じ系」
「まぁ~、そうなの~。後藤くんのその赤色は10ポンドだったかしら~」
「テンテン。つーかカレンちゃん、いきなりスペア取ってる系。ボウリングよく来る系?」
「いいえ~、4、5年ぶり~。とっても楽しいわ~」
「4、5年って俺でいったら小学生以来系! カレンちゃんてどこ小系・どこ中系?」
とっとと投げろよ!
「とっとと投げろよ!」
僕は思った・前田は言った。巡条さんもそんな爬虫類野郎のナンパに親身にならないで……。
隣がすごく目障り・耳障りなものの、なるべく気にせず・関せず、こっちも楽しく投げてく。レーンの構造上仕方ないんだろうけど、ボウリングのお隣さんは近いを超えてくっついてる。とくにボールが返ってきてたまるとこは一緒。そして僕は青山とボールが一緒(オレンジ9)。あの青口紅、二投目に人の使いやがる! 黒川も巡条さんと『同じ系』だから使いやがる!
なお、赤崎は黄緑7。
「ねー、おとといのアレってなんてったっけー」
「おとといのアレぇ? なんのことぉ?」
「ほら、カラオケで歌ったぜんぜん知らないアイドルソングー」
「あ、モモナとデュエった系の? アレがどうした系?」
「なーんか耳に残ってさー、ちゃんと聞いてみたいっていうかさー。曲名なんてったっけー?」
「嫌々歌ってたくせに気に入ったのかよ! オレが茉那と歌ったヤツなら覚えてっけどなー」
「マナもおぼえてるよぉ。『アイスがガチなんて知らなかった』だよねぇ」
なんの話か見当つかないけどぺちゃくちゃ聞こえてくる。トイレ行った青山以外の4人で。
僕らは半分、5回まで投げてつかの間の小休止。スコアは今のところ――負けてる……。
「ちげーよ、『愛すことがカちだなんて知らなかった』だろ。なげーのに謎のインパクトあるわ」
「へっ……!?」
巡条さんがまぬけな・大きな声で反応した。僕も奴らもどうしたのかと目を向ける。
「しゃ、しゃっくりよ~。――そうよ、かちって言ったわ……過ちじゃないわ」
二言目はぼそぼそ聞こえない。ただ――動揺してる……?
「アタシが言ってんのはなんとかまりりんのほうだってー。ねーケイ、思い出せなーい?」
「……水たまりまりりん? なんせ水系・こういう系」
「もし――かして……雨漏りしおりん……?」
今度は深刻に・真っ青になって反応した。しかも正解。
「それそれー! えー、なんでおばさん知ってんのー?」
「あ……えっと~……その~……」
青ざめたと思ったら赤面してしゅんとする。黒川はたぶんそのワードでスマホで検索。
「あったあったー、PVかなー。サムネだけでダサそー・安そー」
「っ……!?」
紅潮した顔をぱっと上げ、腕も首もぶんぶん振ってる・慌ててる。ど、どうしたの?
『今日もぽたぽた しおりん雨漏り~ん おうちなのに 水たまりが できちゃうの~』
女性ソロアイドルの未熟な歌声が流れだす。黒川はじめ4人は笑いだす。巡条さんは――
「う、うう~~……!」
うなって逃げだす! え、なんで!?
ビリヤード台とかあるフロアの果てまで走ってった。
「はぁ……はぁ……大――丈夫……?」
「私……もう……学校に行けないわ……」




