第6話「ごはんがあは~ん……!」(前話と地続きです)
気まずくなって慌ててつまらないこと聞く。
「き、昨日の晩ごはんってなに食べた?」
「昨日の晩ごはん~? えっと~、ドライカレーと冷ややっこ~。ちゃちゃっと作ったの~」
「へー。す、すごいね」
「すごくないわ~、楽ちんだわ~」
嬉しそうにニコニコする。そうだ、料理するんだった。その手の話がなによりかもしれない。
「と、得意料理ってある?」
「ん~、そうね~……玉子料理かしら~。なかでもオムライスが大好きで~、よく作るわ~」
「オムライスいいね、おいしいよね。…………」
食べてみたいとか厚かまキモくて言えなかった。代わりにちょっとウケそうなの思いつく。
「ぼ、僕もある玉子料理はよく作るよ」
「まぁ~、そうなの~。そのお料理って~?」
「た……卵かけごはん」
ぽかーんとされたと思ったら――
「ふふっ、卵かけごはんって~……ふふっ、ふふふっ、ごめんなさ~い、ふふっ、ふふふっ」
……どかーんとウケた。卵としょうゆをかけて混ぜるだけの簡単なお料理です。お料理です。
たぶん十数秒も笑ってやっと収まった。目尻の涙を小指でお上品に拭い、ぽつりと漏らす。
「いい大人なのに恥ずかしいけれど~……きっとこれが青春、なのよね~」
「……え? 巡条さんってその……なかったの? 青春」
信じがたいけど不良――だったなら。青春なんて酸いも甘いも噛みわけてそうだけど……。
「あるにはあったわ~。でも放課後に男の子とお店に行くような甘酸っぱいのはなくて~……」
伏し目がちにチラチラ上目遣いで見てくる。知ってか知らずか永久不滅の殺し文句が出た。
「こ、こんなの初めてなの~……」
そ、そんなの言われたら……遠赤外線のストーブくらい顔が赤く・熱くなった。…………。
またお互いだんまりになったところで。僕のチキンが先に来た。赤みがかってて辛そうだ。
早速食べてと勧められたけど巡条さんのドリアを待つ。ほどなく来て一緒にいただきます。
「うふふ、マグマみた~い。ふ~……ふ~……」
ソースがぐつぐつ煮えたぎってる表面にスプーンを入れ、口元で息吹きかけて冷ましてる。少しすぼまった口がかわいくて見とれてしまう。これは絵になる・噂になる、週1の聖女って。
「あむっ。あふっ、あふふっ」
さすがにできたて、ちょっとやそっとじゃまあ冷めない。目を細めて・潤ませて熱がってる。そんな様子を正面にそこそこ熱いチキンを僕も頬ばる。うん、おいしい。ピリッと辛くていい。
「んっ……! ん〰〰!」
咀嚼できたのかおっとり顔をうっとりほころばせ、片手を頬に味を・幸せを噛みしめてる。
「甘~いチーズとホワイトソースが~、濃~いミートソースと溶け合ってごはんがあは~ん!」
ごはんがあは~んって(笑・淫)
「あ~、おいしいわ~・なつかしいわ~。思えば結構ご無沙汰だったわ~」
「昔はよく来てたの?」
「ええ、女の子のお友だちと~。高校から近いこちらじゃなくって~、別のところだけれど~」
ふた口目をふ~ふ~・あふあふ、ん〰〰・あは~ん。やっぱり普通に可笑しい・いやらしい。
「チキンはどう~? おいし~?」
「うん、ピリ辛でおいしい。一個食べる?」
「一個も悪いわ~・もらえないわ~。ひと口だけちょうだ~い」
「え? ……え?」
かじるってことですよね? ……かじるってことですよね?
「ああ、汚いわよね~……ごめんなさ~い」
「あ、いや、そうじゃなくて!」
むしろ嬉しくて! なんて言うとまあまあ気持ち悪いけど!
照れくさくて・めんどくさくてぽんと一個あげる。申し訳なさそうに受け入れた・口入れた。おいし~・なつかし~ってうんうんうなずく。お返しにドリア食べて~って差し出してくる。アーンしてほしかったなんて言わない、新しくスプーンおろして五回もすくわせてもらった。
ごはんがあは~ん……!
それからは各々食べてごちそうさまでした。ドリンクバーのジュース飲みながらくつろぐ。
「で、このあとはここで勉強するんだよね?」
放課後の教室でふたりきりもいいけど、ファミレスに居座るなんてイケてる奴らみたいだ。
「ん~、教えてもらっている身の私が言うのは違うんだけれど~……今日は一日息抜きよ~」
次は遊びに行きましょ~、たとえばボウリング~? 巡条さんとボウリング――イエス!
「あ! おばさんと転校生いるぅ!」




