表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24JK  作者: 百雲美呪丸◎
二章
19/214

第11話「こ、こて~ん」

「ふう……とりあえずここにいよう」


 校舎の裏側に申し訳程度の緑(木々と茂み)があって、逃げ隠れるならそこがいいかなと。巡条さんの手を引いて廊下を・階段を駆け、上履きから履き替えてほんの数十秒で辿り着いた。茂みは緑でも木の葉は黄色。そんな季節か、来週で10月か。まだまだ暑いけど衣替え可になる。


「はぁ……はぁ……息……あがってないのね……。私は……死にそう……はぁ……」

「だ、大丈夫? ごめん、速かった? というかほっぺたは……?」

「大したこと……ないわ……速くないわ……。おばさんで……ごめん……なさい……」


 ぜんぜんいいですよ・おばさんじゃないですよ。にしてもつらそう・かわいそう……。


「せ、背中でも――さすろう、か?」

「あら……いいの……? それ……じゃあ……おねがい……はぁ……」


 ……いつにもまして色っぽい・大人っぽい。『おねがい……はぁ……』だけ切り取ったら……! 切り取んなって? 巡条さんの背に、夏服のセーラーに片手を当てる。むわっと汗ばんでた。

 ドキドキ・ワクワクさすりだす僕に恥ずかしそうに言う。


「あとで……しっかり……手を洗ってね……」


 とんでもないけど仕方ない。有名人に握手されたみたいに一生洗いませんとは言いません。

 茂みの奥に・立ち木の陰に男女がふたり――そういう打算はなかったけど普通にチャンス。こうやって背中さするのだって〝押した〟ほうだけど……も、もっともっと押せ押せで――


「…………」


 いや、巡条さんは僕に気がないんだった……。なのに押したら〝惹〟じゃなくて引かれるか。


「はぁ~、楽になったわ~。ありがと~」


 両手をぱたぱたなけなしのうちわをあおぎながら満面の笑顔。顔ににじむ汗がいとをかし。それからまとめ髪が背面にいってるのに気づいた。走ってきたから左肩前面から流れたんだ。シュシュで毛先留めてるからポニテというよりほぼストレート、髪をほどいた状態に等しい。

 美しい!


「…………」「…………」


 髪の観察ができるくらい会話がなかった。裏手に見上げる校舎の喧噪が静寂をまぎらわす。気まずくはないけどなにを話したものか取っかかりがない。さっきの振り返ってもなぁ……。昼休みの勉強は今日はしょうがない。5時間目がはじまるまで黒川のほとぼり冷まさないと。これから間違いなくいじめが加速・過熱する。僕は言うまでもなく巡条さんも狙うに違いない。どころか本命・本懐だと思う。奴が真に憎いのは1学期から巡条さんなんだ。なら――守ろう。戦おう。赤崎・青山も敵だ、さっきは大将が怒り狂ったからだ。守ろうとしたのは奴の体面、別に僕らじゃない。前田・後藤も潜在的に敵だ。3ギャルと親しいし片っぽは彼氏なんだから。

 おそろしい……。


「あ、あの~……さっきのことだけれど~……」


 うつむき加減におずおず・むずむず沈黙を破った。長いスカートで隠れて見えやしないけど、たぶん折り曲げた両脚を横にそろえてお姉さん座りしてる。膝枕、それに耳かきしてほしい。


「ああ……うん。あいつむちゃくちゃだったよね……。殴るわ蹴るわ怒鳴るわ暴れるわ……」


 小学生でもあんなすぐカっとならない・ゴっとぶたない。どれだけ野蛮か・凶暴か。

 あと気のせいかな、コラ、ゴラ、ゴルァって進化(?)してたような……。


「ほんとにほっぺた大丈夫? なんともない?」


 見た感じ腫れたり出血したりはしてないけど、口のなか切ったり歯が飛んでたりしたら……。


「ちょっと痛むけれど平気よ~。雪佐くんこそ何度も蹴られて~……なんともな~い……?」

「平気平気、怪我はないよ。でさ――これもう事件だと思うんだけど……先生に言いに行く?」


 正直言うと僕はチクりたくない。ほとんどみんな見てたし勝訴確実だけど……あとが怖い。叱られた程度で反省・更生するわけないから。よくもチクったなって復讐の燃料をまくだけだ。


「ん~、そうね~……職員室に行こうとして塞がれたものね~……言わないでおきましょ~」


 口の前に人差し指を立ててはいかわいい。そしてやっぱり桃色唇の端のほくろに目がいく。


「それでその~……さっきのことっていうのはそうじゃなくって~……」


 青山に聞かれて答えた気になる人は僕じゃない――照れ隠しについてしまった嘘だという。

 ちょこっと顔を赤らめて視線は地面に弱々しく明かした。


「……ん? え、それって……」


 僕のことが気になってると!? 勘違いじゃなかった……! でもそれなんで本人に……? これもう遠回しにコクられてません……? いや、好きとは言ってない、『気になる』としか。


「雪佐くんは~……私のこと~……どう思っているのかしら~……」


 いつも視線を感じるけれどどういうことかしら~……!? 普通にバレてた・キレてたぁ!


「お、怒ってなんかいないわ~……。けれど~……よ、よく見ているでしょ~……?」

「それは……えっと……はい……。僕も……巡条さんのこと……気になって……ます……」


 気になるどころかとっくに好きですよ! 今言えた、絶対言えたなぁ!


「ま、まぁ~……そう――なのね~……」


 話は終わり、ふたりして赤面して地面を見たままに。木陰で涼しい・両想い(?)で嬉しい。これもう僕たち付き合えません……? 今すぐにとは言えなくてもおいおいは・ゆくゆくは。時期がきたら――コクろう。ただでさえ初めてで8歳も上のお姉さんだけど――がんばって。


「こ、こて~ん」


 わざとらしく・かわいらしく急に肩に寄りかかってきた! ななななななななんですか!?

 聞いても返事もどく気もなく、いい匂い・いい気分。この香水に・シャンプーになりたい。



 ボディソープにはもっとなりたい。……じゃなくって。彼氏にこそなりたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ