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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
二章
18/214

第10話「セーイが見えなーい」(前話と地続きです)

 机のなかから僕の現社の教科書を取り出してひらひら示す。無視はやめだ、対決のときだ。


「……返せよ」

「謝れよ」


 ハエでも叩くように・雷でも光るように即答だった。聞くまでもなく昨日の侮辱しかない。


「……謝ったら返すのか・許すのか?」

「セーイが見えたら」


 なにが誠意だ、どうせ漢字で書けもしないくせに。その言いかたは返しも許しもしないだろ。


「…………」


 どうしよう・怖いよう……。赤青はニヤニヤ傍観し、巡条さんはおろおろ・きょろきょろ。


「あ、あの~、私の物――」

「おばさんは黙ってろ」


 一瞥もにべもない。さっきから射すくめるように・石にでもするように僕だけをにらんでる。

 メデューサ黒川はすでに教室を石化してた。気づけば周りの連中も沈黙してる・緊張してる。

 黙ってろって言われたのを真に受けたのか、巡条さんは無言で現社の教科書を差し出した。


「あん?」

「私の物と交換しましょ~」

「いや、巡条さん……!」


 身を乗り出してつかもうとしたけどもう遅い、黒川がすばやく・底意地悪く引ったくった。


「バーカ、交換なんかするかっての」


 憎たらしく・嫌みったらしくせせら笑う。赤崎・青山も同調して嘲笑する。

 巡条さんは教科書を置いてかない、だから盗られてない。けど今のは要はカモがネギを……。


「おまえなぁ……!」

「オマエなんかがアタシにオマエって言うな。おばさんの分もアンタが謝ったら返すけどー?」

「っ……!」


 わかったもういい、無駄な時間だ・屈辱だ。謝ればいいんだろ謝れば。


「き、昨日は……悪かった。……ごめん」

「セーイが見えなーい」

「…………。昨日は急に罵倒して……心から悪かったと……思います。すいま――せんでした」

「セーイが見えなーい」

「チッ! 昨日は――」

「舌打ちすんな、つーかもっと頭下げろ。机ん上乗って土ー下ー座」


 モモナきっつ・こっわと赤青がはしゃぐ。そろそろ怒りで泣きそう・どうかしそう……。

 さすがに土下座は嫌で躊躇したら煽って・罵ってくる。見かねた巡条さんが立った・言った。


「雪佐くん、職員室に行きましょう」

「え?」「あん?」


 いつもと違って間延びしない温かくない声色――それでいて顔色は変わらない・窺えない。昨日の放課後もなったけどあれはたぶん悲しさから。なんとなく怒・哀でこうなる気がする。

 つまり今の巡条さんは怒ってる……?


「担任にチクるって? ナメんな・逃げんな、土下座しろ」


 ムカっと・ガタっと腰を上げ、すぐ後ろの出口に仁王立ち。

 巡条さんは僕の右側にまわりこみ、仁王黒川に向かって毅然と・敢然と言い放つ。


「雪佐くんは誠心誠意謝ったわ。あなたの言いがかりには取り合わない」


 すると奴は弾かれたように一瞬で・両手でつかみかかった。


「言いがかりだとテメコラ! セーイあるかないかはアタシの判断だろ! ああん!?」

「はたから見ていてもわかるわよ。雪佐くんがちゃんと謝ったのもあなたが図に乗ったのも」

「んだとババア……!」


 左手はそのままに右手を拳固に・後方に――流星のごとく・鉄槌のごとく頬をぶん殴った。


「巡条さんっ……!」


 ぶたれて倒れた傍らに寄り添うとともに、黒川を見上げて心底憎む・にらむ。


「んだよその目は! テメーもぶん殴るぞゴラ!」

「やってみろよゴミが・クズが! 頭も性格も育ちも悪すぎんだろ! 生まれてくんな!」


 今のは言葉にしたらこれほどまでの暴力だ。巡条さんが殴られた瞬間より教室は騒然・慄然。

 黒川の瞳に涙が・炎がきらめいた。いやがうえにもブチギレる。


「ああああああああああああああああ~~~~~~~~!」


 甲高く泣き叫んで躍りかかってきた。パンチラも厭わず足蹴にしてくる。見たい・痛い……。


「モモナ待てって・やめろって! こんなみんな見てるとこで殴る・蹴るはやばいっしょ!」

「ほ、ほら、これぇ! 返すからふたりともどっか行ってぇ! 早くぅ!」


 青山が暴走を止める・赤崎が逃走を勧める。現社の教科書を2冊ともぱっと受け取った。


「巡条さん行こう! 立てる・大丈夫!?」

「え、ええ……雪佐くんは――」

「大丈夫! いいから行こう!」


 状況が状況だから強引に手を引っぱる。なにせ目の前の黒川は鬼の形相・ムカデののたうち。


「っ、放せミナゴルァ! ――テメーらゼッテェ許さね~~! クソが~~~~~~~~!」


 恐竜の咆哮も周囲の視線も一身に、教室の前の扉から廊下へ出て、さらに屋外へ出た。


        ◎


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