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24JK  作者: 百雲美呪丸◎
二章
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第8話「帰ってガキに乳やってろ・ヒマナンデス観てろ」

 続く2・3・4時間目。悪意の張り紙はもうないのに巡条さんがまだチラチラ見てくる。髪でも跳ねてんのかなって確かめてみたけど跳ねてない。心臓が跳ねてる。……やかましいわ?

 やっぱり僕のことが気になってるような……。内緒って言ったのも脈がなくはないからとか。あれは実は前田に答えたようでいて、離れて聞いてる僕が念頭にあって僕に言ったんじゃ? 付き合ってるか聞かれていいえ~・まさか~と返さなかったのは、付き合う〝かもしれない〟? 運転はダメって聞くけど恋愛はいいでしょう・そうでしょう!? 付き合えるかもしれない!

 ……深読みしすぎか。

 昼休みになった、小便したくなった。


「巡条さんごめん、ちょっとトイレ。先に食べてて」

「ふふっ、待っているわ~。ゆっくりね~」


 待たれたら急ぐんだけどなと思いつつ、まあゆっくり行ってきます・じっくりしてきます。

 廊下際最後尾の黒川を避けて教室の前から出てもいいけど、意識してると思われたくない。2・3時間目終わりの休み時間は普段どおり巡条さんの勉強見てた。つまりずっと無視してる。反応しないのが反抗だ。転校が少なくない僕はいじめも少なくない。女子からは初めてだけど。

 通ろうとしたら腕つかまれた・足止められた。


「ねー、教科書返してほしくないのー?」

「…………」


 無視だ・悲鳴だ。内心なんとか言ってってじれったいんだ。返事も見向きもしてやらない。

 振り払って出て行こうとしたらまたつかまれた。さっきより力が強くなる・口が悪くなる。


「返事しろよ。あん?」

「ぐっ……」


 長い・鋭い爪が食い込んで痛い痛い! なんでおまえらそんなゴテゴテとがらすんだ……! 巡条さんもネイルやってると思うけど! 化粧と一緒でほんのり・はんなり塗ってるだけ!


「やめて!」


 噂というか引き合いに出せばなんとやら、切羽詰まった様子でびしっと止めにきてくれた。

 黒川はぞんざいに放す・話す。


「おばさんうっざ。帰ってガキに乳やってろ・ヒマナンデス観てろ」


 どうも彼氏・男友達がいないと本性をあらわにする。前田・後藤は今日も学食にでも行った。

 朝に『……はぁ?』ってキレたのは例外的と思う。あれで巡条さんを嫌ってるのもわかった。


「お、お乳は出ないわ~・子どもはいないわ~! ヒマナンデスを観には帰れませ~ん」


 律儀で難儀……。死ねってクソリプに死にませんってマジレスしなくても……。

 赤崎・青山が机をくっつけにきた。割と席近いけど黒川はまったく動かさない。


「モモナこわぁい。――おばさんと転校生もマナたちと食べるぅ?」

「ぷっ! いいじゃん、おもしろいから賛成。――よかったな転校生、ハーレムっしょ?」


 悪夢の・悪女のハーレムだな……ひとりだけ聖女とはいえ。誰がおまえらなんかと食べるか。


「アンタら勝手に決めないでくれる? べつにいいけどさー。――ほら、来たかったら来いよ」

「あら~、いいの~? そういうことなら雪佐くん、混ぜてもらいましょ~」

「……はい?」


 本気・正気……? おばさんおばさん呼んでるんだよ・馬鹿にしてるんだよ……?

 机を動かしに戻った巡条さんに慌てて駆け寄り、小声で・後生で言う。


「ほ、ほんとに一緒に食べるの? はっきり言って嫌だよ・罠だよ……」

「ふふっ、罠だなんて~。返してもらえるチャンスよ~」


 私は行くわ~・嫌じゃないわ~とテコでも動かない。……僕も行くよ、ひとりにできないよ。


「ごめんなさ~い、ありがと~。机は私が動かしておいてあげるわ~、おトイレゆっくりね~」

「いや……あとでいいよ」


 それどころじゃないから我慢するよ……。

 黒川の前が赤崎・左が青山。青山の前が巡条さんでふたりの側面に僕がフタでもするように。

 早い話というか図が次のとおり。


    赤崎 黒川

    巡条 青山

      雪佐  


 普段は赤・黒の側面に青が僕みたく正面から。ちなみにたまに黄(島)・緑(原)なんてのも。


「…………」


 なにこの状況・この視点。裁判所って・裁判長ってこんな感じなのかな……重圧がすごい。クラスの連中もなに事かと見てる気がする。3ギャル2ぼっちが合流してるぞ・不穏だぞって。

 昨日はけおされてブスだ別人だ吐き捨てたけど、こうして近くで眺めてみると――ま、まあ。手前の青山はクールビューティーで、青い口紅はどうかと思うけど落ち着いた茶短髪で涼しげ。左奥の赤崎は対照的にヒールキューティー、明るい茶短髪も白い・幼い顔もふわっとゆるい。そして黒川は褐色で体つきも顔つきもセクシー、汚い茶金髪セミロングで目尻が・眉尻が鋭い。

 けど巡条さんは美しく・かわいらしくオールマイティー、圧倒的に美人だ・薄化粧だ。


「ぷっ! おばさん、おかずそれだけ?」

「ええ、毎日一品だけ~。自分で作っているんだけれど~、朝弱くって色々作れなくって~」

「さすがおばさん、自分で作ってるんだぁ。マナちょっと食べてみたぁい」

「は~い、どうぞ~」


 弁当箱の2階を隣の赤崎に優しげに差し出す。今日の2色弁当、そのおかずは肉じゃが。

 続いて青山にもあげた・黒川には断られた。最後にいつものように笑顔が・弁当箱が僕に。


「雪佐くんもほら~」

「う、うん……あり、がとう」


 3ギャルの前で普通に恥ずかしい……。お返しに好きなの取ってもらう。玉子焼きを選んだ。


「んっ、おいひぃ! おばさんやるぅ・やばぁい。じゃがいも味しみてるぅ」

「肉は当然、玉ねぎ・ニンジンもいけるな。おばさん、もう奥さんっしょ?」

「うふふ、未婚よ~・なりたいわよ~」


 なりたいって赤青きゃっきゃ笑う。……おまえらもなんかお返ししろよ。それよりも。

 普通に『おばさん』を受け入れてる……。ぜんぜん気にしてないの・傷ついてないの……? それか僕と同じで反応しないっていう反抗? なら昨日こいつらに怒ったのなんていい迷惑? でもあれは黙ってられなかった。挙句、名前もコケにして。僕は気も昨日のもまだ許してない。

 黒川も同様だった・不機嫌だった。話の流れも場の空気もお構いなしに唐突に問いただす。


「アンタ、アタシの知らないとこでシュウに口説かれてたりする?」

「前田くんに~? ないわよ~。黒川さんひと筋じゃな~い」


 赤崎だけがやけに笑う。そうでもないのになぁと知ったふう。


「じゃあもしまたコクられてもちゃんと断んの?」


 ……よっぽど不安なんだな。乳も愛も重たい女だ。


「黒川さんから盗ったりしないわ~。それに私、気になっている人がいるの~」

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