第7話「なあカレンちゃん、やっぱオレと付き合うか?」
「あの~、黒川さ~ん。雪佐くんの現代社会の教科書、知らないかしら~?」
「知らなーい。セッサくんじたーい」
たむろする赤崎・青山ともどもけらけらあざ笑う。聞くだけ無駄だよ・胸くそ悪いよ……。
ないものは仕方ないから机をくっつけて巡条さんに見せてもらった。ありがとう3ギャル。これに懲りたら机のなかに置きっぱやめよう。今日中に返さないならおまえらのを盗ってやる。そういうことでひとまず無視に決めたけど、休み時間になると巡条さんは立ち向かっていった。
加勢したものか退却させたものか――僕は戸惑ってる・見守ってる。
「赤崎さんは~?」
「知らなぁい」
「青山さんは~?」
「さあ。忘れて家っしょ」
三人ともスマホいじってて見もしない。普通に腹立たしい・失礼甚だしい。
「えー、なに、アタシらが盗ったってー?」
「証拠はぁ? その前に盗られるような心当たりはぁ?」
「てか転校生が来いよ。おばさん、マジで保護者っしょ」
へらへら・けらけらまた笑う。おばさんは無論、僕が行かせたみたいで聞き捨てならない。
心当たりなんて昨日しかない・侮辱しかない。ブスだなんだ怒鳴ってきた仕返しなんだろう。でもそれを謝ったところで返すとも許すとも思えない。そもそも先に巡条さんに謝れって話。
頭に血がのぼって行きかけたら、前田と後藤が輪に・話に入ってきた。僕はビビる・留まる。
「ジュンジョーさんどした?」
「ウェーイ、俺らと遊ぶ系?」
後藤の野郎がハイタッチ……! けど巡条さんは苦笑して手を合わせず、首を横に振った。
「あのね~、雪佐くんの現代社会の教科書がなくって~……知らな~い?」
そいつらにも聞くんですか……? 絡まれたら嫌なんですけど・怖いんですけど……。
「セッタの教科書?」
「知らん系」
誰が雪駄だ・履き物だ……。目の前で雪佐くんって、佐って言っただろ……。
前田が僕のほうをぱっと見て、巡条さんに聞く。
「なあ、アイツと付き合ってんのか?」
「ん~? ふふっ、ナ、イ、ショ~」
なんで内緒……? これもう僕たち付き合ってません? はいはい、付き合ってません。
「どっちだよ。なあカレンちゃん、やっぱオレと付き合うか?」
……は?
「……はぁ?」
僕は思った・黒川は言った。……癪だけど同感だ。
奴はスマホを置いて立ってひっくい声で詰め寄る。
「カノジョの目の前でありえないんだけど。アンタまだこんなおばさんに未練あんの?」
「おまっ、おばさんってひでーな。お姉さんだろーが」
そうだそうだ!
「離れろうぜーな、冗談だよ。――ジュンジョーさんも悪ぃな、今のなしな」
黒川のデカ乳を揉み揉み・こねこね! 僕は嫉妬を・巡条さんは羞恥を・奴は快楽を覚えた!
「あんっ、やっ、あっ――はぁ~~ん!」
「み、みんな答えてくれてありがと~。も、もしなにかわかったら私や雪佐くんに教えてね~」
逃げるようにぴゅーっと戻ってきた。顔も耳も赤い。
「さ、最近の子って~……お……お盛んね~……。あんなに揉むのね~・感じるのね~……」
「……最近のってことはないと思います」
前田が特別変態なんですよ……。黒川も格別淫乱なんですよ……。はぁ~~んって……。
無意識に敬語になったのを詫びて・改めて、なにはともあれ感謝する。
「あ、ありがとう。あいつらに聞きに行ってくれて」
でもそのせいで保護者って笑われて。頭にきたから行こうとしたけど……行けなくてごめん。3ギャルは怖いけど憎さをバネに挑める。けど敵対してない2チャラはバネなくて……無理で。
「いいのよ~、私は気にしていないわ~。挑むことなんてないわ~」
晴れやかに・しとやかにほほ笑んだ。サンカレンさま、なんとお優しい・お美しい……!
「それはそうとさっきの、なんで内緒なの?」
「ん~? ん~……」
顎に人差し指を当てて目線は上に考えてる。……考えるようなこと?
顎から離すと顔の横に立ててにっこり言った。
「それもナイショ~」
……かわいいからもういいや。
話を戻す・巡条さんを諭す。
「僕もまあ気にしてないから。現社は終わったし教科書なくても別にいいよ」
けれど~……と眉も垂れ目も八の字に。困った顔も普通にかわいい。むしろ笑った顔よりも。
「決めつけるようで悪いとは思うわ~、それでもきっと黒川さんたちよ~」
ほかに因縁ないからね・忘れて家じゃないからね。
「どうしたら返してくれるかしら~……」
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