第6話「お、お尻を突き出して~……う、後ろから~……」(前話と地続きです)
「っ……!? し~っ!」
大きな声でお~げ~ひ~ん~! ズボはまだわかるとしても~、ビュ、ビュルって~……。
「保健体育でやってんじゃないの!? 男はみんな白いの出んの! それをうちら女の――」
「し、知ってるわよ~! 説明しないで~!」
半分残っていたおビールを照れ隠しに一気飲み~。ごめんなさ~い、これで2杯目~……。
舞歌は5杯目をあおって落ち着いて~、赤ら顔だけれど呂律はしっかりしゃべるわ~。
「男と付き合いたい・繋がりたいってまーだ思わないの?」
「…………。お、思うわ~」
それもきっと人並以上に~……。今まで縁も興味もなかった分――う、飢えていて~……。
「腹減ってんならガツガツ食えばいいでしょ。高校とかバイキングよバイキング」
今思えばねって〆のお茶漬けをずず~。JKに戻れるなら学校中の男と付き合うだなんて~。
「割と本気だから。会社でそんなマネしたら最悪クビだけど、学校は許される!」
そこでまたおビールを飲んだわ~。よく交互にいけるわね~……。
「夏休み前だっけ、コクられたんでしょ? 付き合えばよかったのに」
「ダメよ~、24の私が未成年の男の子とそんなこと~……取り返しがつかないわ~」
「取り返しってなに? それはあんたが男だったらよ。相手の女の子がデキちゃったらそうよ。私が妊娠しちゃったら~って話なら、8つも上なんだからナマはやめてって強く言えるでしょ」
要するに花恋は気をつける・彼氏はゴムつける! あっはっはーじゃないんだけれど~!
「そ、そんなに……ッチな話ばっかりしないで~。私はもっと健全なお付き合いがしたいの~」
「嘘つけ、飢えてんでしょ? ハジメテはどんなふうにシたいの?」
「ど、どんなふうにって~……」
お、お尻を突き出して~……う、後ろから~……。
「あっはっはっは、バックって! うっわー、飢えてんなー、あっはっはっはっは!」
「笑わないでよ~! 飢えてるからじゃなくって向かい合うのは恥ずかしいから~!」
も~ぅ、舞歌ったら~! 最後のほうは毎回お下品で赤裸々なんだから~!
厨房の男の子・こちらのお客さん――その辺はどうなのって小声で・至近で聞いてきたわ~。お酒くさ~いのは置いておいて~、実をいうと『その辺』も何人か・何度か告白されたの~。大学生くんやサラリーマンさんは交際しても問題ないけれど~、ん~、お断りしちゃった~。
「なんで? 結局あんた自分が綺麗だからってお高くとまってんでしょ。少しは理想下げな。アラフォーになっても結婚相談所に年収1000万以上~とかぬかすお花畑ババアなるわ」
「具体的にひど~い……。理想なんてないわ~、なんていうか~……想像できなかったの~」
「バックで突かれるとこ?」
「ち~~が~~う~~!」
お付き合いの全体的なイ~メ~ェ~ジ~! どうしてそんな部分的なのよ~! ッチ~!
「これだけは言っとく、運命とかないから。恋に落ちるっていうけどね、落ちない落ちない。んーな落とし穴みたいなんじゃなくてタクシーよ。自分から乗んの。金じゃなくて勇気出して。乗せるほうもね、花恋。誰でもいいっていったらあれだけど、勇気ひとつで誰でもいけるから」
「舞歌~……!」
酔ってすごい深いことをって感心したのに~――「あ、バックで乗んのは? 背面騎乗位」
「もうそういう話しないで~!」
それからおビールもお茶漬けもおなかに入ったわ~。私はとっくにごちそうさまでした~。
「だからその勉強教えてくれるセッサくん? 付き合っちゃえって。絶対気ぃも下心もあるわ」
「いいえ~、きっとなんとも思っていないわ~。私のほうから教えてっておねがいしたもの~」
「あんたから頼まれたら余計惚れるって。花恋はその子のこと、どう思ってんの?」
「ん~、親切で~、おとなしい男の子~。なのに今日は私のために本気で怒ってくれたわ~」
とっても嬉しくて~・かっこよくて~。歳も昔も関係ないってぜんぜん引いていなくって~。これから放課後もお勉強を見てくれるの~。いい子よね~、私どうお返しすればいいかしら~。
「……そんだけ優しくてなんとも思ってないわけないでしょ」
◎
黒赤青に憤り巡条さんが24とわかった翌朝、ホームルーム。担任の話うわの空でふと思った。
先生が生徒(巡条さん)より年下……!
うちの担任はすごい若いメガネの兄ちゃんで、誰かが教えてくれたけど23歳・教師1年目。なんというかお互いやりにくくないのかな……。先生は普通に巡条って呼び捨てにしてるけど。
あと別にどうでもいい話、成人してる教え子なら教師と付き合っても問題なさそうっていう。まさか先生、巡条さん――いってませんよね? ぼ、僕はいきますよ……2学期中、には……。
ただでもやっぱり普通に考えて――24のお姉さんが16の小僧なんかになびくわけない……。貞操観念もしっかりしてて前田みたいなヤリチン(たぶん)も退けてる。しかも相手を慮って。エッチのエも口にできない聖女だし、淫らなことなんか思いも求めもしないんだ。そこがいい。ああ見えてックスの・ンチンのことが頭にあったら――もっといい。……そんなわけないか。
「…………」
さっきから巡条さんがチラチラ見てくる。そんなわけない――ことない、勘違いじゃない。いつも僕が見てるのに、見られてるから見れない……目が合ってしまう・息が止まってしまう。
もしかして僕のことが好きになってない。まだ1週間、さすがに早すぎる・ちょろすぎる。でも気にはなってる――と思いたい。こっちの視線を・好意を意識しだしたのかなって。
ホームルームが終わって担任が出てった。教室にざわめきが少し戻る。
「あの~……雪佐く~ん」
声を潜めて・顔を曇らせて言ってきた。もちろん左隣だ・窓際だ。
「それ~……」
細い・白い指で僕の背中をさす。片手を後ろにまわしてみると紙をぐしゃっとつかんだ。
転校生
おばさん
相合傘の下に赤々と・でかでかとそう書いてある。裏返して見たら僕の名前だ・プリントだ。
「…………」
なんだ、そうか。僕のことが気になってきたんじゃない、この張り紙が気になってたんだ。
わざわざありがとう3ギャル。いつの間に貼ったの? おかげで巡条さんが見てくれたよ。
黒赤青がこっち見て笑ってる。……ふざけんな。おばさんは訂正しろ、お姉さんにしろ!
けどこんなのでキレたら思うつぼ。1時間目の現社の先生がやってきた。教科書教科――
教科書がない。
◎




