第3話「ふ、りょ、う。私、不良だったの~」(前話と地続きです)
「前田……?」
「ええ、私に告白してきたの~」
前田ぁ!
「1学期は毎日のように話しかけてきて~、カレンちゃんカレンちゃんっておしゃべりで~」
前田ぁ!
「断りきれなくてお昼も一緒に食べていたわ~。後藤くんも加わって楽しいお話してくれて~」
前田ぁ・後藤ぉ!
「そんな感じで7月に入ってね~、『オレと付き合おうぜ・夏休み遊ぼうぜ』ってきたの~。けれどその~、お付き合いしたいっていうのは~……ッチなことをしたいわけじゃな~い? でも私は成年で~・前田くんは未成年で~、ごめんなさ~いって歳を明かしてお断りしたの~」
ま~~~~え~~~~だぁ~~~~! お~~~~ま~~~~え~~~~だぁ~~~~! おまえが後藤とか黒川にしゃべって広まったんだ! 巡条さんが24っておもしろおかしく!
「私がおばさんで前田くん引いちゃったみたいで~、それ以来話しかけてこなくなったわ~。その数日後だったかしら~、黒川さんと仲よしさ~ん。お付き合いしはじめたみたいなの~」
片手を頬にうっとり・ほっこりしてる。まるでいいわね・アツいわね~と祝福するかのよう。
「……あのふたりのことってどう思ってるの?」
「ん~、前田くんは明るくてやんちゃな男の子~。かっこいいし男気~? があると思うわ~。黒川さんも明るくてかわいい女の子よね~。こんがり焼けていて私なんかよりセクシーよ~」
「…………」
聖女でしたか。サン(聖)カレンさまとお呼びし・お慕いし、終生崇めたてまつります……。
だって黒川なんて今日さんざん悪口言ってた奴だよ? それを『明るくてかわいい女の子』? 器でかすぎ・人間できすぎ……かえって心配になる。なにされても笑って許しそうな優しさが。
「巡条さんのほうこそもし嫌な目に遭ったらちゃんと言ってね? ぼ、僕が……力になるから」
思わず口走ってしまったけど――て、れ、く、さっ・せ、り、ふ、く、さっ!
「まぁ~、頼りにしているわ~」
無駄話もほどほどに勉強を再開する。一方で今の話から読み取れたことが頭から離れない。
告白されてわざわざ年齢を持ち出して断ったということは、一に彼氏がいないということ。いるなら普通に言うだろうし、いなくても嘘で言っていい。偽れないから歳を明かしたんだ。そして二には前田のことがまんざらでもない可能性。ッチなことはできないからと断ってる。生理的に無理ならそこまで配慮は・想像はしない。それにはっきり『かっこいい』と評した。
……これはやってられない・聞かずにはいられない。以上、一・二を遠回しに聞いてみた。
「彼氏なんて今までひとりもいないわ~。だから私も16歳ならお付き合いしていたかも~」
「へ、へー。前田みたいなのが……タイプなんだ」
ああそうですか、結局そうですか……! 悪い・強い・チャラいの三拍子がいいんですか!
「ん~、とくにタイプっていうわけじゃないの~。私、押しに弱いから~」
強引で情熱的なら変な話、女の子でもまいっちゃうという。恋愛経験ゼロなのとはにかんだ。
そこで話は終わったけど、つまりはおそらくは男性経験ゼロ。ますます聖女味増してきた。サンカレンさまは押しに弱いとおっしゃる。頬つつくくらいで勇気いるようじゃダメだ……。気安くカレンちゃんなんて僕には呼べない。けどときには『強引』に・『情熱的』に――押そう。法にも体にも触れないと固く誓う。ッチなことを抜きにしても好きなんだ・付き合いたいんだ。
16時半になると巡条さんは切りあげた。17時からのバイトに行かないといけないと。
「今日は色々ありがと~。雪佐くん、お礼になんでも言って・聞いて~」
な――なんでも言って・聞いて……!? スリーサイズ教えてください、脚出してください、髪ほどいてみてください、手を握ってください、連絡先交換してください、僕と付き合――
「24歳にもなってどうして高校1年生か――気にならな~い?」
「へ? あ、うん……気になるけど……」
それって聞いてもいいの……? 暗い・重い話とかじゃない……?
「うふふ、暗くも重くもないわよ~。実は~――」
僕の耳に口を近づけてなまめかしくささやいた――「ふ、りょ、う」
「っ……」
たった三語だったのに吐息で・芳香でそれどころじゃない……。今なんて? ひにょう?
「ふ、りょ、う。私、不良だったの~」
「不良……?」
にっこりうなずく。巡条さんが……? 黒川みたいに――いや……それ以上だったとでも?
「本当に高校1年生だった16歳から去年までグレていて~、8年ぶりに学校に復帰したの~」
……はい? あ――お母さんに勘当されたって……長いことグレてたから?
この人めちゃくちゃ綺麗だけど――はちゃめちゃやばいかもしれない……!
「だからその~、中学生の頃の英語なんて10年も前で~……」
ぜんぜん覚えてなくてと恥じ入った。英語に限らずほかも同様で、それで成績が悪いらしい。
「そ、そうですか。な、なるほど、でしたら仕方ないですね。ドアイフフアイクルトですね」
「あ~ん、怖がらないで~・かしこまらないで~……。ディフィカルトでしょ~……」
不良といっても喧嘩上等・暴走三昧だったわけじゃなく、虫の命も信号も守ると釈明した。
「それであの~、くどいとは思うけれど~……私が不良だったって聞いてもだいじょうぶ~?」
年齢の暴露は二回目だけど、過去の暴露はこれが初めてとか。引いたかどうか確認してくる。
「ひ、引いてない引いてない。24って以上にビックリしただけで……」
過去がなんだ、答えは・心は変わらない。巡条さんの助けに・恋人になりたいんだ。
「歳も昔も関係ないよ。僕でいいなら休み時間も放課後も勉強見るから」
「雪佐く~ん……!」
両手をぱんっと・顔をぱあっと大歓喜、僕の手ぎゅって握ってくれた。……口に出てました?
「それじゃあ私行くわね~・明日もよろしくね~。お疲れさ――じゃなくって~、バイバ~イ」
左肩に流したまとめ髪を跳ねさせて出ていった。巡条さんの手……すべすべだったなぁ……。
◎




