第17話「元カノ久々ハメんの、んーな悪ぃか?」
「…………」
このままトイレに、個室にこもってるつもりだったのに……嫌な予感も悪寒もする。戻ろう。あんな文書にまでした矢先に復讐か? 『巡条さんを』だから黒川はいいとでも? 違うわ!
教室に駆け込んだ・怒鳴り込んだ。
「おい! おまえら懲りないな!」
なにごとかと全員こっち向く。赤青は後藤とロッカー上にいて、怪訝な・不機嫌な顔をした。
「モモナいない系」
顎をしゃくって席を・不在を示す。え、あ、ほんとだ……早とちり? は、恥ずかしい……。
振り上げた拳は下ろせないから強気に聞く。
「ど、どこ行った!」
「サコショーとケンに呼ばれてどっか行った系」
左近と右京に……? 見れば前田もいない――いよいよきな臭い。あいつも復讐か……?
ひとまず教室を出る。どこに行った……よからぬ・けしからぬことをするならどこに行く。やっぱりトイレか? あのときは後藤と四色と結託して、性的な仕返しをしようとして……。最終的に巡条さんの自傷に群れもおそれもなして逃げたけど……今度はどう撃退すれば――
「んんっ……!」
モモの声がした。昼休みの喧噪でも聞こえるくらい近い。こっちだ――階段だ、上からだ。僕らは1‐5、校舎の末端。教室の隣は階段で、下は2階(2年)へ・上は屋上へつながる。
「へっ、感じてんじゃねーか」
前田がそう言って左右が笑った。いる……! 屋上は開いてないけど扉の前の狭フロアに。うっすら暗くて・寒くて人気のない絶好の場所だ。怒りも足音も抑えて一段一段静かにのぼる。
「はぁ……はぁ……テメーら……覚えてろよ……! あっ――はぁん……!」
階段の折り返し、踊り場まで来て上方を見上げる。まだ前田と左右の背しか視界に入らない。今すぐ駆けあがって助けたいけど無策・無力。どうしたらいいんだ! 僕じゃ勝てない……。先生呼ぶ? ……悠長すぎる。たぶんあれ手で……前戯で。呼びに行ってるあいだにヤられる。
「しっかしよー、んーなセッタが好きか? あんなヘボいのどこがいいんだー?」
「テメーより……優しいし……頭いいし……! 約束……破んなよ……ボコんなよ……!」
「わあったわあった、その代わりセフレなれよ。毎日パコパコ何発でもヤらせろよ」
話が見えた――取引か・挺身か。まず前田が左右を使いぱしってモモをここまで呼んだんだ。奴が直接言ったんじゃ来ない・聞かない。ゴカゲオ認定されて以来、完全に無視されてるから。そして『ヨリ戻してくれねーならセフレなれ。ならねーならセッタボコっぞ』とか脅したんだ。
僕のためにモモは身を挺したんだ……!
「そろそろいいか、濡れ濡れじゃねーか。おーし、おまえらもシコっていい・ぶっかけていい」
頭に血がのぼるとはこういうことか――今すぐ駆けあがって体当たりした。
「タク……!」
「ああああああああ~~~~~~~~!」
叫んで・力んで闇雲に暴れまわる。ろくに喧嘩したことない奴に喧嘩させたらこうなるわ!
「このっ!」「くそっ!」
僕の両腕ぶんぶん攻撃に左右が手を焼く。勝ち目ないってわかるだろ、とっとと逃げろモモ!
「っ……セッタ、テメー!」
ズボンを下ろそうとゆるめかけたベルトをきゅっと締め、体当たりには体当たりで反撃した。痛い・重い……危ない。階段を転げ落ちそうになる。耐えたものの間髪いれず両肩つかまれた。
「ごっ……!?」
おもいきり膝蹴り……腹はやめろって……。青山に突かれて痛いのに……なんだよ今日……。
「タクっ……!」
らしくなく女子らしく悲鳴じみて呼ぶ。あっけにとられてたけどついに立つ・いきり立つ。制服は別段剥かれてない。万が一誰か来たらまずいから、着たままヤろうとしてたんだろう。
「ぶぇっ!?」「ぶぉっ!?」
左近も右京も頬をグーで殴られて変なうめき声あげた。あっという間に前田に躍りかかる。
「シネっ! ボコんなっつっただろうが!」
烈火の・疾風のごとく殴りだす。腕が何本も見えて千手観音。……そんないいもんじゃない。対するは金剛力士といったところで雄々しく・たくましく、パンチを受けてもびくともせず。緑原にしたように腹に蹴りも入れるもほぼ効かず。速度で圧倒して防戦にさせるのが関の山。
性差は・体格差はいかんともしがたかった。
「おらっ!」
やっと拳を捉えて連打を止めて、もう片手で腕つかんで床に叩きつけた。蹴って仰向ける。
「モモっ……!」
左右を呼んで片腕ずつ抑えさせて、前田は両脚をこじ開けた。黒川が屈辱で泣きそうになる。
「やめろ! 僕をボコっていい! だからパコんな!」
「ハハハハハ! パ、パコんなって!」
ボコんなみたいに言っただけだ! パコパコとか言ってただろ、引っぱられたんだよ!
「おまえらこんなの犯罪だろ、わかってんのか!? 通報するからな!」
「してみろよ、萌々奈は嫌がるからなー?」
性的被害に遭ったって第三者に知られたくない――そういう女性心理を小賢しくほざく。
「元カノ久々ハメんの、んーな悪ぃか? しおりんもテメーもいねーしチャンスだったしよー」
せっかくだからセッタ、おまえもヤるか? ふざけんな……! どうしたら……どう――
ひらめいた……! 全校生徒を巻き込むけどこれしかない。待ってろ黒川、強くあれ……。
「おいおい、逃げんのか・見捨てんのか? おーい!?」




