第16話「……キュンってしちゃったわ~」
「くっ……!」
両腕で防ぐ。青山は∞でも描くようにほうきを振りまわす。痛い・硬い……突破できない。毎日寄ってたかってこんなのやられてたなんて……赤青はもちろん、巡条さんも腹立たしい。罰は受けないととか言ったけど、いつまで受けるつもりだったのか。青いあざになってまで。
モモが「そのまま耐えろ!」と一喝して、音から察するに戸を開いた。たぶん掃除用具入れ。
青の手が止まる・目が留まる。
「ちょ、待っ――」
鈍色の物体が飛んできて胸に当たった。床に落ちて金属質な騒音を立てる。塵取りだった。容赦ないモモはひるんだ青を飛び蹴りでぶっ倒す。トイレの不潔な床に馬乗りで組み伏せた。
「シネっ!」
手近なところに落ちてた鉄の塵取りを再び引っつかみ、顔目がけて振り下――
「やめて!」
巡条さんが手首を取って阻止した・制止した。憤怒のモモは「ああん!?」とイライラ応える。
「そんなことしちゃダメ!」
「そんなことされてただろうが! アタシもタクぐらいアンタにムカつ――ごふっ……!?」
青山が隙をついた・腹を突いた! 同じく手近なところに落としたほうきをつかんで……!
「塵取り投げるとかやばいっしょ……やってくれたっしょ!」
ひるんだモモを両手で突き飛ばす。すっと立って巡条さんを後ろへ押しやった。
「マナ! おばさん入れて立てこもり!」
「りょ、りょうかぁい!」
赤崎が戸を開けて個室に引きずり込もうとする。さすがの非暴力聖女も抵抗くらいはする。
「やめて! ケンカしちゃダメ!」
こっちに向かって悲痛に・必死に訴える。赤の両手を振り払おうと闘いながら・涙ながら。
僕はモモを案じつつ再突進、また∞叩き。塵取りでもなんでもいいからもっかい投げてやれ! 言わずとも知れたようで用具入れに走った。青の顔色が・攻撃が変わる。:みたいな二点突き。
「馬鹿が、それなら取って奪――かはっ……!」
普通に腹突かれた……。敵の武器奪うとか至難だ・自殺だ……スーサイド、だったっけ……。
僕が膝から落ちたとき、巡条さんが赤の手を振り払った。
青が額目がけてビリヤードみたいに突こうとほうきを引く。
「やめて~~~~!」
◎
休戦協定ってこんな感じなんだろうな。お互いまだ剣を抜いてるけど、ペンを走らせるんだ。
「も~ぅ、にらみ合わないの~。笑顔笑顔~」
両の人差し指で頬を突いてニコニコ小首傾げる。黒川にキっツいって言われたあのポーズ。
誓 約
一、巡条さんを二度といじめるな
二、その代わりぃ謝らないからぁ
稚拙だけど・簡潔だけど文書にした。黒板横に貼ってる適当なプリント取ってきてその裏に。
「これでいいのね~? は~い」
僕らはピリピリしてるのにおっとり貼りなおしに行く。わかってないけど条文を批准した。
「あそこに書いたこと守れよ。忘れんなよ」
「はぁいはぁい。そっちこそぉ恨まないでよぉ?」
謝らない=非はない、恨まれる筋合いはない。僕と黒川はすっきりしないけどこれが折衷案。
「それじゃあこのまま五人で食べましょ~」
レンちゃんひとりが四人を見渡せる主人的位置に、僕と赤・モモと青が対面の凸字会食に。黄緑は逃げたしまあいいかなってところ。松本・竹田・梅原とあっちで食べててなに食わぬ顔。
『やめて~~~~!』
僕が額を突かれる間際、塵取り拾って青山の頭ぶっ叩いた! 本人含め全員びっくりした。守ろうととっさにやったようで深く謝る。鉄でぶたれて大ダメージで勝負あった。赤崎も降参。謝れ(僕)・くたばれ(萌)と迫るも応じない。今日は負けでいいけどやり返すとかほざいて。見かねたレンちゃんが当事者ながら調停しだす始末……今しがたの誓約一・二にすり合わせた。
「ふたりともありがと~、それからごめんなさ~い……。自分に優しく――忘れていたわ~」
どうなってもいいなんて無責任よね~。それってもう自己犠牲じゃなくって利己犠牲ね~。
「なーんか賢そうな名言出たじゃん。頭んなかフラワーバカなのにさー?」
「フラワーバカってなによ~! あっ、そうよ~、クマく~ん!? オムツ味ってなによ~!」
オムツ味……? ああ、おつむ悪し! 勢いでお人よしと語呂よく言った適当な言葉だよ。
「意味は……うん、フラワーバカ」
「ひど~い! ……もう怒ってな~い?」
「怒ってないよ。ごめんね……こいつに言うみたいにきったない口きいて」
当然頭バシっ! すぐになでなでしてくれて、ぼそっと「……キュンってしちゃったわ~」
……赤青が見てるのにふたりで照れた。さっさと食べてはや解散、レンちゃんはダンス部へ。僕はトイレって嘘ついて姿くらます。悪く思うなモモ……彼女との約束だから仕方ないんだ。ブチギレルインが――来ない。5分10分経っても。性格的に・習慣的に考えて――おかしい。
なんかあったか……?




