第9話「ドストエフスキー」
まだタクを・モモを認めてないのか佐と萌で呼ぶみたい。巡条萌々奈は悪くない、かわいい。『ごら~』が語尾と化してそういうキャラクター感。バシバシ叩いてくるけどたまに素で謝る。黒川花恋は気味が悪い、かわいくない。天然のおっとりを真似ても人工のねっとりで赤崎感。授業中は頭なで放題で偽物だからうっとうしい(本物だったら嬉しい)。べたべたすんなって。
なお、しおりんがギャルになったと噂になったのか、毎休み時間、結構な人が見に来ました。
「佐~! 昼飯食うぞごら~!」
弁当も椅子も持ってやってくる。僕の隣で脚を組んで大胆に座った。太ももを見てしまう。
「なに見てんだごら~!」
頭バシっ! だって見るよ、今日しか見れないよ! そんなミニスカートの大人太もも!
「いってーな……。今日はおまえ、ごらごらうるさいな……」
「ごらごらうるさいってなんだごら~!」
「やーめーてー! 叩かないでー!」
席を立った・腕を取った。もう一度叩くのを防いでヨシヨシしてくる。
「ワタシの頭もナデナデしてほしいのー」
「は? ……は?」
思わず素に戻ったうえ二回言ったからヨシヨシがバシバシ! わかったわかったわかった!
「こ、これでいい?」
「ウフフ、なでなでしあいっこー」
「ごっ――ごら~~~~!」
僕もモモもぼかぼかぼかぼか! ぽかぽかじゃないから痛い痛い、妬いてる・怒ってる!
「今日のあいつらなんなのぉ? 頭だいじょうぶぅ?」
「勉強しすぎて壊れたっしょ」
赤崎・青山にくさされた。ほかの奴らも同じように思ってるかな……なんなんだあいつらと。
食べはじめる。巡条さんの二色弁当、今日は白と茶。ごはんとなんとカレーのルーだった。
「どうしたのそれ?」
「昨日の夜の残りなの~。冷めないか・こぼれないか不安だったけれど~、だいじょうぶ~」
「おいコラ」
ふたりして素に戻ったのを素黒川に指摘される。言い直せとも。
「…………。萌、どうしたんだそれ」
「昨日の夜の残りだごら~! 冷めないか・こぼれないか不安だったけどさ~、いけたごら~!」
一日萌々奈ってなんなんだろう……モモになってますか? ただのごらごらレンちゃんです。
モモの弁当は毎日色とりどりで、肉・野菜はもちろん、魚まである。キャバ嬢のママすごい。
偽レンちゃんをいいことに、あざとく・しつこくあーんしてきてひと悶着。疲れるって……。
「フフっ、とってもおいしかったー。あのねー、今日はねー、ナンヂャモンヂャしましょー」
向かい合わせてる机の中央に・境目に山札を置く。カードをめくって名前をつけていくヤツ。僕が転校してきてまもない9月によくやってたな。キンペーとかフミマロとか呼び捨ててたな。
「じゃあねー、ワタシからいくわねー。しおりんめくりーん」
そんなの言わないだろ……。デフォルメしたばい菌みたいなキャラに秒で・素で名づけた。
「タク好きー」
「は?」「え?」
「だからねー、この子はねー、タク好きーってお名前なのー」
ロシアのー、人とかー、なんとかスキーっていうじゃなーい。ウクライナの大統領さんもー。
誰がセッサ・タクスキーだ! そんな区切ってもおっとりしてない、ねっとりしてるぞ!
「むむむむむ~ぅ……!」
レンちゃんも素に戻って立腹ぷっぷくぷー。カードをめくると同時に瞬時に名づけた。
「クマくん好き~!」
誰がクマクンスキーですか! レンチャンスキ~!
変なゲームになってきてるから、僕がれっきとしたスキーを言うことで露系苗字ゲーにする。
「ドストエフスキー」
「誰ー?」「なに~?」
誰もなにもフェイマススキー! 一巡した。名づけたカードと同じキャラがそろそろ出そう。
「クマくん好きー!」「ク、クマくん好き~!」
黒川がカードをめくると巡条さんが名づけたヤツが。僅差でモモが早かった。僕は出遅れた。
「タク好き~!」「タ、タク好きー!」
続いて巡条さんがめくれば黒川が名づけたヤツ。僅差でレンちゃんが早かった。僕、遅すぎ。
「チャ……チャイ――コフスキー」
だったよな、音楽家だよな。あともうひとり音楽家でストなんとかスキーっていたような。
そうして三巡目。
「タク好きー!」「タク好き~!」「タ、タクスキー……」
「クマくん好き~!」「クマくん好きー!」「ク、クマクンスキー……」
「……ゼレンスキー」
四巡目。
「ドストエフスキー!」「ド、ドスフスキー!」「ド、ドスドススキ~!」
スキー中のスキーうろ覚え! 好き好き言われて嬉し恥ずかし楽しかった……。
◎
「佐~・カレ~ン、なにやる~? あたし太鼓の名人した~い」




