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やまびこ

 私は山へ登るのが好きだ。山の雄大な自然は、私たち人間がちっぽけな存在であることをまざまざと見せつけてくれる。


 私独自の理論だが、人間という生物はこの世の全ての物事を理解できるとどこかおごっているのだ。


 そうでなければ、全世界の研究者は途中で手を止めるはずである。「この世にはどうしようもなく分からない事象もあるのだから、調べてもしょうがない」と。しかし現実にそうならないのは、やはり全てを知り、掌握することができると考えているからなのではないか。


 私はそういった驕り高ぶる人間にはなりたく無い。だから週末は山を登り、自分の身の丈を確認するのだ。見よ、山で生きる全ての植物を。そこに潜む虫や動物を。そしてここにある澄んだ空気を。


 これらは分からないからこそ美しいのだ。貪欲な人の手が介入しないからこそ、それらが「自然」と呼ばれるのだ。何でも知ろうとする彼らにはきっと、この自然の美しさが分からないだろう。


 …頭でそういった持論を述べ歩いていると、ついに山頂へと辿り着いた。


 ここにきたら決まってやることがある。そう、やまびこを体感したいのだ。


 私は壮大な景色に向かって、大声で主張を叫ぶ。


 「何でも暴こうとする、人間のバカヤローーーッ!」


 そうすると、静かな山々から自分の声が返って──


 「山である私に向かってバカとはなんだ!人の文句は人に言えーーーッ!」


 ──来なかった。代わりに響いたのは誰かの声。誰なのだ、今のは。しかし私の周囲に人は居ない。まさか、本当に山そのものから返事が?



 だが一瞬にして消えたその声を確かめるために、もう一度叫ぶ勇気は、私には湧かなかった。


 だって、得体の知れない「声」にこれ以上触れること自体が、とてもおぞましい禁忌のように思えてしまったんだもの。

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