いわゆる、これも一種のデスゲーム
今、俺はゲームをしている。ルールは簡単だ。俺の居る場所は四方を無機質な壁に囲まれた個室。その内の一方は扉になっていて、扉の前には男が立っている。
扉にはマークが付いていて、それが「レッド」の場合、俺が中に居ると分かるようになっている。扉以外から逃げ出すことはできない。
それと、俺は時間的に10分以内にここから出なくちゃいけない。つまりは制限時間10分。
そして勝利条件は扉を開けた時に男が居ないこと。しかし男が居た場合、俺は即負けになる。
今はゲームが始まって3分ほど。俺はじっとして外の様子に聞き耳を立てるが、男が動いたような気配はない。
5分。まだ動かない。俺としては出る準備は出来ているのだが、だからと言って今扉を開けても面白くないので、まだまだ息を潜める。
7分。ついに男が動き出した。扉をドンドンと叩き個室全体を揺さぶる。
「おい!そろそろ出てこいよ!」
なるほど、脅迫してきたか。しかしそれ如きで怯む俺ではない。心を落ち着かせるために、手元にある書物に目を通す。
8分。男はまだ声を上げている。
「早く出てこい!!俺だって辛いんだよ!!」
わかってる。だけど、ゲームは譲れない。
9分。男の声がしなくなった。諦めたのだろうか。異様に静かだ。時間もギリギリだ、そろそろ出るか。そう思った時、俺の携帯がけたたましい着信音を鳴らした。しまった、マナーモードにしてなかった。
…が、外の反応は無い。これはもう、出て大丈夫だろう。ゆっくりと扉を開ける。時間いっぱいだ。男も去ったか──。
「…お前、通勤ラッシュの時間帯にトイレ独占しやがって!ここの駅は個室一個しかねーんだよ!しかも携帯と本持ち込むとか何様のつもりだ!ちょっと漏れちゃったじゃねーか!!!」
俺は扉の前にいたおっさんに思いっ切り殴られた。うーん、今回のゲームは失敗だったか。しかし、このスリルが辞められない。
俺は明日も通勤時間の合間に、このゲームを楽しむだろう──。




