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騒がしい朝

 翌日早朝。


 私はすやすや寝ておりました。えぇ、過去形です。今は起きております。


 そして起きて寝たふりをしておりますわ。


 なぜそんなことをしているかと言いますと……


「この悪女、覚悟!!」


 扉がバンと開いて、寝ているふりをしている私めがけて誰かが飛んできました。


 そして私にナイフを刺してきたのです。あぁ、もちろん偽のナイフなので痛くも痒くもないんですけれど。


「なっ!」


「あらおはようサリー。起こしてくれてありがとう」


 等と言いながら私は起床いたしました。侍女長にはあらかじめ偽のナイフ置き場を教えるように指示しておりましたが、まさか早朝から仕掛けてくるとは。


 元気な子ですわねぇ。


 あ、ちなみに何で先に起きてたかといいますと、扉向こうからすごい殺気がしておりましたから。いやでも起きますわ、あれでは。


 これ、ライアン様に知られたら首跳ねものですけれど、サリーの“粗相”は罰に問わないでほしいといっておりますので、大丈夫ですわ。


 そしてサリーはというと……わなわな震えて出ていきました。あらあら、ご主人様に挨拶もなしとは……まだまだですわね。


 さて、私もそろそろ起きましょうか。

 侍女をつけない私は、身の回りのことはすべて自分でやっています。これは、不意な裏切りを防ぐため。もちろん皆さん信用していますが、念には念を入れたいのです。


 支度をし、朝食を食べに向かうと、すでにテーブルにはクロロ殿とライアン様が座っておられました。


「おはようティア」


「おはようございますわ、ライアン様、クロロ殿」


「おはようっぺー」


 私が来ると同時に給仕達が朝食の準備を始めます。本来ベッドで食べても良いのですが、それだと寂しいとクロロ殿がおっしゃり、最近では皆で食事をとることにしておりますの。


 あぁ、そういえば。アーノお兄様は無事にくたばりましたと連絡がありました。死ぬまでに一日、かかりましたわね。


 あんなことがあったと言うのに、優雅に食事をしているのですから周りから見れば、たいそう狂った悪女に見えるでしょうね。


 ちなみに今日の朝御飯は高級目玉焼きとベーコンにトーストですわ。クロロ殿が食べたいとねだりましたの。


 魅力効果がなくてもクロロ殿のかわいさに、私もライアン様も日々メロメロですわ。


「美味しいですかクロロ殿?」


「んだー、うまかぁ!」


「ほら、口にたくさんついてるぞ」


 なんて和やかに会話をしていたときです。私の後ろから声がかかりました。


「お茶を……お持ちしました……」


 震えたその声は、サリーのものです。瞬間、ライアン様の目が見たこともないくらい冷たくなったので、私が手で制するともとの笑顔に戻られました。


 よかった、クロロ殿は気づいてないみたいですね。お子さまに見せられるものではありませんわ。


「あらサリー、気が利くわね。」


「いえ……」


 サリーは私の専属にするため、すべての仕事をできるようにならないと言えません。もちろん、給仕も。


 そのため今回は侍女長からお茶を淹れてこいと言われたのでしょう。すごいのは、一日で言葉使いを覚えさせた侍女長の手腕ですけれど。


 私はカップを持つと、サリーはその様子を息を飲みながら眺めていました。あらあら、そんなに見つめられては……何かあるとわかるじゃないですか。


 私は口をつける寸前でカップを置くと、サリーへにこりと笑いかけました。


「サリーも慣れないことで疲れているでしょう?よかったらこのお茶、飲んでくれないかしら。」


「え……っ」


 一瞬にして彼女の顔が青ざめていきます。

 全く彼女は分かりやすいです。


「ほら、どうぞ。私はあとで飲むわ。」


「い、いえ……私は……」


「あぁ、大丈夫よ。主が勧めるお茶だから、先に飲んでも無礼には当たらないわ。」


 むしろ勧められたお茶を断る方が無礼に当たる。それくらい、彼女は知っているでしょう。


 私からカップを受けとる手が震えています。飲むか飲まないか、悩んでいるようです。


 そうして彼女は、震えたままうつむきました。


「お湯が……冷めてるようですので……新しいものをお持ちします」


「あら、そう? ではお願いね」


 唇から血が出るんじゃないかってくらい口を噛む彼女はお茶を下げました。


 大方、毒でもいれていたのでしょうね。

 次から彼女からもらったものはすべて、彼女に毒味させてから食べることにした方がいいわね。


「あのお茶、変な臭いがしただ。」


 耳をピコピコさせて一部始終を食べながら見ていたクロロ殿は、10人分の朝食を平らげてごちそうさまと両手を合わせました。


「臭いでわかりますの?」


「おだ、鼻もいいだ! きっとお茶が痛んでたべ、誰も飲まなくてよかー」


 毒とは思っていないクロロ殿はそういうと勢いよく椅子から立ち上がります。本当に、子供は元気ですわねぇ。


「おだ、伝えてくるだ!」


 そういうとサリーを追いかけて走っていきました。正直会わすのはどうかと思いましたが、クロロ殿のあの毒気のない笑顔は、ある意味サリーには良い薬になるかもしれませんわね。


「……ティア。なんでサリーを雇ったんだい?」


「あら、それはお伝えしましたけど……単に気まぐれですわ」


「気まぐれでも危険すぎるよ」


 ライアン様のご指摘はごもっとも。

 でも、サリーになら殺されても良いと私は思っていますの。


 その権利くらい、彼女にはありますから。


「もうしばらく様子を見てくださいな。それよりも、作戦会議をいたしましょう」


 私の復讐はまだ終わっていない。

 むしろ次からは、かなり時間がかかるでしょう。


 念入りに準備しないと、ね……。

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