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第94話 魔獣は食材?

 狩りとは本来、食べるために行うものだ。

 毛皮だって衣類などに使える。

 骨も加工して道具になる。

 ところが人間の欲はとても深い。

 毛皮目的だったり、油目的だったり、牙だったり角だったり。

 目的以外の部位は、すべてポイ捨てだ。

 利用されることは無い。

 金儲けのために乱獲される。

 その為に絶滅に瀕したり、実際に絶滅した種も少なくない。

 そして商業的に役に立たなくなると、保護だなんだと騒ぎ出す。

 エゴの塊だ。

 なら魔獣は?

 魔獣は滅ぼすべき相手で、保護対象にはなり得ない。

 そもそも食べることも衣服にすることも道具にして利用することもできない。

 だから捨てるしか無いのだ。

 今そういう話をしていたような気がする。


「タイム、聞いていなかったのか? 魔獣は食材にならない」

「それはエイルさんたちの話でしょ。マスターや時子には関係ないよ」

「関係ないって言われてもな……」


 魔獣(オオカミ)の死体を地面に下ろす。

 血が青いからなのか、肉も青い。

 オオネズミは赤くて食欲をそそったが、この肉は……

 ん?

 なんでオオネズミの肉は赤いんだ?

 血の色も赤かった。


「エイル、こいつの血は青いのに、オオネズミの血が赤いのはなんでだ?」

「魔力が少ないのよ、赤くなるのよ。うちらのような魔力が濃い生物のよ、体液が青いのよ」


 だから俺の血の色は赤いのか?

 いや、エイルは血が赤いのは酸化鉄の色だと言っていた。

 少し事情が違うのかな。

 赤から青へ……


「なら、その中間の紫とかもあるのか?」

「魔力欠乏症の人がそうなのよ」


 魔力欠乏症……

 あー、確か俺はトレイシーさんに、そう思われているんだった。

 でも紫を越えて、赤だぞ。

 欠乏症どころか、消失症とかになるのかな。

 まてよ。

 思い返してみると、イノシシはほんのり紫がかった赤じゃなかったか?


「なんにしても、だ。タイム、とてもじゃないが、食欲が湧かない色だぞ」

「えー、でも勿体ないよ。どうせ他の魔獣の餌になるだけなんだから」

「餌になるなら、無駄にはならないんじゃないか?」

「魔獣の餌を残したら、ダメだよ」


 それもそうか。


「そうは言うけど……俺にオオカミを食えっていうのか?」


 オオカミはイヌじゃない。

 イヌじゃないけど……


「オオカミじゃないよ、魔獣だよ」

「それは屁理屈だろ。そもそもとてもじゃないが、食べきれる量じゃない」


 牛や豚ほどではないにしても、体高が120センチもある魔獣(オオカミ)だ。

 2人がかりだとしても、幾ら俺が大食漢だとしても、2日や3日で食べきれるとは思えない。


「時子に冷凍させればいいでしょ」

「そのあとどうやって運ぶんだよ」

「フブキさんに背負ってもらえば――」

「それでフブキが毒素に冒されたらどうするんだよっ」


 そんな危険なことは、絶対にやらせられない。

 タイムなら言わなくても分かるだろうに。


「ならなにも取らずにポイ捨て? そんなの、命に対して失礼だよ」


 そりゃ、無為に殺すのはよくないことだ。

 狩猟だって、食べる為に行っている。

 肉だけじゃない。

 皮だって骨だって、余すことなく使われている。

 しかし魔獣は、箸にも棒にも引っかからない。


「相手は魔獣だぞ」

「魔獣でもだよ」

「う、うーん。うるさいなぁ」


 どうやら時子が目を覚ましたみたいだ。

 まだ眠いのか、目を擦っている。


「ふえっ、ここは?」


 起きたばかりで状況がつかめないのか、キョロキョロしている。


「おや、僕が背負っているお姫様が、目を覚ましたようだね。おはよう、よく眠れたかい?」

「レイモンドさん?! お、おはようござい……魔獣は?」

「安心したまえ、僕たちは戦いに勝ったのだよ」

「そうなんですか」


 レイモンドさんが、時子を下ろす。

 自力で立てはするようだ。


「すみません。ありがとうございました」


 でも少しフラついている。

 支えてやろうと思ったが、俺は今魔獣の血で汚れきっている。

 まずはこの血をどうにかしたい。

 時子は俺を見つけると、フラフラと近寄ってきた。


「大丈夫?」

「俺より時子の方が心配だよ」

「あはは、ありがとう。時子は、大丈夫だよ。少し身体中が痛むけど」


 包帯がしてあるところを、手でさすっている。

 魔獣(オオカミ)の咆哮で、吹き飛ばされてできた擦り傷だったっけ。

 タイムが治療したとはいえ、痛みまでは取れていない。


「それは大丈夫とは言わない。横になってろ」

「んー、横になる場所がないよ」


 確かに、そんな場所は無いか。

 血塗(ちまみ)れでなければ、俺が背負ってやるんだがな。

 エイルになにか敷くものでも出してもらうか?


「それより」


 時子が手を差し出してくる。


「手、繋がなくていいの?」


 こんなときでも俺の心配をしてくれるのか。

 嬉しい申し出だけど。


「ああ、今魔獣の血でドロドロだから、いいよ」

「え、その青いの、血なの?!」


 まあそう思うよな。

 俺もエイルに言われるまで、知らなかったし。

 というか、その説明を時子も一緒に聞いていたはずでは?


「あー、だからレイモンドさんなのか……」

「なにが?」

「あはははは……ちょっと想定外だっただけ」

「ふーん?」


 なにが想定外なんだろう?


「ちなみにこれ、猛毒なんだって」

「ええ?!」

「ああ、俺と時子には無毒だから、安心して」

「どういうこと?」

「俺たちが元素世界の人間だかららしい」

「……分かった」


 まだなにか言いたそうだけど、とりあえずは納得してくれたようだ。

 魔力といい毒素といい、元素世界の俺たちには無縁なんだな。

 今回はそれがいい方向に働いただけ。

 どちらかというと、マイナス面の方が多い。


「時子も食べるでしょ」

「あ、うん」


 え、食べるの?


「え? なにを?」

「だから、魔獣を」

「食べても大丈夫なの?」

「マスターと時子なら、問題ないよ」

「へー、分かった」


 本当に食べるのか?

 幾ら毒にはならないからって。

 ちゃんと分かっているのか?


「分かったって、魔獣だよ。魔獣、食べるの?」

「モナカくんは食べないの?」

「だって、アレだよ」


 そう言って、先ほど地面に下ろした魔獣(オオカミ)を指さす。

 見た目がもう、ね。

 食べる食べない以前に、食欲が全く湧かない。


「うわ、お肉が青い。なんで?」

「だから、血が青いから?」

「なるほど。んー、今更?」

「またそれ?! シャワーとは違うんだよ。オオカミなんだよ」


 オオネズミじゃないんだぞ。

 今更と言うには、違いが大きすぎる。


「オオカミじゃないよ、魔獣だよ」

「それは屁理屈だろ。そもそもとてもじゃないが、食べきれる量じゃない」


 タイムと同じことを言うんだな。

 魔獣を食べることに、あまり抵抗がないというのも似ている。

 まあタイムは食べられないけど。

 オオネズミはあんなに大騒ぎしていたというのに。

 慣れというものは、恐ろしいものだ。


「時子が携帯(ケータイ)で冷凍するよ」

「そのあとどうやって運ぶんだよ」

「フブキちゃんに背負ってもらえば――」

「それでフブキが毒素に冒されたらどうするんだよっ」


 そんな危険なことは、絶対にやらせられない。

 時子は、そんなことも言わなきゃ分からないのか?


「ならなにも取らずにポイ捨て? そんなの、命に対して失礼だよ」

「相手は魔獣だぞ」

「魔獣でもだよ」


 さっきからタイムと言っていることが、被りすぎな気がする。

 時子……なんだよな。

 まあ双子なんだから、考え方が似るっていうのも分からなくもない。

 ……いや、双子なのは嘘の設定だ。

 一部分を除いて、なにからなにまで瓜二つの外見。

 内面まで似てしまったら……

 タイムは本当に事実を嘘と(いつわ)っているのか?


「なに、時子の顔になにか付いてる?」

「なんでもない」


 タイムが俺に嘘を()くはずが……

 ただの偶然だ。

 時子はアニカの言うような、タイムの代用品じゃない。


「マスター、時子も食べるって言ってるんだから、命に感謝して食べようよ」

「いや、しかし……」

「毒素……」

「時子?」


 いつになく真剣な眼差し。

 なにかを考えているのか。

 結構貴重な顔だぞ。

 保存しておくか。

犬食はかなりマイナーな部類だよね

でも異世界物だと、オオカミは結構普通に食材だったりするよね

オークとかもそうだし

次回はかなり頭が混乱する話です

あちし自身も気を抜くと混乱してしまいます

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