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第93話 毒素というもの

 うへぇ。

 戦闘中は気づかなかったけど、魔獣(オオカミ)の血のにおい……

 すっごく違和感がある。

 本当に血なのか?

 あの鉄臭いにおいと全然違う。

 なんのにおいに近いかな。

 草?

 青臭い……かな。

 におい自体はキツくないけど、青い野菜汁っぽい。

 でも手の感触は、血のソレなんだよ。

 あのヌルッとした、嫌な感触。

 早く洗い流したい。


「バカモナカ! 魔獣から離れるのよっ!」

「へ?」


 エイルが駆け寄ってくる。

 まさかまだ生きているのか?

 タイムを見ると、首を振って否定している。

 生きているわけではなさそうだ。


「大丈夫だ。完全に死んでいる。襲ってこないぞ」


 この状態で襲われたら、ひとたまりもない。

 大丈夫だとは思うけど、エイルの勢いを見ると、自信が無くなってくる。


「魔獣は毒素に冒されてるのよ! その体液のよ、人には猛毒なのよっ!」

「え?!」


 猛毒?

 と言われても、もう遅い。

 大量に返り血を浴びた後だ。

 そんな重要なこと、なんで今言うんだ?

 先に言ってくれよ。

 それに本当に猛毒だとするなら、タイムがなにも言わないのはおかしい。

 俺が毒に冒されたなら、今頃大騒ぎしてくれているはずだ。

 なのに、騒ぐどころか、落ち着き払っている。


「エイル、大丈夫だ。心配するな」


 というかエイル。

 前に俺を鉱石扱いしなかったっけ。

 鉱石は人じゃない。

 だったら毒は効かないんじゃないか?

 ……言ってて悲しくなる。


「なに言ってるのよ。離れるのよっ」


 と言いながら、俺に単発式詠唱銃(カートリッジガン)を向ける。

 いや、確かに多少の怪我はしたけどさ。

 本当に風穴を開けるつもりか?


「待て待て、本気か?」

「大丈夫なのよ。一瞬で終わるのよ」


 一瞬で人生を終わらせるっていうのかっ。


「大体、猛毒ならなんで前もって言わないんだよ」

「毒素に冒された魔獣を担いで持ってくるのよ、思わなかったのよ」


 あー、まあ普通そんな風に持ってこないか。


「担ぐもなにも、全身返り血で酷いことになったんだけど」

「どう戦うのよ、そんなに体液を浴びるのよ」


 そりゃオオネズミやイノシシと戦ったときに、返り血なんて殆ど浴びなかったけどさ。

 〝猛毒〟なら、ちょっとでも不味いんじゃないのか?


「大丈夫ですよ、エイルさん。忘れたんですか? マスターに毒素なんて効きません」

「え、そうなのか?」


 初耳なんですけど。

 魔力関係のものが効かないのは分かっていた。

 毒素もその1つなのか?

 タイム、そういう重要なことは、先に言ってもらわないと困るぞ。

 なんでエイルには話していて、俺には一言もないんだよ。


「そうだよ。じゃなきゃ、接近戦なんてさせないよ」


 そうだったのか。

 そういえば、試験の時も、近接職は珍しいって言われてたっけ。

 こういった理由なのか。

 この世界の人にとっては、猛毒なんだろ。

 よく近接職なんてやろうと思う人が居るな。


「本当に大丈夫なのよ?」


 忘れていたというよりは、半信半疑だった……という感じか。

 エイルが構えていた単発式詠唱銃(カートリッジガン)を下ろす。

 本当の本当に撃つ気だったのか。


「あ、エイルさんはマスターに近づいたらダメですよ。毒素にやられちゃいます」


 あ、本当に猛毒であることには、変わりがないのか。

 しかも近づくことすらダメらしい。


「アニカさんもレイモンドさんもです」

「そうなんですか?」

「なるほど、僕は理解したよ。トキコ君も平気なのだね」

「話が早くて助かります」

「そうだ、時子は?」

「安心したまえ、僕が連れてきているのだよ」


 時子はレイモンドさんが背負っている。

 タイムの言っていた()り傷は、すでにタイムが治療済みで、包帯が巻かれていた。

 きちんと清潔な包帯で、丁寧に処置されているようだ。

 包帯を巻くほどの傷なのか?

 単に絆創膏では、小さすぎるのか。

 とにかく、一安心だ。


「マスター、早く」

「いや、だからしないよっ」


 全く、タイムには困ったものだ。

 そりゃ、〝目覚めのキッス〟しか方法が無いのなら、喜んでやるよ。

 でも違うからな。

 そんなことをしたら、時子に嫌われる未来しか見えない。

 勿論、今の時点では……だ。


「レイモンドさん、魔獣はどうします?」

「捨て置くのだよ、僕たちではどうにもできないからね。時間が経てば無に()すから、安心したまえ」

「魔素に還らないんですか?」


 確か前にアニカがそんなことを言っていた。

 魔獣は違うのか?

 それとも、アニカの知識が間違っているのか。


「ああ、僕たちとは違うのだよ。毒素になったら、失われるだけなのさ」

「失われるだけ……」


 ということは、アニカの知識は間違っていなかったのか。

 たまには役に立つな。


「魔力の通わない毒素のよ、いずれ無に()すのよ」


 魔獣は素材にもならないのか。

 被害拡大を防ぐために狩り取る。

 オオネズミは食材になるし、素材にもなる。

 捨てるところが無い。

 イノシシもそうだ。

 ところが魔獣は真逆だ。

 捨てるところしか無い。

 これがここのルールなのか。

 ならば、せめて埋めてやるとしよう。


「だからマスター、朝ご飯は魔獣のステーキにしようよ」


 今なんつった?!

モナカは毒無効とかではありません

毒は普通に効きます

なので、フグ毒とか青酸カリとか舐めると、コロッと死にます

次回はタイムの宣言通り、魔獣(オオカミ)を食べ――

モナカ「ちょっと待て」


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