第92話 コンビネーションプレイ
タイムがサポートに来てくれた。
鬼に金棒……とはいかないが、一寸法師に縫い針くらいにはなるんじゃないか。
これで野太刀を両手持ちできる。
常時発動型アプリ[両手持ち]が効果を現す。
これで魔獣に、よりダメージを与えられる。
ハンデ戦はここまでだっ。
砂煙の向こう側から、魔獣が突進してくる。
「火槍!」
タイムの魔法が魔獣を牽制する。
今度はちゃんと魔法少女モードになったようだ。
魔獣が避けたところへ、[ダッシュ]で斬り込む。
タイムが牽制してくれたお陰で、魔獣は避けることができない。
実にいい角度とタイミングで、牽制をしてくれる。
だからしっかりと力の籠もった一撃が、魔獣の前足を斬り飛ばす。
よし、手応えバッチリ。
痺れもない。
そこから[サイドステップ]と[横薙ぎ]で、残りの前足も斬り飛ばした。
魔獣は前のめりに倒れるかと思いきや、後ろ足だけで飛びかかってきた。
なんという執念。
殆ど捨て身じゃないか?
俺は後ろに倒れながら魔獣を避けると、その無防備な腹に刀を突き刺した。
「炸裂爆弾」
突き刺した刀の先端から、タイムの魔法が発動する。
魔獣の腹の中で、幾つもの爆発が起きた。
実際には魔獣の腹の中で、風船が膨らんだようなものだ。
爆発も燃焼によって気体の体積が膨張して起こるから、大差はない。
そしてこれは、内側からの直接攻撃だ。
さすがに終わりだろう。
魔獣の腹が弾け、モロに返り血を浴びてしまった。
「うわっ」
魔獣を蹴り飛ばして、体勢を整える。
もう動かないとは思うが、一応警戒をする。
「マスター、気をつけて。まだ動くよ」
「ウソだろ。どんだけ生命力が強いんだよ」
よく見ると、前足が半分ほど再生している。
マジで超回復持ちかよ。
腹からは、ボトボトと青い血を滴らせている。
というか魔獣の腹、無くなってないか?
タイムの魔法、えげつな……
魔獣は牙をむき出しにして、俺を睨んでいる。
まだ戦意を失っていないということか。
とどめを刺したいところだが、魔獣は後ろ足だけでも厄介だ。
しかし、さすがにダメージが大きいらしい。
前足の再生は途中で止まり、不完全なまま。
後ろ足も力が入らないのか、動きが鈍い。
立とうとしても、生まれたての子鹿のようにプルプルしている。
腹からの出血も止まらない。
俺はゆっくりと刀を上段に構える。
魔獣は怯むことなく、俺を睨み付けて唸っている。
万が一、ここで魔獣に飛び掛かられても、タイムが避けてくれる。
だからしっかりと刀を握りしめて、力をため込む。
「はああああああああっ!」
力任せに振り下ろし、頭をかち割った。
ここまでやれば、魔獣も息絶えるだろう。
「やったか?」
「マスター、フラグ立てないでよ」
「あ、しまった」
とはいえ、さすがの魔獣もここまでのようだ。
完全に動かなくなっている。
「動かないな」
「動かないね」
「大丈夫だろ」
「大丈夫だね」
フラグはへし折る為にある。
次は〝この戦いが終わったら、結婚するんだ〟とか言ってみようか。
「タイム、残りは?」
「2割無いくらい」
「うわ、あっぶな」
あんな短時間の戦闘で、そこまで減るのかよ。
気をつけないと、あっという間にバッテリー切れ起こすぞ。
……待てよ。
開始時が残り7時間で、今は残量が2割弱。
単位が違うから実際どうなのかが分からないじゃないかっ。
くそっ、タイムにはぐらかされたってことか。
問い詰めても答えてくれないだろうな。
やられた……
「早く時子に抱き締めてもらおうよ」
「っはは、手を繋ぐだけにしておくさ。ってそうだ! 時子大丈夫か?」
「うん。まだ気を失ってる。王子様の目覚めのキッスが必要なんだよ」
「しないよっ!」
そんなことをしたら、口をきいてくれなくなるんじゃないか。
「とにかく、戻ろう」
「うん。魔獣はどうするの?」
「んー、毛皮とか剥いだら、売れるかな」
「じゃあ、時子に解体してもらおうか」
「そうだな」
しかしデカいな。
フブキよりデカいぞ。
これ、背負って持って行くのか?
他に手段がないし、背負うか。
抱えるよりは、歩きやすいだろう。
……ソリが欲しい。
とりあえず刺さっている刀を携帯に仕舞う。
そして魔獣を持ち上げてみる。
うわ、やっぱ重いな。
でも、背負えなくはなさそうだ。
重いといっても、人1人よりは軽い。
「タイムが持とうか?」
「大丈夫だよ。この、くらい……せーのっ、よっと」
なんとか背負うことができた。
あー、腹が開いているから背中が魔獣の血でベタベタだ。
まあ今更感しかないけど。
やっぱ引きずった方がよかったか?
vs魔獣戦、これにて終了です
さ、エピローグエピローグ……いやいや、まだタイトル回収してないからっ
次回は現世界人と異世界人の違いが再び上昇します




