第81話 見張り番
「それじゃ、僕はこれで寝るけれど、君たちは交代で見張りをするんだよ」
どうやら本当に試験をしているようだ。
見張りか。
「2人1組で、俺と時子、エイルとアニカでいいんじゃないか」
「それでいいのよ。時子も文句を言わないのよ」
「言わないよ。そのくらい、分かってるから」
いつもなら強く否定しているところなのに、今回はやんわりとしている。
逆に手を強く握ってくるくらいだ。
実戦を前に、緊張しているのだろう。
「見張りはタイムがやるよ。みんなは寝てて」
「タイム? なに言っているんだよ。タイムは働き過ぎなんだから、こんなときくらい休め」
魔素透過膜に見張りにサポートにと、一番働いているのは、タイムだ。
タイムがただのA.I.なら、あまり気にしなかったかも知れない。
しかしタイムは、誰かの魂を核としている……と俺は考えている。
それが時子の双子のお姉さん……かも知れないとも。
事実を嘘として言うのは、定番だ。
そうなら、色々と説明が付く……ような気がする。
とにかく、魂にも休憩は必要だ。
「そうですよ。それに龍魚が周囲を見張っています。タイムさんは休んでいてください」
「タイムは大丈夫だよ。休まなくても、疲れたりしないから」
言うと思った。
だから……
「タイムが休めば、消費電力も少なくなるんじゃないか? 俺の為にも休め」
「大丈夫だよ。マスターが起きてるよりタイムが起きてる方が省電力だし、時子がマスターとくっついてくれるから問題ないよ」
しまった。
それも最近だと、定番の返しになっていたな。
「お姉ちゃん! 気軽に時子を利用しないでっ」
「とにかく、見張りはタイムがやるったらやるのっ。みんなは休んでてよっ。タイムが信用できないの?」
「そういう話じゃない」
「モナカくん、お姉ちゃんに任せて休もう」
「時子までっ」
「だって、こうなったお姉ちゃんが引き下がると思う?」
「……思わない。でもっ」
「だったら、お姉ちゃんに任せようよ。みんなも、それでいいよね」
「……分かったよ」
「時子、ありがとう」
「いいよ、このくらい」
そう言うと、時子は俺に寄り添ってきた。
タイムが言った、〝くっつく〟を実践しているのか?
「アニカさん、龍魚も休ませてあげて」
「大丈夫だよ。精霊に疲れるとか時間なんて概念は、無いんだよ」
アニカ、今それをタイムが言っていたばかりだろうに。
タイムには休めと言えて、どうして精霊には休めと言えないんだ。
「イフリータくらいになると、人の真似事で言ったりするけどね」
イフリータ……アニカに構って欲しいんだな。
哀れな奴め。
アニカも分かってやれよ。
「うん。でも意思の疎通ができないから……」
「ははっ、そうだね。分かったよ。みんな、お疲れ様。ありがとう、また遊ぼう」
〝女将ー、もう終わりー?〟
〝ねえねえ、今度はいつー?〟
〝もっと遊ぼー!〟
「ゴメンね、もう寝る時間なんだ。みんなも、おやすみ」
〝つまんなーい〟
〝仕方ないなー〟
〝おやすみー〟
「タイム、気をつけてな」
「大丈夫だよ。タイムは無敵だからね」
「ははっ、そうだな」
エイルがアニカと一緒に、テントに入ろうとしている。
普段なら、まだタイムと色々している時間だ。
「あの、エイルさ――」
「アニカと離れられないのよ。もう寝るのよ」
「あ、うん。おやすみなさい」
タイムとエイルは、あれからぎこちないままだ。
エイルはタイムのなにが気に入らないのだろうか。
俺と時子も、エイルたちに続いてテントの中に入る。
テントの中は5人くらいなら余裕で寝られるくらいの広さがある。
大の字で寝られるほどではないけどな。
既に人数分の……布団? のようなものが並べられていた。
一応カーテンで、布団が2つと3つに分けられている。
男女で分けている、ということか。
俺と時子は手を繋ぐから、カーテン越しに寝ることになりそうだ。
「モナカと時子はそっちで寝るのよ」
そう言われた空間は、布団が2つ並んでいる方だった。
「男女で分かれているんじゃないのかよ」
「そんなことしないのよ。でも声は筒抜けなのよ」
ただのカーテンだからな。
防音性能なんてあるはずも無い。
せいぜい目隠しになる程度だ。
それがなんだというんだ?
「時子は気をつけるのよ」
なにをだよ。
「なにを気をつけるんですか?」
「……うちは気にしないのよ」
だからなにをだよ。
「そうだね、僕も無粋なことは言わないよ。むしろもう1つテントを用意できなかったことをお詫びしよう。すまない」
いや、それをされると俺と時子で1つのテントに押し込まれそうだ。
それはきっと時子が嫌がる。
嫌がるけど、一緒に寝てくれるだろう。
出張所とは状況が違うからな。
「んー、ボクも混ざったらダメかい?」
「ダメなのよ」
「なんでエイルさんが答えるんですか?!」
「時子はアニカが混ざるのよ、良かったのよ?」
「よくありませんっ」
時子、その答え方だと、俺と二人っきりを邪魔されなくないと取れるぞ。
俺はその通りなんだけど。
「そうだな。アニカ、我慢しろ」
「モナカくんまで」
とにかく、寝る場所は決まった。
カーテンで隔離されているのは気になるけど。
さて、この布団のような筒状の物体はどうやって使うんだろう。
レイモンドさんは……もう寝てる。
早いな。
えっと、この筒状の中に入って寝るのか?
なんか、芋虫の着ぐるみみたいだ。
でも、これなら覆い被さるなんて失態は、しなくて済むぞ。
レイモンドさんは、着ぐるみから顔だけ見える状態で寝ている。
それに習うと、時子と手を繋げない。
とりあえず着ぐるみには入るが、右手だけは出しておこう。
「ちょっと、お姉ちゃんのところに行ってくるね。先に寝てて」
「ああ、分かった」
そういうと、時子はテントの外へ出て行った。
なんだろう。
姉妹で積もる話でもあるのかな。
最初は素直に寝袋って書いてました
でも多分モナカは寝袋知らないだろうなと思って、修正しました
次回は姉妹でお話しです




