第76話 振り落とされないように
レイモンドさんを先頭に、エイルとアニカ、そして俺と時子とフブキ。
タイムはエイルたちに膜を張り、更に周囲の警戒をしている。
「タイム、ライム、どうだ?」
ライムは魔法少女タイムの双子の妹(という設定)らしい。
だからライムも結局はタイム自身だ。
自分で〝ライム〟と名乗っているだけという。
いつも一緒に行動している。
片方しか出てこないといったことはない。
ちなみに1次試験のとき、見学者を守ったのもタイム・ライムだ。
「なにも居ないよ。草木も動くものも、なぁんにも無い。寂しいを通り越して、少し怖いかな」
「こっちもーなにも居ないよー。草木もー動くものもー、なぁんにも無いー。寂しいを通り越してー、少し怖いかなー」
「そうか、分かった」
「ほう、僕は不思議に思うよ。タイム君は平気なのだね」
「なにがですか?」
「それはだね、僕の知っている話だと、妖精族は魔素が少なくなったから、妖精界に還ったと聞いている。だから妖精であるタイム君が、この薄魔素の中、元気に飛び回れるのが不思議でならないのだよ」
「な、なるほど」
それは盲点だったな。
そういえば、そんな話を聞いたことがあった。
やはりタイムが妖精という設定は、無理があるのか。
いや、今更変更もできない。
「タイムは小さいから、平気なんですよ」
「確か、僕の聞いた話では、タイム君は試験の時、大きかったと聞いているのだが?」
「大きかった?」
しまった。
大きさの話はダメだった。
タイムが大きかったことが、時子の耳に入ってしまった。
なんとか誤魔化さないと、時子にバレてしまう。
「それは、えーと……その」
「試験で頑張りすぎたから、もう無理だよ」
俺が返答に困っていると、タイムが代わりに答えはじめた。
「そうなんですか、僕は残念に思うよ。もうあの力は見られないのですね」
「それは……マスターと時子次第かな」
「なんで時子が関係あるの?!」
「時子がもっとマスターとベタベタしてくれれば、タイムは活躍できるんだよ」
「またそれなの?!」
本当にタイムは懲りないな。
「ほほう、僕はとても興味深いのだよ。トキコ君にそのような力があるのだね。期待してもいいのかな」
「しないでくださいっ」
「ふむ、僕は気にしないから、存分にベタベタしてくれたまえ。許可しよう」
「そんな許可要りませんっ」
「時子、照れなくていいのよ」
「照れてるんじゃありませんっ」
時子、嫌がりすぎだろ。
でも、なんかいい具合に話題が逸れたかも。
「なら、ボクがベタベタするよ」
アニカ、お前は黙ってろ。
「ご主人様がベタベタしても、意味ないでしょっ」
お、時子が的確なツッコミをしているぞ。
「なんだ時子、焼き餅か?」
「違いますっ。もう」
呆れたのか、時子が背中に寄りかかってくる。
その気が無いのに、周りに囃し立てられたらやっていられないだろう。
そういう俺も、囃し立てた1人なんだけど。
そう思っていると、俺の腹に回していた手に力が込められた。
「フブキ、もう少し揺れないように歩けるか?」
「わふ?」
「時子が落ちそうなんだ」
「わうっ!」
「ふえ? 時子は大丈夫だよ」
「ん? だってさっきよりギュッて抱き付いているだろ」
「だからモナカはバカなのよ」
「なんでだよっ」
酷い風評被害だ。
理不尽なバカ呼ばわりは止めてほしい。
「わふんっ!」
「きゃっ」
「あ、こら。フブキ、なにやっているんだよ」
突然フブキが跳ね回るように歩き出した。
「時子が落ちちゃうよ」
「フブキ、その調子なのよ」
「エイル?!」
なに意味不明な応援してんの。
時子が落ちちゃうよ。
「やっ」
振り落とされないように、時子が更に強く抱き付いてきた。
ロデオやってる場合じゃないだろ。
「フブキ、止めなさい! 怒るよ」
「わうぅ!」
「はぅ!」
フブキは激しく動かなくなったが、それでも先ほどより揺れるように歩いているように感じる。
時子の腕に込められた力が弱くならない。
ギュッとしがみつき、身体を密着させてくる。
「フブキ」
「わふん」
フブキをやんわりと窘める。
それでも大人しく歩いてくれない。
「大丈夫?」
「うん、なんとか」
「フブキの奴、どうしたんだろ」
「モナカはフブキに感謝するのよ」
「なんでだよっ」
皆さんはフブキが暴れ馬な理由、分かりますよね
次回は拠点設営です




