表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/233

第67話 言えない? 言いたくない?

 24時間、時子と一緒に居る。

 ただ一緒に居るのではない。

 それは手を繋いで24時間過ごすことを意味している。

 一体なんの縛りプレイだ。

 難易度が高すぎる。

 手を繋いで過ごす物語はいくつか知っている。

 それを自分がやることになるとは、思っていなかったけどね。


「……ホントに?」

「タイムを疑うの?」

「お姉ちゃんだから、疑うんじゃない」

「ぷぅー。少しは信じなさいっ。それにさっきいっぱい使ったから、カラカラなんだよっ」


 タイムの言うとおり、さっき沢山使ったのは事実だろう。

 だから普段なら食事中は手を離しているが、今は指を絡めて繋いでいる。

 そういう意味でも、パン食はありがたい。

 箸を左手で使うとか、無理だ。


「タイム、今どのくらい残っているんだ?」

「半分もないよ」

「この繋ぎ方で満タン、いや8割までどのくらいだ?」

「結構掛かるよ」


 やっぱりそうやって、曖昧に誤魔化すのか。

 時子がタイムを信用できないというのも、頷ける。


「だからアニカさんはエイルさんと一緒の部屋ね」

「えっ?」


 必然とそうなることなのに、アニカは驚いているようだ。

 悪いな。

 さすがに3人では無理だ。


「マスターは、時子と一緒の部屋だからね」

「わかったのよ」

「仕方ないな」

「仕方なくないよっ。またなの?」


 〝また〟……か。

 タイムが〝今日だけ〟と言って、一緒に寝てくれた。

 だから〝また〟なのか。


「そんなに俺とは嫌か?」

「嫌とかじゃなくて……」

「だったら」

「それに2段ベッドなんでしょ。別々に寝るから意味ないよね」


 言われてみれば、その通りだ。

 とはいえ、隣の部屋より近い分、非接触充電効率が良いだろう。


「そんなことないよ。狭い分、より密着度が上がるから、充電効率が上がるよ」


 え、上下に分かれて寝るんじゃなくて、一緒に寝るのか?!


「なんでこんな狭いところで、一緒に寝なきゃなんないの?!」

「運命?」

「モナカくんとそんな運命は無いよっ」

「時子がモナカと同じ部屋なのよ、決定事項なのよ」

「エイルさんまで……」

「母さんから聞いたのよ」


 トレイシーさん、なにしでかしてるんですかっ。


「ふへっ? な、なにを?」

「うちならいいのよ。ここは中央省なのよ。あまりうるさくしないのよ」


 まるで家ではうるさくしていた、みたいな言い方だな。

 あー、確かに朝方ちょっと揉めてうるさかったな。

 あれは良くなかった。


「うるさくってなんですかっ?!」

「……うちにそれを説明させるのよ?」

「なんの問題もないと思いますけどっ」

「嬌声を上げるのよ、控えるのよ」

「嬌声?! ってなに?」


 エイルは時子をジッと見つめ、時子もエイルを見つめ返した。


「はぁ。喘ぎ声は押さえるのよ」

「そうなの?!」

「そんな声上げてませんっ。モナカくんも信じないっ」

「どっちでもいいのよ」

「よくないよっ」

「モナカ」

「ん?」

「あまり激しくするのは止めるのよ」

「はぁ」


 〝激しく〟って……なにを?


「エイルさん、誤解ですっ。誤解してますっ! 時子はモナカくんとなにも無いよっ。モナカくんも否定してっ」

「いや、なにを否定すればいいのか分からないよ」


 なにしろ全く覚えていないからな。


「だから時子が……その、えっと。とにかく否定してっ」

「えー」

「〝えー〟じゃないっ! もう充電してあげないよっ」

「やましいことはなにもしていません。朝までベッドで二人っきりで一緒に寝ていただけです。それはもうぐっすりと」

「そ……うだよっ。一緒に寝てただけで、変なことはしてないよっ」


 あれ?

 何で俺、時子に睨まれているの?

 言い方もなんか……怒ってる?

 ちゃんと否定したよな。


「寝不足になるほどのよ、ぐっすり寝たのよ?」

「そうですっ」


 いやそれはおかしいだろ。

 だが時子は力強く肯定している。

 ならなにも言わないでおこう。


「……そういうことにしておくのよ」

「もう、いいから食べようよ。また冷めちゃうよ」

「〝また〟のよ?」

「気にしないのっ」


 とはいえ、そんなに量があるわけでもないので、もうほぼ残っていない。

 味は不味くはない、という程度。

 腹を満たせればいいというか、食べられるだけありがたいといったところか。

 それを考えると、美味いのかも知れない。


「ほら時子、マスターが十分食べられなかった分、もっとくっついて」

「なんでよっ」

「タイム。時子が嫌がっているんだから、あんまり強要するなよ。手を繋いでくれるだけ、ありがたいんだし」

「この先食事がいつもこんななんだからね。そんな緩いこと言ってると、いざって時に無くなっちゃうよっ。今回だって、ギリギリだったんだからっ」


 確かに四盾結界(しじゅんけっかい)の防御力は完璧だと思うが、それ故に消費電力もデカい。

 またあんなことになれば四の五の言っては居られないだろう。

 しかしあんな至近距離で集中砲火を浴びるような機会に、また巡り会うようなことがあるだろうか。


「なら、タイムが今の充電効率を正直に教えてくれたら、考えなくもない」

「結構掛かるって言ってるじゃん!」

「なら、8割までの予想充電時間は?」


 タイムは黙ったまま、なにも答えてくれない。


「それも言えないなら、夜はアニカと寝る」

「それはっ!」

「ホントかい? それは嬉し――」

「アニカ、ちょっと黙ってろ」

「うう、ゴメンよ」

「な、タイム。言えないんだろ。時子、そういうわけだから、悪いけどエイルと寝てくれ」

「う……うん。ごめんね、ありがとう」

「気にするなって。時子が望んでくれたら、いつでもアニカと代わっていいんだぞ」

「モナカくん?!」

「代わりませんっ」

「それでいいな、タイム」


 タイムは肯定も否定もせず、ただ(うつむ)くだけだった。


「あと、タイムも一緒に寝るんだぞ」

「え? タイムはエイルさんと――」

「アホっ。タイムが居なかったら、誰が俺の貞操をアニカから守るんだよ」

「モナカくん?!」

「あ……そうだね。時子のためにも……守らないとね」

「要らないよっ」

「ボクはモナカくんの貞操を奪ったりしないよ! むしろモナカ君がボクの貞操を奪っておくれよっ」


 アニカ、なに言ってるんだ。

 最近おかしいぞ。


「お断りだっ。そもそも男の貞操を奪う趣味はないっ」

「ああん、モナカ君のいけず」


 一緒にシャワーを浴び始めてから、アニカの態度がおかしい。

 言動が微妙に女の子っぽくなっているんだ。

 だからあえて俺は〝男〟を強調するようになった。


「……やっぱりあの御者と精霊のよ、同じなのよ」

「一緒にするなっ」

「違いますっ」


 勘弁してください。

2022/04/17

第68話は非公開になりました


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ