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第66話 普段通り

「それにしても、僕は感心するよ。話には聞いていたけど、ここまで凄いとは思わなかったよ」


 通路を移動しながら、レイモンドさんが話し掛けてきた。


「なにがですか?」

「勿論、僕はあの結界のことを言っているのだよ。中央省でもあれほど強力な小型の結界を張ることはできない。あの力は是非とも欲しいところなのだよ」

「タイムは俺のものですっ。誰にも渡しません!」


 肩に乗っているタイムを、レイモンドさんから守るように手で壁を作る。

 今すぐ何かしてくることはないだろうけれど、反射的に動いてしまった。


「マスター……」

「そうだね、僕も分かっているよ。だからモナカ君も一緒にどうだい?」

「結構ですっ!」

「おやおや、僕は振られてしまったよ」


 通路を進んでいると、時々人とすれ違う。

 その全ての人がレイモンドさんに道を譲り、敬礼をしている。

 レイモンドさんは特に気にする様子もなく、通路を進んでいく。

 俺は一応頭を軽く下げておく。

 が、全く気にする様子もなく、俺たちが通り過ぎるまでピクリとも動かない。

 階段を(あが)って更に進むと、誰ともすれ違わなくなった。

 通路の両側に、番号が書かれた扉が並んでいる。


「いいかい、僕は部屋を教えるよ。ここと、反対側のここを使うように」


 右が〝5〟で、左が〝10〟だ。


「他の部屋は入れないからね。間違って入ろうとしても入れはしないけれど、何度も繰り返していると、先ほどの連中が飛んでくるから、気をつけるように」

「分かったか、アニカ」

「なんでボクにだけ言うんだい?」

「アニカが一番やらかしそうだからだよ」

「そんなことないよっ。モナカくんこそ勝手に出入りしないでよ」

「分かってるよ。頼りにしてるからな」

「うん、任せて」


 2部屋(ふたへや)用意してくれたのはよかった。

 1部屋(ひとへや)で寝泊まりさせられるのは、勘弁して欲しい。

 ……考えてみると、俺はエイルともアニカとも時子とも一緒に寝ているのか。

 まさか時子とも一緒に寝ることになるとは思わなかった。

 しかし結界の外へ行くとなると、そうも言っていられない。

 今のうちに慣れておくのも、いいだろう。

 あまり広い部屋ではないが、エイルの部屋よりは広い。

 2段ベッドと机が2つにクローゼットが2つ。

 2人部屋ということか。

 トイレとシャワーまで付いているぞ。


「それでは、僕はここから別行動だ。君たちは省員食堂をまだ使えないから、食事を持ってこさせるよ。それまでくつろいでおくれ。なにかあったら、遠慮せず連絡するのだよ。一応僕はこの隣の部屋を使うことになっている。そこに尋ねてきてもいい」


 〝4〟と書かれた扉が、レイモンドさんの部屋らしい。

 レイモンドさんが立ち去ると、緊張がほぐれて尿意が湧いてきた。

 早速部屋にあるトイレを使うとしよう。

 トイレなら入出管理なんてないだろうから、俺が開けて出入りしても問題ないだろう。


「トイレ行ってくる」

「あ、うん」


 時子の手を離し、トイレの扉の前に立つ。

 そういえば、時子と手を繋ぐようになってからは、必ず手を洗うようになった。

 それまではエイルに〝手を洗うのよ〟とよく言われてたっけ。

 アニカは同じ男だからか、あまり気にしていないようだ。


「……」

「モナカくん、トイレに行きたいのかい?」

「そうなんだが、身分証をタッチするところがないんだ」

「ふふっ、なに言ってるんだい。トイレまで入出を管理してるわけないよ」

「分かってるよ」

「ほら、開けるから入ろう」


 結局、トイレも普段と変わらずアニカの世話になることになってしまった。

 考えてみれば、水を流すのにも魔力が要る。

 試しに仮身分証で水を流そうとしたが、無理だった。

 アニカ、笑うなっ。


 扉をノックする音がした。

 食事の用意ができたようだ。


「入っていいのよ」


 扉が開くと、食事を台車に乗せてきた省員が入ってきた。

 1人分が皿に盛られている。

 給食とか、病院食のような感じがする。

 丸パンが1つとスープにソーセージが1本、肉無し野菜炒め少々というメニューだ。

 囚人食の方が近いか? いや知らんけど。

 いきなりトレイシーさんのご飯が恋しくなってきた。


「これだけなんですか?」

「すみません。ここではこれでも他よりは多いんです。我慢してください」

「そうですか。ありがとうございます」


 まさかここまで酷いとは思わなかった。

 そういえば、あまり食べているような身体つきには見えない。

 一応食糧も持ってきてはいるが、ここで食べるわけにもいかない。


「食べ終わりましたら、皿を台車に乗せて廊下に出しておいてください」

「分かったのよ」

「モナカくん、足りる?」

「正直、足りないな」


 中央省とはいえ、贅沢はできないということか。

 普段どれだけ潤沢に食べていたかが思い知らされる。

 とはいえ、俺にとっては死活問題。

 さて、どうしたものか。


「時子の分も食べる?」

「ありがとう。でもそれは時子が食べて」

「そうだよ。時子はマスターが食べられない分、たっぷり充電させてもらわないとね」

「それって……」

「もしかしなくても、24時間ずっとだよ」


 またタイムは無茶振りを……

次回、トレイシーさんのやらかしに時子が苦悩します

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