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第6話 ポリゴンではなくドット絵

再び変態火球(ファイヤーボール)の登場です

 魔法名入力欄(キャストウインドウ)には10文字まで入力ができると取説には書いてある。

 だが実際には、4文字までしか入れられないらしい。

 なにか制限があるのだろうか。

 しかしそんなことは特に書いていない。

 取説には書いていない裏設定でもあるのだろうか。

 俺が持ち主という訳ではないから、分からない。


「時子さん、俺がやってみてもいいかな」

「うん、いいよ」


 時子さんから携帯(ケータイ)を受け取る。

 魔法名入力欄(キャストウインドウ)には〝ファイヤー〟と入力されていた。

 なるほど。

 〝ぼーる〟と入力・片仮名変換・確定をしても、反映されないな……ん?


「え、日本語入力?」

「ん? どうかしたの?」


 いやいや、ちょっと待てよ。

 入力欄には〝ファイヤー〟が入力されている。

 全角で5文字だから、半角計算だと10文字になる。

 更に言えば、〝ファイヤーボール〟は全角で8文字。

 それに対し、〝fireball(ファイヤーボール)〟は半角で8文字。

 同じ8文字でも全く意味が違う。

 だから会話が噛み合わなかったのか。

 納得である。


「時子さん、日本語入力じゃなくて、英字入力だよ」

「英字入力?」

「うん。だから噛み合ってなかったんだよ」

「へー……英字、入力……?」


 入力された文字を削除し、英字入力モードにしてから〝fireball〟と入力する。

 携帯(スマホ)のフリック入力に慣れてしまうと、携帯(ケータイ)トグル入力(猿打ち)が面倒くさくなる。

 それでもなんとか終わらせると、ふん縛られているオオネズミに狙いを……狙い?

 狙いってどうやって付けるんだろう。

 とりあえず携帯(ケータイ)をオオネズミに向かって構え、[送信]を押してみる。

 ……ん?

 なにも起こらない?

 魔法名入力欄(キャストウインドウ)の入力文字が消えただけで、画面に変化はない。

 故障か?

 それとも俺だからか?

 試しに〝fireball〟とだけ入力して、時子さんに渡す。


「とりあえずこれでオオネズミに向かって使ってみて」

「あ、うん。分かった。……英字」

「ん?」

「ううん、なんでもない。えっと、[送信]っと」


 時子さんはオオネズミに向かわず、受け取ったままで[送信]したらしい。


「ちょっ!」


 ……が、なにも起こらない。


「えっと……ダウンロードに時間が掛かるみたい」

「と、とにかく、携帯(ケータイ)をオオネズミに向けて!」

「あ、うん。そうだね」


 オオネズミに向けた途端、赤い火の玉のドット絵がネズミに向かって飛んでいった。

 もしあのままだったらどうなっていたことか。

 なんにしても、携帯(ケータイ)は時子さんにしか使えないことが分かった。

 火の玉はネズミに当たると、メラメラと燃え盛った。

 そのアニメーションも、二枚の絵を交互に表示しているだけに見える。

 ……だけならまだマシなのだが、効果音まであるぞ。

 それも完全に、所謂(いわゆる)ピコピコ音という奴だ。


「なんか、レトロゲームみたいな火の玉が飛んでいったね」

「……そうだね」


 火の玉は、リアリティのある見た目をしておらず、一目でCGコンピューターグラフィックスだと分かった。


「〝light(ライト)〟のときもそうだったけど、ドット絵だね」

「……ドット絵だね」


 タイムのアイコンもドット絵といえばそうなのだが、あれはわざとドット絵感を出しているに過ぎない。

 それと比べても、何倍も荒いドット絵だった。

 色数も少なそうだ。


「動きもカクカクだね」

「……カクカクだね」


 移動もなめらかではなく、将棋の歩のように、1マスずつ移動していた。

 マスとマスの間の中間がないのだ。


「音も変だね」

「……お父さんが〝懐かしい〟って遊んでたゲームの音に似てるね」


 携帯(スマホ)ではなく携帯(ケータイ)だから、表示性能や音楽性能が低い、と。

 え、そういう問題?


「これがモナカの世界の科学なのよ?」

「そんな訳ないだろ」

「ならなんなのよ」

「俺が知るかっ」


 見た目はあれだが、効果はてきめんだ。

 どうやら火球(ファイヤーボール)一発で、オオネズミは息絶えたようだ。

 辺りに肉の焼ける匂いが立ちこめる。

 あー、あれだと毛皮は使い物にならなさそうだな。

 火球(ファイヤーボール)は攻撃力こそ高いが、狩りには向かないかも知れない。


「えっと、これで倒せたの?」

「そうみたいだけど、これだと狩りにならないな」

「どうして?」

「狩りなんだから、毛皮とか肉とかが取れないとダメだろ」

「あ、そっか。……肉?」

「オオネズミは捨てるところがないんだ。肉は食料になるぞ」

「え、ネズミなんか食べるの?」


 ……あ、しまった。

 考えてみると、日本ではネズミ肉なんて食用として出回っていない。

 当然時子さんは食べたことがないだろうし、俺もそんな記憶は残っていない。

 衛生的に考えても、進んで食べようとは思わない食材だろう。


「なに言ってるのよ。時子はもう食べてるのよ」

「え?!」

「エイル! それは――」

「隠しても仕方がないのよ。今朝もお昼のよ、時子は沢山食べてるのよ」

「……嘘」

「あー、こっちだと豚肉感覚で食べられている、一般的な食材だ。黙ってて悪かったな」


 それを聞いた時子さんは、その場で気を失ってしまった。


「時子!」


 倒れる前に時子さんを抱き留めた。

 そこまでショックだったのか。

 俺も最初聞かされたときはビックリしたが、そこまでではなかった。

 こうなっては、狩りどころではない。

 今日は中止にして下山するしかないだろう。

 しかし問題がある。

 オオネズミが未だに燃えているということだ。

 エイルが単発式詠唱銃(カートリッジガン)水球(ウォーターボール)を当てても、火が消える様子はない。


「どういうことなのよ」

「さあな」


 アニカが精霊に消すようお願いしたが、アニカ相手に水遊びをしているだけだった。

 この寒い中、よくやる。


「かけるのはボクにじゃないよー」

「なにをやってるのよ」

「さあな」


 ふと、時子さんが落とした携帯(ケータイ)が目に入る。

 その画面には、オオネズミを覆っている炎と同じものが表示されていた。

 そういえば、取説に〝魔法は携帯(ケータイ)を開いているときしか使えません〟という注意事項があったな。

 もしかして……


「エイル。そこに落ちている時子さんの携帯(ケータイ)を閉じてくれないか」

「わかったのよ」


 エイルが携帯(ケータイ)を拾って閉じると、オオネズミの火が消えた。

 どうやら当たりのようだ。

 とはいえ、時既に遅し。

 オオネズミは炭と化していた。

 仕方がないのでフブキに穴を掘ってもらい、そこにオオネズミを入れて埋めた。

 狩りに使う魔法を探さないとな。


 時子さんを背負い、下山をする。

 駐車場まで戻ってきたので、ベンチに寝かせた。

 時子さんを背負ったままフブキに乗って帰宅するのは危ないから、目を覚ますまで待つことにした。


「マスター、時子さんの手を握ってなきゃダメだよ」

「え? ああ、充電しないとな」

「そうじゃなくて、こういうときは手を握っててあげた方が安心するんだよ」

「ん? そうなのか?」

「そうなんだよ」


 ふむ、それで早く目を覚ましてくれるのなら、そうしていた方がいいだろう。

 タイムもギュッとされると安心できるって言ってたしな。

 時子さんが目を覚ますまで、手を握っていよう。

 ……その間、俺はずっと地面に座っていなければならないのか。

ポリゴンとドット絵の違いが分からない人への説明が難しい

というか、今読み返してみると、ポリゴンの説明が全くないなw

ドット絵以上に説明が難しくないか?

……なので次回はエイルは激怒した

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