番外編1 旅路の果てに(四月バカ)
日付が変わったので、タイトル変更しました
あと、少しだけ加筆・修正をしています
初めて乗った、異世界の魔列車。
否が応でも期待が高まる。
窓から見える風景は、とても異世界とは思えない町並みが続いている。
結局、科学だろうと魔学だろうと、発展して辿り着く先の光景に、大きな差は無いということか。
高層ビルというほどではないが、高い建物も建っている。
マンションだろうか。
送電線のようなものも見える。
あれで魔力を送っているのか?
「あれ?」
通路を移動していた、1人の乗客が足を止めた。
なんだ?
エイルかアニカの知り合いか、それともレイモンドさん?
そう思ったが、その乗客の男は、時子を見ているようだ。
「もしかして……時ちゃん?」
「え……先輩?」
今、なんて言った?
先輩?
と思った瞬間、時子は繋いでいた手を離した。
「やっぱり時ちゃんだ。こんなところでなにしてるの?」
「〝なにしてるの〟、じゃないよっ。先輩こそ、何処行ってたの?」
やっぱり聞き間違いじゃない。
この人が、時子の先輩?
「一緒にいてくれるって、約束だったんじゃないの?」
「ごめんごめん。それが管理者が転移先を間違えてさ。違う都市に居たんだ」
「メールだって、毎日送ったんだよ」
「バッテリー切れで使えなくなったんだよ。ほら」
画面が消えている携帯を、時子に見せる。
先輩が電源ボタンを押してみせても、画面は点かない。
「そうなんだ」
時子がその携帯に触れると、充電ランプが点いた。
「え、なに?」
「時ちゃん、充電できるの?」
「う、うん。なんか、そうみたい」
そう言って、チラッと俺を見た。
時子は俺を充電できる。
だから携帯も充電できるってことか。
逆に、どうして先輩は充電が出来ないのだろう。
俺だって充電できるというのに。
……あれ?
携帯がない?
「あ、ごめん。自己紹介がまだだったね。俺の名前はトゥルー・ナーリだ。よろしく」
日本人離れした名前だ。
そういえば、時子は先輩なら必ず偽名を使うと言っていた。
ならば、これも偽名なのだろう。
「えっと、俺はモナカです。名字はありません。時子……さんには、お世話になっています」
「うちはエイル・ターナーなのよ」
「お? ターナー家の人かい? もしかして、親戚にデニスってのは居る?」
「! 父さんを知ってるのよ?」
「へぇ、お父さんなんだ。あいつ、娘が居るなんて一言も……デニスは異世界に流れ着いた俺を助けてくれた奴なんだ。奇遇だね」
「ど、何処に居るのよっ!」
「この2つ前の車両に居るよ」
聞くや否や、エイルは飛び出して行ってしまった。
偶然とは、恐ろしい。
「それで、そちらのお嬢さんは?」
「あ、ボクはアニカ・ルゲンツ・ダン・ロックハートといいます」
「ん? 両目が召喚眼……ということは、君があのオルバーディング家のアニカ嬢?」
「あ、はい。ご存じでしたか」
「有名だからね。オルバーディング家の食客だったキャロルさんが、いつも息子自慢をしててね。もう耳タコなんだ」
「え……キャロル?」
「ああ、そういえば、彼女もロックハートを名乗っていたっけ。偶然だね。彼女の精霊召喚には、いつも助けられているよ」
「ど、どういうことですか?」
「今は3人で一緒に旅をしているのさ。俺は時子を探すため。今見つけたけどさ。デニスさんは、世界がこうなった元凶を見つけるため。キャロルさんは息子を探すため。なんかこっちに転生しているらしいんだ」
「それでは、キャロル……さんもここに?」
「ああ、デニスと一緒に居るよ」
それを聞くと、今度はアニカが掛けだしていった。
キャロル……
そういえば、イフリータがそんな名前を呼んでいたような気がする。
アニカが転生する前の、お母さん……だったっけ。
2度と会えないと思っていただけに、嬉しさもひとしおだろう。
「え?」
先輩が時子に手を伸ばす。
この手を取って、共に行こうとでもいうのだろう。
俺は、時子なら迷うことなく手を取ると思っていた。
なのに時子の視線は、俺の顔と先輩の顔を行ったり来たりしている。
「どうしたの?」
「だって、時子が居なくなったら、モナカくんは……」
「なんとかなるさ。大丈夫だから」
「でも……、だったら一緒に行こうよ。先輩、いいでしょ?」
「ああ、構わないよ。一緒に行こう」
「ほら。ね、モナカくん」
「いや、そういうわけには……」
先輩に聞こえないよう、時子に耳打ちをする。
「先輩の前で、俺とずっと手を握っているつもりか?」
「あ……訳を話せば、先輩なら許してくれるよ」
ならなんで手を離したんだ?
「俺が嫌なんだよ。だから、気にしないでくれ。それに、俺にはタイムが居るし」
「タイム?」
「ああ。タイムが居れば、なんとかなるさ」
「タイムって、誰?」
「……は?」
なにを言っているんだ?
今まで一緒に居たじゃないか。
「いや、ほら、時子……さんのお姉さんのタイムだよ」
「え? 時子のお姉ちゃん?」
「そうだよ、寝ぼけてるの? そういえば、寝不足だったね。ははっ」
「なに言ってるの? 時子のお姉ちゃんは〝タイム〟なんて名前じゃないよ」
「……え?」
どういうことだ?
なにかがおかしい。
「マスター、どうしたの?」
隣の車両から、1人の女性が歩いてきた。
その姿は、時子と瓜二つでまったく区別が……つくな。
時子の胸元には、綺麗な双丘が存在している。
しかし、現れた女性は大平原が広がっていた。
というか、タイムじゃないか?
でも変だ。
時子の前では、いつも3頭身でいるのに、7頭身になっている。
「タイム?」
「ん? マスター、こちらの方は?」
「え?」
「ああ、この人は時子を保護してくれていた、モナカさんだよ」
どうしてタイムはトゥルーさんのことを、マスターと呼ぶんだ?
まさか、俺の前のマスターっていうのが……
「そうなんだ。……って、時子?!」
「あ、お姉ちゃん!」
「〝あ、お姉ちゃん〟、じゃないよ。何処行ってたの?」
「あはは、お姉ちゃんこそ、こっちに来てたの?」
「当たり前でしょ。クロノはマスターと共にある存在なんだから」
「クロノ?」
タイム、じゃない?
「あ、自己紹介が遅れました。初めまして。クロノは、クロノ・ラットと申します。以後、お見知りおきを」
クロノと名乗った女性は、タイムと全く同じ挨拶の仕方を、俺にしてくる。
「クロノ・ラット? RATSのA.I.?」
「モナカさんはRATSを知ってるんですね」
「ああ、だってタイムもRATSだから……」
RATSのA.I.……
つまりタイムとは別人ってことなのか。
RATSの3Dモデルは、全て時子から取っているとでもいうのか。
「えっ、それじゃあそのタイムさんは、クロノと姉妹ですね。タイムさんはどちらに?」
「いや、だから……」
「ん?」
「モナカさんは、クロノをタイムさんと見間違えたらしい」
「いや、見間違えてなんか……え?」
「へー、タイムさんはクロノにソックリなんですね。てことは、時子ともソックリってことだよね」
「そうだね。えっと、時子の妹?」
「お父さんの隠し子だったりして。ふふっ」
「それ、笑えないよー」
「あはは。あ、マスター、デニスが呼んでるよ。娘が現れたってアタフタしてる」
娘……エイルのことか。
本当にお父さんだったんだな。
見つかって良かった。
「知ってるよ。モナカさんと一緒に旅をしていた子だ」
「え、なんか凄い偶然だね。一緒に来ますか?」
「あ、いや。俺はタイムを……」
「そっか、そうですよね。クロノの姉妹によろしく言っておいてください」
「ほら。時子、行こうよ」
「あ、うん。モナカくん……」
「気にしないで。縁があったら、また会おう」
「……ゴメンね。今までありがとう。またね」
「失礼します」
「さようなら!」
突然の別れ。
いきなり独りぼっちになってしまった。
「はは。なんか急に寂しくなってしまいましたね」
これだけのことに、一言も口を挟んでこなかったレイモンドさんに話を振ってみる。
「レイモンドさん?」
通路の反対側に座っているはずのレイモンドさんは、何処にも居なかった。
トイレか? とも思ったが、荷物もなくなっている。
まるで最初からそこには誰もいなかったかのように。
正真正銘、独りになってしまった。
タイム、何処に行ったんだよ。
『タイムっ!』
いつものように呼びかけてみたが、返事がない。
このまま朽ちてしまうのかな。
それもいいか。
タイムが居ない。
時子も居ない。
エイルも、アニカも、フブキも、誰も居ない。
座席に寄り掛かって、天井を見上げる。
蛍光灯がパチパチと瞬いている。
この蛍光灯が消えたとき、俺のバッテリーも切れるのかな。
そんな馬鹿なことを思いつつ、目を閉じる。
もう、なにも考えたくない。
もう、なにもしたくない。
タイム……何処に行っちまったんだよ。
俺を見切ったりしないって言ったのは、嘘だったのかよ。
なあ、答えてくれ。
「タイム……うっ」
「どうしたの?」
はっとして声のした方を見る。
そこには、タイムの姿があった。
「タイムっ!」
よかった。
タイムはここに居る。
俺は独りじゃないんだ。
「なっ、ホントにどうしたの、クーヤ?」
「タイムっ。よかった。タイムまで居なくなったら、俺は……俺は……」
感極まった俺は、タイムに抱き付いた。
もう離さない。
離してなるものか。
「ちょっ、痛いよクーヤ」
「あ、ごめん」
「ね、クーヤ」
「ん?」
〝クーヤ〟?
タイムが俺のことを〝マスター〟ではなく、〝クーヤ〟って呼んだのか?
「タイムって、誰?」
「……えっ?」
「浮気? 浮気なの? 何処の女とクロノを間違えてるの?」
「えっ、〝クロノ〟?」
どういうことだ?
そもそもどうして7頭身なんだ?
それにこの胸元の脂肪の塊は一体……
「ちょっと、クロノの名前まで忘れちゃったの?」
「いや、だってクロノさんは先輩のサポーターで、時子のお姉さんで……」
「なに、その先輩って。それに時子? まだ新しい女がいるの?」
「なに言ってるんだ……だってお前は……」
タイムは俺のことを〝クーヤ〟とは呼ばない。
いついかなるときでも、〝マスター〟と呼ぶ。
それにこの脂肪の塊。
ということは……
「どうやら、クーヤにはお仕置きが必要みたいだね」
「お仕置きって……あれ?」
列車の座席に座っていたはずなのに、肘掛けの付いている椅子に座らされている。
そしていつの間にか手と足が、椅子に縛り付けられていた。
身動きが取れない。
タイムは……いやクロノは背中を見せると、テーブルでなにかを弄っている。
カチャカチャと、金属音がしている。
「ふふっ。どれでお仕置きしようかな……よし、これにしようっと」
振り返ったクロノが持っていた物は、ペンチだった。
ペンチでお仕置き?
あれでつねられたら、痛いじゃ済まないぞ。
「ごめん、クロノさん。ちょっと、寝ぼけてたみたいでさ」
「もう遅いよ。今更弁解なんてしても、遅いんだからね」
クロノはペンチをパチパチと鳴らすと、俺の指を肘掛けに押し付けた。
そしてペンチを開くと、指先を……爪を挟んだ。
「クロノさん、まさか……」
「どうして〝クロノ〟って呼んでくれない、のっ」
「ぐああああああっ、くっ」
激しい痛みと供に、指先から爪が無くなってしまった。
「痛い? ねぇクーヤ、痛い? でもクロノの心はもっと痛いんだ、よっ」
「ふぐぅ……うっ」
2枚目の爪が、指先から離れていった。
「あっはははは。タイムって誰? 時子って何者なの? 話してくれないと、爪が無くなっちゃう、よっ」
「がぁぁぁぁっ」
「ま、話しても無くなっちゃうかも知れないけ、どっ」
「うぐぅ……」
3枚目の爪が宙を舞い、4枚目の爪が地を這う。
「や、やめろ……やめて、くれ。うう……」
「あははははは、いひひひひひひ。ごめんなさいねぇ。これも躾だから。ふふっ。大丈夫、後でちゃあんと、愛してあ・げ・る。ふっふふふふ」
爪が無くなる前に、俺のSAN値が無くなりそうだ……
※エイプリルフールネタです
※本編とは全く関係ありません
※なので、矛盾点が沢山有ります
エイプリルフールネタなので、本気にしないでもらえると助かります
所謂、番外編です
明日は、本物の第60話を公開します




