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第58話 フブキとの別れ

 車道をのんびり走るフブキ。

 車道を走る限り、フブキは車両扱いだ。

 だから制限速度を守らなければならない。

 とはいえ、全力で走ったら、直ぐに疲れてしまう。

 のんびり走るのも、悪くない。

 フブキ以外に車道を走る獣は居ない。

 交通量もさほど多くない。

 車自体、少ないというのもある。

 個人で車が持てるほど、資源が豊富ではない。

 エイルのバイクも、所有者は工房で登録されている。

 公共交通機関も、いつまで続けられるか分からないらしい。

 それでも、俺たちが寿命を迎えるまではなんとかなるという。

 管理者もそんなことを言っていたな。


「タイム。〝お姉ちゃん〟って、どういうことだ?」

「あはは、えっとね……」


 タイムはバニシングツインで、生まれる前に死んだ時子の姉だという。


「……そうだったのか。それならそうと早く教えてくれればよかったのに。なんで黙ってたんだよ」

『だってウソだもん』

『……は?!』

『そう言えば、時子と姿がソックリなのを誤魔化せるでしょ』

『なるほど』

『だから、双子とかお姉ちゃんとかは、全部ウソだから。タイムと時子は、赤の他人だよ』

『……なあタイ――』

『他人だよ』


 それ以上はなにも話さない。

 そう言われた気がした。

 だから俺もそれ以上聞くのは止めた。

 もしなにかあるのなら、いつか話してくれるよな。


「黙ってたんじゃなくて、最近思い出したんだよ。時子がこっちに来なければ、忘れたままだったと思う」


 なるほど、そういう設定なのか。

 ならそれに乗っかっておくとしよう。


「そっか」


 空がだんだんと白んできた。

 朝日が眩しい。

 風防アプリの遮光モードをオンにする。

 サングラスのような色眼鏡と違い、視界をほぼ(さまた)げることなく日差しが和らぐ。

 目的地が目と鼻の先まで来ると、タイムはフブキに止まるよう指示した。

 フブキは路肩に寄って、その足を止めた。


「時子、着く前に着替えとこうか」

「そうだね。このままみんなに会うのは、ちょっと恥ずかしいかな」


 そんなに恥ずかしい格好なのか?

 テレビで見た女子陸上選手より、露出は少ないと思うけど。


「マスターはここで待ってて」

「ああ、分かった」


 タイムは時子を連れて、脇道に入っていった。

 脇道から光が一瞬だけ漏れた。

 2人が戻ってくると、時子はいつものセーラー服姿に戻っていた。


「マスター、お待たせ。それじゃ行こうか」

「あいよ」

「時子はこのまま歩いて行くね」

「乗らないの?」

「乗らないよっ。モナカくんのエッチ」

「なんでだよっ」

「なんでもっ」

「フブキさん、このまままっすぐ行けば、駅前に着くから。マスターをお願いね」

「わうっ」


 俺たちは車道を、タイムたちは歩道を行く。

 車道をのんびり歩くわけにも行かず、先に待ち合わせ場所に向かった。

 時子にはタイムが付いている。

 それにこの道を真っ直ぐ進むだけだから、迷子になる心配もない。

 駅前のバスターミナルに着くと、エイルたちの姿が見えた。

 たった半日だったけど、もの凄く久しぶりに会った気がする。


「お待たせ」

「お帰りなのよ」

「お帰り、モナカくん」

「お帰りなさい。僕はそう告げるよ」

「「「お帰り」」」「りー」

「ただいま」

「時子はどうしたのよ?」

「途中から降りて歩いてきてるぞ」

「エイルさん、ほら、スカートだから」


 スカートだと歩くのか?


「途中からのよ?」

「よく分からんが、最初は体操着だったぞ。で、途中で着替えて、それから歩いてきてる。あ、ほら」


 漸く時子の姿が見えてきた。

 普段通りのセーラー服姿だ。


「時子はどうして途中で着替えたのよ?」

「なんか、〝体操着のままみんなに会うのは恥ずかしい〟とか、言ってたな」

「そうなのよ?」

「モナカくん、どんな格好だったんだい?」

「どんな格好って、えっと上は――」

「言わなくていいっ」


 時子は駆け寄ってきて、俺の言葉を遮った。

 そこまで嫌なのか。


「というより、やっぱり見えてたんじゃないっ。モナカくんのウソつきっ」

「だってタイムが――」

「言い訳しないっ」

「う……ごめんなさい」

「もう。ただいま」

「お帰りなのよ」

「お帰りなさい、トキコさん」

「お帰りなさい。僕は再び告げるよ」

「「「お帰り」」」「りー」


 俺は時子に手を差し伸ばした。

 時子は、躊躇(ためら)いがちに俺の手を取った。

 あんなことがあったから、少し気まずいのだろうか。


「さてさて、僕は全員がそろったことを確認できたよ。これで(ようや)く出発ができるのだよ」

「電車に乗るんですか?」

「バカモナカ。電列車は物語の中の乗り物なのよ。魔車に乗るのよ」

「あ、そうか」


 電気を原動力に走るから電車だ。

 ならば魔力を原動力にするなら、魔列車ということか。

 魔列車に乗るべく、駅へと移動する。

 ここでも切符を買うこともなく、改札に身分証をかざすだけでサッと中に入ることができる。

 しかし、フブキは違った。


「モナカ君、僕と一緒にフブキ君を連れて付いてくるのだ」

「はい。何処に行くんですか?」

「そうだね、僕は説明するよ。フブキ君は貨物室に乗るのだよ」

「貨物室?!」

「そうだよ、僕は説明を続けるよ。大型の獣は、客室に乗せられないからね。だからその受付をしに行くのだよ」

「そうなんですか」

「そうなんだ、僕も可哀想だとは思うけれどね。規則だし、お互いのためでもあるんだ。フブキ君、我慢しておくれ」

「わうっ」


 レイモンドさんと一緒に、荷物受付に向かう。

 フブキを荷物扱いされるのは、気分的によくない。

 しかも首輪とリードを付けなければならない。

 まるで犬扱いだ……いや、犬なんだけどさ。

 ※狼です

 とはいえ、そうしないとフブキは連れて行けない。

 幸いなのは、貨物車両を丸々貸し切れたことだ。

 他の動物と一緒に乗せられないから、というのが理由らしい。

 だから狭いところに押し込められるといったことはない。

 結構な料金だとは思うが、レイモンドさんが全額出してくれるから、問題ない。

 これも経費だからだ。

 俺たちの乗車賃は最初の説明で考えると自腹になるのだが、魔列車の中で渡してくれるそうだ。


 フブキと別れ、エイルたちが待つ改札に戻る。

 今度は時子が手を差し伸ばして出迎えてくれた。

 さっきのは気のせいだった?

 でも顔はそっぽを向いている。

 仕方がないから繋いでやる、的な感じなのかな。

タイトル詐欺っぽいけど、事実だから仕方が無い

次回はいよいよ2章最終話、魔列車に乗り込みます


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