第47話 エイルとアニカに続く者
あきらめたら
やっと試合開始
ですよ……?
2022/04/17
第46話は非公開になりました
タイムがエイルの元に戻ってしまった。
いや、帰ってしまったと言った方がいいのかも知れない。
既にタイムにとって帰るべき場所は、エイルの元なのだ。
あれだけ良い雰囲気になったのにも関わらず、エイルの元へ行ったということは、そういうことなのだろう。
そうでなければ、ここにいてくれたはずだ。
やはりがっつきすぎたのが良くなかったのか。
「タイム、帰っちゃったの?」
時子さんとトレイシーさんが部屋から戻ってきたようだ。
「うん」
「なにやってんのよ。あんなにいい雰囲気だったのに」
「そう思ったんだけど……え?」
今なんて言った?
「全く、見てるこっちが恥ずかしくなっちゃったじゃない」
「見てるこっち?」
どういう意味だ……
「若いっていいわねぇ。おばさんも彼処まで情熱的なキスは、あの人としなかったわ」
「え?」
情熱的なキス?
いや、俺はタイムから口移しで……はっ。
確かに、見ようによってはそう見えなくもない。
だが断じて違うぞ。
あれはキスではないっ。
ないと言ってくれタイム。
「時子だって、先輩とあんなことしたことないよぉ」
そりゃそうだろう。
普通恋人同士でも、相手が噛み砕いた物を口移しで食べるなんて事はしないと思う。
「あら、2人してタイムちゃんに先を越されちゃいましたね」
「はうっ」
いや、そんなことにショックを受けられても、どう反応していいやら。
……時子さんは先輩に食べさせたいのか?
それとも食べさせてもらいたいのか?
どっちだろう。
どっちでもいいが、これはやはり見られていた……んだよな。
「あの……もしかして、見てました?」
「ふふっ。やっぱり気になるじゃないですか」
「時子は止めようって言ったんだよ?」
「でもおばさんより食い入るように見てたじゃない」
「言わないでーっ」
時子さんは両手で顔を隠しながら、頭を左右に振った。
でもそうか。
2人に見られていたということは、タイムが大きくなっていなくて正解ということだ。
トレイシーさんは知っているけれど、時子さんはタイムが大きくなれることを知らない。
そしてタイムは時子さんの前では、決して大きくならない。
GPUリソースが足りなくて、かえってよかったというものだ。
「もう」
時子さんは席に着くと、残っていたベーコンエッグに齧り付いた。
「あー、すっかり冷めちゃったな」
「何度もご飯の邪魔をして、ごめんな」
「あはは、いいのいいの気にしないで。十分お代は貰ったから」
「お代?」
「そ。全く、〝ごちそうさまでした〟っ」
〝ごちそうさま〟と言いながらも、残っているご飯を食べている。
んー?
「ふふ、そうね。モナカさん、〝ごちそうさまでした〟」
トレイシーさんまで?!
んー??
そして時子さんは全てを綺麗に平らげた。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした。それじゃトキコさん、おばさんとシャワー浴びましょうか」
「あ、はい。お願いします」
「モナカさんはその後ね」
「あ、はい……はい?」
トレイシーさんは食器を流しで水につけると、時子さんとシャワーを浴びに行ってしまった。
〝その後〟って……まさか、ね。
しかし、その〝まさか〟が現実になってしまった。
「モナカさーん、早くいらっしゃい」
時子さんはシャワーを終え、寝間着を着て食堂に戻ってきていた。
ところがトレイシーさんは脱衣所から俺を呼んでいる。
「いやいやいや、今日くらいシャワー浴びなくても平気ですよっ」
一体どうしてこうなった。
「エイルさんに〝よろしく〟って言われているの。それにちゃんと汚れは落とさないとダメですよ」
尚も脱衣所から俺に呼びかけてくる。
「多分そういう意味の〝よろしく〟じゃないと思いますっ」
「やっぱりエイルさんみたいな若い子の方がいいですよね。私みたいなおばさんは嫌ですよね」
「それは違います。断言します。そういうことではありません」
「よかった。じゃあ一緒にシャワーを浴びましょうか」
「……どうしてそうなるんですか」
「今嫌じゃないって言いましたよね」
「……え?」
言ったっけ?
「言いましたよね」
「え?」
いや、言ってないよな。
俺は〝違う〟って言っただけで、〝嫌じゃない〟とは……言ってないよな。
「やっぱりおばさんは嫌――」
「嫌じゃないですっ。問題ありませんっ」
「ふふっ、早く来てくださいね。おばさん、風邪引いちゃうわ」
「う……」
またこのパターンか。
トレイシーさんはこうやって誘導するんだよなー。
毎回引っかかる俺も俺だが。
「モナカくん、諦めよ? 多分一緒に入るまでずっとループすると思うよ」
「俺もそう思う」
「諦めが肝心だよ」
諦めないと埒が明かない、ということか。
諦め……られるのか?
「時子さんはいいのか? 俺がトレイシーさんとシャワーを浴びるの」
「えっと……今更?」
「〝今更〟?! なら時子さんは、トレイシーさんが〝3人で入りましょう〟って言ったらどうするんだよ。それも〝今更〟?」
「ふええ?! ……モナカくんのエッチ」
頬を染めてジッと見据えてくる。
「エッチじゃない」
「モナカさん、やっぱり――」
「今行きますっ入りますっよろしくお願いしますっ」
「はい、お願いされました」
まさかトレイシーさんにまで……待てよ。
いや、待てって。
シャワーだけって事はないよな。
つまり、トイレも?
災難はまだまだ続くってことか。
ということで、次回はトレイシーさんとシャワーを浴びます
トレイシーさんの次は、誰とシャワーを浴びるのでしょうか




