第4話 在るべき姿へ
2022/04/17
前半部分を書き換えました
ストーリーに影響はありません
今回ばかりは俺が全面的に悪い。
言っていいことと悪いことがある。
いくらフブキが絡んでいるからって、明らかに言い過ぎだ。
「タイムー!」
今までスマホの中に入ることはあっても、何処かへ行くなんてことは無かった。
俺から離れたかった……ってことだろう。
なにやってんだか。
離れられるわけがないだろうに。
「タイムー!」
聞こえているはずなのに、返事がない。
直接呼びかけた方がよかったか?
「タイムちゃん、居た?」
充電のために手を繋いでいる……というわけではないけど、そのまま探しに来てしまった。
今更離すわけにもいかないし、そのまま一緒に行動している。
「ああ、そこに居るよ。ま、足跡を追うだけだから、必ずその先に居るんだけどね」
「そうなんだ、ふふっ」
「もう少しゆっくり歩こうか?」
「大丈夫だよ」
タイムが居る場所まで、もう目と鼻の先だ。
まったく、心配させやがって。
逃げた癖に足跡は消さないんだからな。
タイムの居場所まで、最短で白線がARで表示されている。
これを追っていけば、見つけるのは簡単だ。
草木をかき分け、道なき道を歩いていく。
「痛っ」
「大丈夫? 待ってても良かったんだよ」
「ううん、時子も謝らないと」
「時子さんが謝るようなことはないよ」
「それでも。タイムちゃんのマスターを取るつもりは無いもの」
「取るって……」
「タイムちゃんは、時子にマスターを取られたく――」
「マスターをマスターって呼んでいいのは、タイムだけだよ」
「タイ……ム?」
あと少しというところで、タイムの方から姿を現してきた。
「時子さんは、ちゃんとマスターって……ああ、もう!」
「タイム?」
「なんでもないよ、マスター。時子さん、ごめんなさい!」
「ふえ?」
「意地悪してごめんなさい」
「あ、うん。別にいいよー。気にしてないし、あはは」
「ううん、それでも、ごめんなさい。マスターも、ごめんなさい。タイム、焼き餅さんでした」
「あ、いや。俺も言いすぎた。ごめん」
どういう風の吹き回しだ。
急に態度を改めて、何かあったのだろうか。
っていうか、泣いてないか?
「タイム? 何処か痛いのか?」
俺は両手でタイムを抱え上げた。
「あ、ダメだよマスター」
「え?」
そう言うと、タイムは俺の腕をすり抜けた。
そして俺の左手を掴んだ。
「手を離したら、ダメだよ」
本当にタイムはどうしたんだ?
俺が時子さんと手を繋いでいるのも嫌がっている風だったのに、今度は離したらダメ?
掴んだ俺の手を、時子さんの右手に誘導する。
「ほら」
「あ、ああ」
俺と時子さんが手を繋いだのを確認すると、俺の右肩に乗った。
気のせいだろうか。
そのときのタイムの顔が、寂しそうな表情に見えた。
「……そうかも知れないけど、これが一番いいんだよ」
「タイム?」
「なんでもないよ、マスター」
「……本来の形に戻すだけだよ」
どうやら、タイムはまた俺には聞こえない相手と話しているようだ。
なんでもないというが、耳元で内緒話は無理があるだろうに。
「……どうして? ……なら、1つお願いしてもいい? ……ケチ……ま、いいや。そのときが来たら、お願いね……それでいいよ」
お願い……
タイムの願い、か。
俺では叶えてやれないような願い事なのかな。
だとするなら、その願いが叶うように、俺も願っていることにしよう。
タイムが時子の為に身を退いてしまいました
果たしてモナカとタイムの恋の行方は?
モナカと時子でくっついてしまうのか
時子と先輩の将来は行方不明なのか
次回は勘違いあるある