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第32話 どれだけ離れようとも

 結界の中は、中央に中央省。

 その周りを12等分して都市が存在している。

 番号は時計と同じように振られている。

 つまり、第1都市から第12都市まで、右回りでぐるっと中央省を囲んでいる形になっている。

 今俺たちがいる場所は第10都市のクラスク。

 そしてこれから向かう場所は第2都市のヤルスウェ。

 そのヤルスウェになにかあったのだろうか。


「いいかい、僕はこれから君たちにヤルスウェの現状を教えてあげるから、よく聞くんだよ。ヤルスウェは既に住人の大半が他の都市に移住したのだよ」

「移住したのよ?!」

「うん、僕は説明を続けるよ。第3都市のツイングリンは既に人が住めないほど魔素が薄いんだ。その隣の第2都市と第4都市も薄魔素(はくまそ)化が進んでいるのだよ」


 薄魔素(はくまそ)ってなんだ?

 魔素が薄いって意味だよな。

 砂漠化が進んでいるみたいな感じだろうか。


「この辺りは大気中にまだ24%くらいあるけれど、第3都市は10%を切っているのだよ。第2都市は14%だから、生きていくのは相当(つら)いと思うよ」

「そんな話のよ、聞いたことないのよ」

「変だね、僕は既に説明を受けていると思ったのだけれど。なら仕方がないね。一般には公開されていないからね。でも移住者から噂くらいは広まっていると思っていたよ」

「移住者のよ、会ったことないのよ」

「そうなのかい、僕は知らなかったよ。箝口令(かんこうれい)でも敷いているのかな。管轄外のことはあまり知らないのだよ。そういうことだから、支度は全て終わらせるよ」


 支度……つまり、ヤルスウェで揃える予定だった食料とかを買わないといけないのか。

 まてよ。

 結界外に出る以前に、例の異世界人と接触する間の食料も必要ということか。

 まぁ、結界外に出る前なら、買い出しに戻ってこられるから気にしなくていいのか。

 出る時も、もう一度買い出しすればいいのだし。

 ということで、レイモンドさんと連絡先を交換――


「へえ、僕は初めて見るのだよ。それがモナカ君の身分証かい?」

「はい。やっぱり珍しいですか?」

「そうだね、僕が知っている一般的な物とは全然違うよ」


 この辺りは通過儀礼みたいなものか。

 何処に行っても珍しがられるからな。

 ということで、連絡先を交換し終え、フブキを――


「へえ、僕はまた初めて見るのだよ。それがトキコ君の身分証かい?」

「うん。時子のお母さんの形見だよ」

「そうかい、僕はすまないことを聞いてしまったようだ」

「気にしないで。お母さんは生きてるから」

「あれあれ、僕は少し混乱しているよ」


 と・に・か・く! フブキを迎えに行こうとした。


「マスター、時子さんも連れていかないとダメだよ」

「え?」

「ダメなの」

「そうだね、僕としても仲の良さそうな男女を引き離すのは、心が苦しいよ」

「仲が良いって……」

「違うのかい? 僕と会う前からずっと手を握っていて、離さなかったと思うのだけれど」


 そう言われると、中々否定しづらい。

 理由を言うのは簡単だ。

 でもそれは、俺の弱点を教えることになる。

 おいそれと言えるはずもない。


「そ、そうですね。片時も離れたくない相手ですから。あはははは」

「ふえっ?!」


 時子さんが驚いて俺の顔を見る。

 いや、そんなに驚かなくてもいいだろうに。

 目を大きく見開いて、ちょっと身体を引き気味だ。


「ほら、本当の理由は言えないでしょ」


 身体を寄せ、時子さんの耳元で(ささや)いた。


「ひゃん! み、耳に息を吹きかけないでっ」


 耳打ちをしたつもりだったが、どうやら近すぎたようだ。

 時子さんがパッと離れて、耳を手で塞いだ。


「あ、ごめん」

「ううん。平気だよ」


 時子さんの新鮮な反応に、今更ながら恥ずかしさが込み上げてくる。

 普段なら、笑いながら許してくれるのに、今回は時子さんも照れているらしい。

 手を繋ぎ直すこともできずに、2人して(うつむ)くことしかできなかった。


「なにしてるのよ。さっさと2人でフブキを迎えに行くのよ」

「あ、うん。そうだった。時子さん、行こう!」


 勇気を出して、元気に誘ってみる。

 こういうときは、オドオドしている方が余計恥ずかしい。

 ……が、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。

 1度意識してしまうと、中々消えてはくれないのだ。


「そ、そうだね」


 俺が差し出した手を、時子さんが遠慮がちに手に取る。

 やはり時子さんも、少し意識しているようだ。

 しかし改めて触ってみると、女の子の手は柔らかくて暖かい。

 俺の手はこんなに柔らかくない。

 刀を振るってできた肉刺(まめ)が硬くなっている。


「モナカ、くん?」

「あ……なんでもない」

「イチャついてないのよ、さっさと行くのよ!」

「イチャついてなんか……」

「……」


 いや、時子さんも何か反論してくれよ。

 エイルに追い出されるようにみんなと一旦別れ、時子さんと一緒にフブキを迎えに行く。

 当然タイムも……と思っていたのだが、時子さんの代わりに残ると言い出した。


「大丈夫だよ。万が一の時はすぐマスターの元に戻れるから」


 タイムと別行動なんて、初めてじゃないか?

 俺の携帯(身体と融合したスマホ)とエイルの身分証が繋がっている限り、タイムはエイルの側に居ることができる。

 タイムの行動範囲が広がるとは言っていたが、ここまで広がるものなのか。

 でも、逆に言えばどれだけ離れていようとも、タイムと繋がっているということでもある。

 それが分かって嬉しい。

次回からモナカと時子の2人旅が始まります

……それがまだ書き終わらないというw


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