表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/233

第26話 質疑応答

 今度こそ、全員が話し終わった。


「ふむ。皆様、お話し頂き有り難う御座います。それでは前金と致しまして、トキコ様にお支払い致しましょう。残りは達成報酬ということで宜しいですね」

「分かったのよ」

「それではトキコ様、お渡し致します」


 デイビーさんは懐からカードを取り出した。

 エイルやアニカが持っている身分証と大きさは同じだが、色や図柄がかなり違う。

 エイルたちのものは、正に石のカードといった感じだ。

 エイルのものには工房の看板になっている図柄が、アニカのものにはオルバーディング家の家紋が刻まれている。

 だがデイビーさんのものは(あお)く、そして金色でなにかの模様が施されている。

 時子さんはその身分証を掴んだ。

 そして受け取ろうとするが、デイビーさんはそれを手放さない。

 当たり前だけどね。


「時子、携帯(ケータイ)を出すのよ」

「え?」


 時子さんはエイルから貰った腰に付けるタイプのケースから、携帯(ケータイ)を取りだした。

 今までは学生鞄に入れていたのだが、そこから一々取り出していたのでは、オオネズミといえども対処が遅くなる。

 見かねたエイルがプレゼントしたのだ。

 そして時子さんはその間も、デイビーさんの身分証を掴んで離さない。


「時子、手を離すのよ」

「え?」


 そう言われてやっと手を離した。

 もしかして、あれを金券かなにかと思ったのかな。


「タイムちゃん、携帯(ケータイ)でのやり方のよ、分かるのよ?」

「うん、任せて」

「時子さん、携帯(ケータイ)を開いて」


 俺の腕の中のタイムが返事をしたかと思うと、次の瞬間には時子さんの携帯(ケータイ)からタイムの声が聞こえてきた。

 もうなんでもアリだな。


「あ、うん」


 タイムがやり方を説明し、時子さんが携帯(ケータイ)を操作する。

 俺と違って、自分でお金の管理ができるようだ。

 どうして俺はタイムに財布の紐を握られているのだろう。

 デイビーさんはその様子を興味津々で見つめている。

 タイムを見たときでさえ、そのポーカーフェイスが崩れることはなかった。

 なのに時子さんが携帯(ケータイ)を開いた途端、その顔が崩れた。

 わざわざ操作している手元を覗き込むくらいに、だ。


「後は携帯(ケータイ)をデイビーさんの身分証に触れればいいんだよ」

「身分証?」

「デイビーさんが差しだした(あお)いカードだよ」


 時子さんが携帯(ケータイ)を身分証に触れさせる。

 するとデイビーさんの前に、確認画面が現れた。

 しかし画面に触れようとした指が止まってしまった。


「ふむ。この額で宜しいですか」

「疑うのよ?」

「いえ、決してそのようなことでは御座いません」


 止まった指が再び動き出し、画面に触れる。

 画面が消え、受け渡しが完了した。

 後は滞納している利用料を支払うだけだが……

 どうやらタイムはそのやり方も分かっているらしく、時子さんに操作方法を教えている。


『へー、タイムは支払い方法も知っているんだな』

『ん? 違うよ。今教わりながら教えてるんだよ』

『教わりながら?』

『うん!』


 また例の声に教えてもらっているということか。

 本当に世話好きな声だな。


「これで確認が取れれば、普通に使えるようになるってさ」

「分かった。タイムちゃん、ありがとう」

「ふふ、どう致しまして」


 時子さんが携帯(ケータイ)をケースに仕舞うと、デイビーさんが残念そうな顔をした。

 しかし、すぐにいつもの顔に戻った。

 もっと見ていたかったのだろう。

 なにげに、デイビーさんの感情が表に出た顔を初めて見たような気がする。


「支度ができましたら、こちらにご連絡ください。案内の者と繋がるようになっております」


 差し出された身分証に、エイルが自分の身分証を触れさせる。


「分かったのよ。いつまでに出ればいいのよ」

「そうですね。今週中でお願いできますか」


 今週中ということは、あと4日か。


「分かったのよ」

「有り難う御座います。なにか質問は御座いますか」

「失敗した場合のよ、どうするのよ」

「成功するまで続けて頂きます。幾日でも、何ヶ月でも、何年でも」

「本気……なのよ」

「無論で御座います」

「相手が自分の世界に帰った場合はどうすればいいのでしょう?」

「その場合は、脅威が去ったことですし、依頼達成扱いで構いません」


 なるほど。

 必ずしも連れて行かなければならないわけではないのか。


「ならのよ、相手が死んだらどうなるのよ?」

「死体を持ち帰って頂くことになります」


 死体を?!

 そこまでしないといけないのか。


「その辺りの判断は、案内の者にさせますので、ご安心ください」

「経費はでるのよ?」

「必要な物は、案内の者に支払わせてください。ご自身で支払ったものに関しましては、経費にはなりません。ご了承ください」


 なるほど。

 お目付役というよりは、財布ってことか。

 よし、使い倒してやろう。


「他には御座いませんか」

「あの、お給料って出るの?」

「時子さん?!」


 いや、報酬は前払い分と成功報酬があるでしょ。


「だって時子は貰ってるけど、みんなは要らないの? それに何ヶ月もかかるんなら、やっぱり欲しいじゃない」


 確かに何ヶ月もタダ働きはアレだけど。

 こういうのって、経費があるだけでも凄いのでは?


「ご安心ください。日当はきちんとお支払いしますよ」

「ホント?!」

「はい。無論、トキコ様にもお支払い致します」

「え、いいの?」

「問題御座いません」

「うわぁ、ありがとう!」


 まさか貰えるとは思わなかった。

 しかも日当ということは、働いた分だけ……ということか。

 その判断は、案内人がするんだろう。

 報酬が貰える上に日当まで出る。

 相当厄介な相手なのかも知れない。

日当の出る依頼って、あんまり見ないと思った

ま、そのくらいには社会が発展している、いや衰退していないと思ってもらえたら、幸いです

次回、エイルのお着替えです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ