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第24話 デイビー・ラッセル・ルーゼドスキーの仕事

 デイビーさんが仕事の時間と行った途端、雰囲気が変わった。

 それまでの人当たりのいい人っぽい感じがすっかり抜け、声のトーンが一段下がった。


「さて、先ほど僕の仕事内容がなんなのか、申し上げましたよね」


 デイビーさんは異世界部門で仕事をしている。

 その内容は、異世界から渡航してきた異世界人の把握が主な任務と言っていた。

 何故把握するのかも言っていた。


「それがなんの関係があるのよ」

「ありますよ。僕には貴方方(あなたがた)が何処から来て、なにが目的なのかを調べる義務がある。素直にお話しして頂けると、こちらとしても仕事が早く終わって、ここを立ち去れるのですがね。ご協力頂けますか」

「どうして俺たちが異世界人だと思うのですか?」

「モナカ様とトキコ様については、先ほども申し上げた身分証と魔力の関係で、お分かり頂けるかと」


 つまり、俺と時子さんは魔力が無いから登録されていないということか?


「アニカ様については、説明は不要でしょう」

「ええ?! どうしてですか?」


 それが分かっていないのはアニカだけだよ。

 ここに居る中で、この世界の人間はエイルしか居ない。

 そのエイルはというと、デイビーさんを睨み付けている。

 しかしデイビーさんは、それを気にもせず、俺に質問してきた。


「モナカ様、あなた様がこの世界に来た目的をお教え願えますか」

「モナカは異世界人じゃないのよ。ちゃんと身分証を持ってるのよっ」

「エイル、もういいだろ。これ以上敵対しても仕方がない」

「モナカ!」

「エイル様、僕はなにもモナカ様方を排除しようとしているのではありません。まずは話をして、それから判断するのです。ああ、ここでの会話は全て中央省に記録されますので、そこはご了承ください」

「記録されている?!」

「後出しで申し訳ありません。今までの会話も全て、記録させて頂いております。万が一、僕が消されてしまった場合の保険なのです」

「消すって……」


 相手にしてみれば、異世界人が多数いるところに単身乗り込むことになる。

 当然の覚悟と保険、ということだろうか。

 しかし、俺たちが束になっても、勝てるかどうか……。

 デイビーさんからそういう自信を感じるのは、俺だけだろうか。


「俺たちではデイビーさんに勝てないと思いますよ」

「そうでしょうか」

「謙遜は()めてください」

「では、そういうことにしておきましょう」


 口でも勝てる気がしないな。


「えっと、目的でしたっけ。申し訳ないが、目的なんてない」

「目的がない?」

「ああ。俺は元の世界で死んで、誰かのお陰で転生できたんだ」

「誰か……とは」

「分かっていたら苦労はしない。強いて言うなら、その誰かを探すことが目的だな」

「なるほど、ご協力有り難うございます」

「……信じたのか?」

「おや、ウソを仰ったのですか」

「いえ」

「でしたら、問題御座いません」


 それはつまり、俺たちが嘘を言えば直ぐ分かる、ということだろうか。

 本当は俺たちがなにを話すかも、例の予言者とかいうのが予言済みなのでは……

 そう思ってしまう。


「では次にトキコ様。お話し願いますか」

「時子は先輩を探しに来たんだよ」

「時子さん、順序が逆だよ」

「え?」

「召喚されたから、探す必要ができたんだよね」

「先輩が居ないから、探す必要ができたんだよ。召喚されたからじゃないよ」


 うーん。

 なんだろう、この解釈のズレは。

 卵が先か鶏が先か、みたいな話ではないと思うんだけどな。

 ま、いっか。

 時子さんだし。


「あ、うん。そうだね」

「失礼ですが、先輩とはどういった(かた)でしょうか」

「先輩は時子の学校の先輩だよ。時子と一緒に居てくれるって約束だったんだけど、どうしてか居ないんだよ。だから時子は先輩を探さなきゃいけないんだよ」

「つまり、その先輩という(かた)も、異世界人なのですね」

「異世界人じゃないよ。同じ世界の人だよ」

「つまり、異世界人なのですよね」

「えっと、同世界人? だよ」

「……」

「……」


 さすがのデイビーさんも、時子さんのペースになると振り回されるようだ。


「分かりました。トキコ様と同じ世界の人で御座いますね」

「そうだよ」

「有り難う御座います」


 なるほど。

 時子さんの世界観に合わせてきたのか。

 結構柔軟なのかな。


「ではアニカ様、お話願えますか」

「え?! だからボクは転生者ではありませんよ」

「アニカ、もうバレてるから」

「そうなのかい?」

「ああ」

「どうしてバレたの?」

「どうしてだろうな」


 どうやらアニカは本気で分かっていないようだ。

 フレッドが過保護すぎてこうなったのか。

 それともこうだからフレッドが過保護になったのか。

 これこそ卵が先か鶏が先か、だよな。


「いいから、話してやれよ」

「う……分かったよ。ボクがこの世界に来た理由は、分かりません」

「分からないのですか」

「元の世界で……その、死んでしまいました。そして変な人に〝君に新しい生をあげよう〟と言われて、この世界で生まれました。ですから、何か目的があるのでしたら、その人に聞いてください」

「その〝変な人〟とは、何処にいらっしゃるのですか」

「分かりません。元の世界とこの世界の真ん中ではないでしょうか」

「真ん中ですか。有り難う御座います。アニカ様がトキコ様を召喚された理由をお聞きしても宜しいでしょうか」

「ボクがトキコさんを召喚したのは、〝間違えて〟としか言い様がありません。本当ならば、火蜥蜴(サラマンダー)を召喚するつもりでした。なのに、何故かトキコさんを召喚してしまったのです」

「つまり、事故ということでしょうか」

「そう、なりますね」


 アニカが申し訳なそうに時子さんを見る。

 その視線に気づいた時子さんが、小首をかしげて笑顔で見返す。


「ふむ。何故オルバーディング家の者が、ゼンフェルクではなくクラスクで試験を受けたのでしょう」

「ボクは家を勘当されていますから」

「ああ、報告書にも記載がありましたね。そのことでしたら、アニカ様はオルバーディング家から除籍されていませんよ」

「え?!」

「除籍されていたのならば、狩猟協会に籍が残っていることを、疑問に持たれなかったのですか」

「え?」

「どうやら、ご存じではなかったようですね。なるほど、有り難う御座います」

「除籍されていないとは、どういうことですか?」

「申し訳ない。僕は存じ上げません」


 これで全員が話したことになる。

 タイムのことはとりあえず話さずに済みそうだ。


「それではエイル様、お願いできますか」

「は? どういう意味だ?」

「おや、ご存じではありませんでしたか。良い機会です。エイル様、お話し願いますか」

「……」


 まさか、エイルも転生者……なのか。

ラストは分かっていた人も居るのではないでしょうか

ということで、次回はその答え合わせです

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