表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/233

第204話 エイルの審査眼

「看守さん、ありがとう、ございました」

「ありがとうございました」

「あいよ……おや? んん……んー少し飲み過ぎたかのぉ。嬢ちゃんが2人に見えるぞ」


 看守が酒を片手に目を擦っている。

 幻覚ではないので、素面(しらふ)でも2人に見えるのは確実だ。


「ふふっ、お大事に」

「ああ、ありがとよ。またおいでな」

「「はい!」」


 拘束室を出て、部屋へと戻る。

 会う人が皆二度見をしていく。

 中には持っている物を落として、小さな悲鳴を上げる人まで現れた。


「そんなに、変、かな」

「いきなり2人に分裂したらねー。そりゃ驚くでしょ」

「でも、悲鳴を、上げる、ことは、ないで、しょ」

「失礼だよねー」

「ねー。でも、よかった。お姉ちゃんが、大きく、なれて」

「あー、それね。あははは」

「ほら、試験の、時に、頑張ったから、大きく、なれない、って、言ってた、でしょ」

「そんなこと言ったかな」

「それって、ふう、バッテリーを、いっぱい使った、って、ことでしょ。だから時子、充電、頑張ったんだよ」

「それでマスターに充電充電言ってたの?」

「初めはね。でも、段々、モナカくんと、先輩、の、境界が、薄れて、いって、気がつい、たら、はぁ、充電を、言い訳に、ベタベタ、してたの」

「そうだったんだ」

「だから、お姉ちゃんが、大きく、なって、いられるよう、に、これからも、充電、頑張るよ。なーんて」

「「っふふふ」」


 部屋まで戻ってきて、ふと気づいた。

 タイムは自力で扉を開けることができない。


「2人揃って、入ら、ないと、ダメみたい、だね」

「そうだね。エイルさんに協力してもらおうか」


 なので、先にエイルの待つ部屋へ入る。

 アニカは既に、夢の中だった。

 エイルはタイムといつものように、プログラミングに励んでいる。

 エイルの元に残っていたタイムは、普段通り小さい(3頭身の)ままだ。

 向かい合わせで、作業をしている。


「エイルさん」

「なにか用な……のよ? タイムちゃんと時子?」

「はい」

「隠すのは()めたのよ?」


 エイルが訪ねるが、返事がない。


「時子、なにやってるの? 返事しなきゃダメでしょ」

「そっか。今は、時子が、お姉、ちゃん、ふぅ、なんだっけ」


 ヒソヒソとやり取りをする2人。

 エイルが怪訝な顔で、首を傾げた。


「あ、うん。バレてるから、もういい、かなって」

「ん? ……あーそういうことのよ。タイムちゃん、こっちで手伝ってほしいのよ」

「あ、はい」


 いつものように、タイムが手伝おうとする。


「時子じゃなくて、タイムちゃんなのよ」

「あ」

「お姉ちゃん、時子に、エイルさんの、お手伝い、なんて、できないよ」

チビ(タイム)が耳元で教えるから、頑張って」

「えー?!」

「タイムちゃん、早くするのよ」

「は、はい!」

「これなのよ」


 時子にとって、エイルの話はチンプンカンプン。

 耳元でタイムが言うことを、ただただオウム返しで言っているだけ。

 それでも専門用語は言い間違えるし、聞き取れなくて詰まったり。

 とてもじゃないが、やっていられない。

 そんな様子を、タイムは後ろからハラハラしながら見ていた。

 すると、エイルが手を止めてしまった。


「タイムちゃん、今日はおしまいにするのよ」

「え?」

「疲れてるみたいなのよ。だから今日は終わりにするのよ」

「分かり、ました」

「だから今日のよ、モナカと寝てくるのよ」

「モ……マスターと?!」

「分かったのよ?」

「は、はい。分かりま、した。おやすみ、なさい」

「おやすみなのよ。あ、タイムちゃん」


 出て行こうとする2人を呼び止めた。

 そして一言。


「時子の胸のよ、もう少し小さいのよ」

「「! ご、ごめんなさい!」」


 逃げるように、部屋から出た。

 エイルには、初めからバレていたようだ。


「もう、お姉ちゃんが、見栄張って、大きく、しすぎる、からっ!」

「時子だって、なにも言わなかったじゃない!」

「自分の、胸の、大きさ、なんて、客観的に、見ないもん。分かんな、いよ。エイルさんが、おかしい、ううっ、だって」

「それは否定できないな。とにかく、少し小さくしてっと」

「小さく、しすぎじゃ、ない?」

「そんなことないと思うよ。それにマスターがそんな細かい違いなんて分かるわけないよ」

「それも、はぁ、そうか。なら、大きい、ままでも、よくなかった?」

「よくないよっ!」

「そ、そう? とにかく、次は、本番だよ」

「分かってる。ほら、扉開けて」

「うん……なんか、中が、騒がしいね」


 中から2人の声が聞こえてくる。

 内容までは、よく分からない。


「そうだね。ナームコさんが暴走してマスターを困らせてるのかな」

「とにかく、開けるよ」


 中から言い争うような声が聞こえてくる。

 不審に思いつつ、時子が扉を開ける。

 そこでは、スケスケのネグリジェ姿のナームコと、モナカが言い争っていた。

エイルは相変わらずおかしいのであった

次回は寝るにも順番がある

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ