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第18話 受信フォルダ

 鉱石採取を終えて帰宅すると、時子さんがエイルの部屋のゴミ箱を(あさ)り始めた。

 何か大切なものでも捨ててしまったのを思い出したのだろうか。


「時子さん? なにを探しているの?」

「ん? だってゴミ箱に明細書が入ってるんでしょ」

「あぁ、なるほど」


 確かにタイムは〝ゴミ箱に入ってるんじゃないかって言ってる〟と言っていた。

 だからゴミ箱を(あさ)っているのか。

 ……なんでそうなるの。


「違うからね。そのゴミ箱じゃないからね」

「え、茶の間の方だった?」


 そういう意味でもないんだよっ。


携帯(ケータイ)のメールのゴミ箱だよ」

「……え?」

「〝え?〟じゃなくてさ。見たことないの?」

「時子、そんなところにゴミ箱置いた覚え無いよ」


 そうだね。

 普通そんなところにゴミ箱なんて置かないな。

 ……そうじゃないから。


「そりゃ無いだろうさ」

「なら無いんじゃないの?」

「最初から設置されているんだよ」

「そうなんだ……何処に?」


 ま、そうなるか。


「……ふぅ。タイム、教えてあげて」

「え?! なんでタイムが?」

「意地悪しないで教えてあげて」

「……」

「まさか、タイムも知らないのか?」

「そ、そんな訳ないじゃないですか。えっと、アレ! アレだよね、アレ」

「うん、そうそう。アレ」

「そっかぁ、アレのことかぁ。ヤダなぁマスター、そうならそうとちゃんと言ってくれなきゃ。あは、あはははは、はは――」

「分からないんだろ?」

「――はは……」


 全く、つまらない見栄を張っちゃって。

 やっぱりサポートとして〝知らない〟はプライドが許さないのか?

 タイムのプライド……うーん。


「時子さん、携帯(ケータイ)貸して」

「はい」


 時子さんから携帯(ケータイ)を受け取ると、メール画面を開く。

 えーと。


 1.受信ボックス

 2.送信ボックス

 3.未送信ボックス

 4.新規メール作成

 5.……


 あれ? ゴミ箱は??

 もしかして、携帯(スマホ)と違って携帯(ケータイ)にはゴミ箱が無いのか?

 いや、待てよ。

 受信ボックスの中に入っている可能性が(わず)かに残っている。

 中を見てみると、受信メールをフォルダ分けしていた。

 ……うっ、〝先輩〟ってフォルダがある。

 つまりこの中に、先輩から受け取ったメールが入っているってことだよな……

 一体どんなことをメールしていたんだろう。

 心臓が高鳴る。

 ……

 ボタンに掛けた親指に力が入る。

 …………

 喉が渇いてヒリつく。

 ………………

 いやいや、時子さんの許可無しに見るなんてできない。

 そもそも俺を信用して携帯(ケータイ)を渡してくれたのに、勝手に覗き見するなんてできる訳がない。

 深呼吸して落ち着こう。


「モナカくん、どうかしたの?」

「へ?! な、なんでも無い……ょ」

「?」


 ヤバイ、変な声出た。

 今回の目的は〝先輩〟じゃない。〝明細書メール〟だ。

 えっと……ゴミ箱は無いけど、迷惑メールフォルダがあるな。

 この中か?

 ……それっぽいものはない、かな。

 となると、やはり完全に削除されていると思って間違いなさそうだ。


「んー、どうやら携帯(ケータイ)から完全に削除されていて、見られないみたいだな」

「そうなんだ」

「サポセンに電話して聞くしかないかな」

「サポセン?」

「サポートセンターのことだよ。取説に電話番号が書いてあるんだ。ほらっ」


 そう言って、時子さんにサポセンの電話番号を見せる。


「へー」


 時子さんは興味なさそうに番号を眺めている。

 まるで他人事のようだ。


「……掛けないの?」

「え? 何処に?」

「だから、サポセンに」

「誰が?」

「時子さんが!」

「時子が?! どうして?」

「どうしてって……だから、時子さんの支払いについてだからだよ」

「あ、そっか……何処に?」


 いや、だからさー。

 さっき見せたでしょうに。


「ほら、この3桁の番号だよ」

「分かった」


 はぁ……先が思いやられる。

 なんとなく、サポセンと時子さんのやりとりの間に入らないといけないような気がしてきた。

 むしろ俺がサポセンに掛けた方がいいのではなかろうか。

 とはいえ、きっとこの手のことには本人確認やらなんやらが出てくる。

 時子さんに頑張ってもらうしかない。

 ……不安だ。

あちしが使っていた携帯(ケータイ)には、ゴミ箱がありませんでした

もっとも、キャリアメール自体使ったことがないからかも知れないけど


次回はサポセンが登場します

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