第170話 親愛なるお兄様へ
お兄様は何処へ行ってしまわれたのでございましょう。
この世界へ渡ってきたときにお兄様とはぐれてしまいました。
それから、幾年月経過したのかも分からないのでございます。
お兄様が感じられないのは、何故なのでございましょう。
この世界に来るまで、一度も無かったことでございますのに。
本当に忌々しい世界でございますわ。
それに持参した素材も、既に残っていないのでございます。
ですから、ここを見つけられたのは、本当に幸運でございました。
とはいえ、お兄様を探しに行くことは叶わないのでございます。
ここは本当になにも無い世界なのでございますから。
ああ、なんて貧相な世界なのでございましょう。
もう、お兄様に見つけて頂くしかございません。
未熟なわたくしめをお許しくださいませ。
その為にも、折角見つけたこの鉱床を奪われるわけには参りません。
だというのに、またうるさい現地人がやって来やがったのでございます。
追い払うにも、資源を消費してしまうというのに。
本当に忌々しい連中でございますわ。
わたくしたちの世界に、猛毒を撒き散らすだけでは飽き足らないのでございましょう。
これではいくら採掘しても、お兄様を探しに行けないのでございます。
わたくし、採掘なんてさせたことございませんのに。
知識はあるのでございますのよ。
させたことがないだけなのでございます。
でもお母様の仰るように、お勉強しておいてよかったのでございますわ。
まさかこのような辺境地で、お役に立つとは思ってもいなかったのでございます。
さすがはお母様でございます。
ああ、お兄様、麗しのお兄様。
お兄様の黒髪は、どんな輝きにも屈することなく、暗黒に輝いて、素敵なのでございます。
無駄に長くない、短な髪も、先が少し跳ねていて、とても愛らしいのでございますわ。
少し太めな眉も、凜々しく艶やかで美しゅうございます。
そしてその見つめていると、吸い込まれそうな黒目。
黒曜石では出せないその輝きは、いつも側に置いて愛でていたいのでございます。
高くもなく、低くもない、その平凡な鼻が愛おしいのでございます。
変に主張することなく、調和をする存在として、中央から見渡しておられるのでございますね。
時々ご飯粒を付けていらっしゃるお茶目な口元も、奥ゆかしいのでございます。
ご飯粒を頂いてあげる度に、赤くなるお兄様を拝見したくて、つい探してしまうのでございます。
そしてあの厚くも薄くもない、ほどよい胸板。
抱き締められて昇天しない女の子なんて、絶対存在しないのでございますわ。
だからわたくし以外の女の子に触れてはいけないのでございます。
けれどお兄様のあまり鍛えられていない、ちょっと頼りない腕では、女の子を追い払うのは困難でございましょう。
わたくしがお兄様を食い物にする糞虫どもからお守りしなくてはっ。
ふむ……
折角お兄様の像を錬金いたしたのでございますけれど、あまり似ていないのでございます。
やはりお兄様ご本人に勝るものなし、でございますわ。
これは壊してしまうことと致しましょう。
ああ忌々しい。
いつになったら、お兄様をお迎えする支度ができるのでございましょう。
あら?
もう採掘できる鉱石が、あまりないのでございます。
どういたしましょう。
折角見つけた希少な鉱床ですのに……
仕方ないのでございます。
また他の鉱床を見つけるしかないのでございますわね。
移動はしたくありませんが、このままではお兄様にお目にかかる前に、わたくしが朽ちてしまうのでございます。
久しぶりに外へ出ることといたしましょう。
やはり長い間、暗い穴の中にいると、気が滅入ってしまうのでございます。
「採掘くん、ご苦労様でございますわ」
石人形を資源に戻しておくのでございます。
その方が小さくなりますし、移動がしやすくなるのでございます。
さぁ、次の鉱床は何処でございましょう。
あまり得意ではないのですけれど、探知機を錬成いたしましょう。
とは申しても、やはりこの世界は資源が少ないのでございます。
中々錬成ができないのでございます。
ここは採掘した鉱石を使うことと致しましょう。
材料は……なんとか足りそうでございますわね。
あまり使いたくはなかったのでございますが、無い物はどうにもならないのでございます。
さぁ、完成したのでございます。
それでは、探しに行くのでございます。
待っていてくださいませ、クーヤお兄様。
愛しのナームコが今、参るのでございます。
アニカ初登場の時みたいな感じです
とりあえず異世界人はこんな感じ
え、分からない?
次回は見えるか見えないか




